Ride18 鉱山の街
岩山を下りて歩き、森で一晩過ごし、さらに歩くと、鉱山の街、フットテイルが見えてきました。斜面に石造りの建物が立ち並び、一際大きな建物の煙突からは、煙が立ち昇っています。
「すごい……」
「ああ。圧巻だな……」
あ、そういえば……
「セローが中に入ると、街の人が驚いちゃいますかね?」
「そうだな。おそらく騒ぎになる。こいつ自身のためにも、中に入れるのはやめておいたほうがいいだろう」
「アギャ?」
「ごめんね、セロー……。食べ物置いていくから、少しそこの林でおとなしく待っていられる?」
「アギャ!」
私の言うことがわかったみたい。干し肉を入れた袋を首にかけてあげると、セローは林の方へ走って行きました。
「では、街に入って例の鍛冶屋を探すとしよう」
私たちは街の入り口へ歩いて行きます。すると、見張りの男の人がこちらを見て……いきなり魔法で攻撃してきました!!
ズドーン……!
「わっ! な、なんで!?」
「こいつ……魔族だ!」
アウラさんに言われてよく見ると、確かにツノが生えて、顔色も悪いです。
「ち……やむを得ん!」
アウラさんが剣を一本手に取り、魔族に向かって走りだしました。そして……
ズバッ!
あっという間に斬撃を繰り出し、魔族は倒れました。
「このまま突入するぞ!」
「え!? な、なんで!?」
「魔王軍に支配された街を放ってはおけないだろう! 今この瞬間にも、たくさんの女子が魔王軍兵士によって……! くっ、許せん!」
そう言って、アウラさんは街の中へ走って行きます。
「お、置いていかないでください〜!」
△
「見ろ……街の人間が奴隷のように働かされている……」
「見ろって言っても……う、わ、私見えないんですけど……。はぁ、はぁ……」
アウラさんは、煙突のある一番大きい建物の中を窓から覗いています。私に肩車された状態で……。
「仕方ないだろう? 私がお前を肩車しようとすると、弾かれてしまうんだから……」
「でも……私はアウラさんと違って力に自信はないんですぅ……」
「わ、私が重いと言うのか!? ……しかし、この施設はなんだ? 何人もの人間が、繰り返し大きな板を足で踏んで動かしている……。それに、すごい熱気だ……」
あ、たぶん、精錬所です。炉に空気を送り込んで、金属を溶かしているんじゃないでしょうか……。そう思いましたが、体力の限界で声が出せません……。
「も、もうダメ……!」
「わっ!」
ガシャアン!! 膝が折れて倒れ、隣の木箱を壊してしまいました……。
「いったぁ〜……」
「!! お前ら! そこで何してる!?」
! 魔王軍に見つかった!
「ち! 逃げるぞ!!」
アウラさんは反対方向に駆け出し、私も慌てて後を追います。
「に、逃げるってどこに!?」
「とにかく逃げるんだよ! ……!」
あぁ……! 向こう側からも魔王軍が……!
「こっちだ!!」
アウラさんは私の手を引き、角を曲がります。
両脇に石造りの家が立ち並び、脇道が何本もありました。
「くそ、なんて入り組んだ街なんだ! もうやるしか……!」
「あんたたち、こっち!」
「!?」
脇道から誰かが顔を出してそう叫び、すぐに奥に引っ込みました。
脇道に駆け込むと、家屋の扉からさっき人が呼びかけます。背の高い女性でした。
「さ、はやく!」
建物の中は、酒場のようでした。女性の後に続いて、カウンターの向こうの扉から別の通りに出て、さらに角を曲がりました。
「行き止まり……?」
「ちょっと待ってて」
女性は座り込み、石畳の一部に手をかけ、上に開きます。隠し階段……? すごい、全然気づかなかった……
「着いてきて」
階段を降りると、暗くて狭い通路が真っ直ぐ続いていました。……ひとまず助かりました……。
「危ないところだったね。あんたたち、旅の人? 見ない顔だけど……」
「はい……。あ、ありがとうございます、助かりました……」
アウラさんが私の後ろから、彼女に尋ねます。
「一体、この街に何が起こっているんだ? あれは魔王軍ではないのか」
「……そう、魔王軍。一カ月ほど前、街は奴らに乗っ取られた。ここで武器を作らせて、本拠地に送っているみたいだ」
彼女は、悔しそうに口にします。
「個人所有の武器も、すべて奪われてしまった……。『刀狩り』と称してね」
狭い通路に、声がこだまします。ここにも、魔王軍が……。少しこの世界にも慣れてきたと思ったのに、これじゃ、元の世界にもどる手がかりどころか、ゆっくり街を見ることもできません……。
「そうか……。しかし、見張りは大したことなかったぞ。この街には武器もたくさんあっただろうに、なぜ……」
「……奴らのリーダーが問題なんだ。魔王軍の幹部がね。そいつが怖くて、皆言うことを聞くしかないのさ……」
私は村でウルフさんと戦った、カレンという幹部の顔を思い浮かべました。あんな怖い人が他にもいるなんて……。
「あの、ところでどこに向かっているんですか……? それに、あなたは……?」
私が尋ねると、前を進んでいる女性が振り返って言いました。
「あたしたちの隠れ家だよ。あたしはルディア。鍛冶師ジラフの娘さ」




