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Ride17 アウラinカストロール砦

 アウラがカストロール砦に捕えられていたときのこと。


 彼女は旅の途中、カストロールの巣があるという話を聞き、討伐のため、単身砦に乗り込んだのだが……早々に剣が折れてしまい、捕らえられてしまったのだった。


「くそ……また剣が……! 武器屋のオヤジめ、何が伝説の名剣だ……!」


 ガシャン! カストロールはアウラを牢屋に閉じ込めて言った。


「ぐふふ、こいつぁ極上のエルフだぜ……。ボスも喜ぶ……」


「ぼ、ボスのあとなら、俺たちもやれるかなぁ……?」


「……下衆どもが……」


 カストロール……二足歩行の豚のような風貌に、女と見れば犯すことしか考えない、性欲だけで生きているような下等種族……。アウラはカストロールをそう認識していた。おまけに、鼻をつくような悪臭……。

 そんなおぞましい連中に捕らえられ、これからされることを想像すると……カラダが震えるのだった。


「くそ……! 剣さえあれば……!」


 アウラは、一部では『神速の女神』と呼ばれ、それなりに名の知れた剣士である。しかし、彼女のスピードに耐えられる剣に出会えず、一度も全力で戦うことができずにいた。


 剣が欲しい……。自分の速さについてきてくれる、真に命を預けられる剣が……。そう思い、アウラは里を飛び出し、旅に出たのだった。


「そんな剣士も、今はこの様……か」


 自嘲気味に、そう独り言を言う。

 そのとき、近づいてくる複数の足音を聞き、彼女の長い耳がピクリと動く。……きたか……


 ひときわ大きく、トゲのついた兜をかぶったカストロール。後日、輪子を三角木馬に跨らせることになる、ボストロールその人である。


「ほぉ〜。こいつはたしかに美しいな。……あ? なんで服と防具がボロボロなんだ? てか、その縄、だれが縛った?」


 ボストロールは部下を睨みつけ、問い詰めるように言う。


「お、俺たち知らねえよ。ただ牢に入れただけだ。なぁ?」


「そうだよ、ボス。俺たちが勝手に剥いだり、縛ったりするわけねえよ……」


「じゃあなんでもうこんな状態なんだよッ! ああ!?」


「ヒッ……!」


「くっ……! おぞましいケダモノどもめ。私をどうする気だ……」


 ボストロールが言ったとおり、アウラの着ているものはすでにボロボロで、両手を後ろで縛られていた。しかし、彼女が牢に入れられてから、カストロールの誰も、彼女には指一本触れていなかった。これは一体どういうことなのか?


 犯人は、アウラ自身である。彼女は秘められた願望と激しい思い込みによって、存在しない記憶、そして状況シチュエーションを作り出してしまう癖があった。人間離れしたスピードで。


 彼女は、今まさに、これからカストロールに犯されんとする、姫騎士の気分になっていた。


「くっ……! 殺せ……! きさまらの慰み者になるくらいなら、私は死を選ぶ!」


「……」


 ボストロールは鉄格子の鍵を開け、中へと入ってくる。その後ろには、他にも二匹の部下がいた。


「だが、私は決して屈しないぞ。カラダは汚されても、心までは思い通りにならん!」


「あ〜、なんか、すんげーテンプレだなぁ……。そういうの、もう飽きてんだよね……」


「テン……なんだと? いや、それより、もう飽きているだと? 下衆め! 一体これまで何人の女子おなごをその手にかけてきたというのだ!」


 アウラの罵倒とは裏腹に、ボストロールは冷静な眼差しを彼女に向ける。


「まさかとは思うが……お前、それ自分でやったのか?」


「な、何をばかな……! これはきさまらが……」


 アウラの言葉に、部下たちが反論する。


「お、俺たちは何もしてねぇ! この女が自分でやったんだ!!」


「そうだ! ボス、信じてくれ!」


 しゅる……。 ボストロールが縄を引っ張ると、それは簡単に解けた。


「あっ……!」


「演技……というわけか」


「はっ! 何を言っている……! 父上と母上をその手にかけたこと、私は忘れていないぞ! ……ハッ! まさか、私の婚約者も捕らえて……その前で私を犯そうというのだな!?」


「……お前……カストロールを舐めとんのか?」


 ボストロールは迫力のある声でそう言った。さきほどまで慌てていた部下も、ボスに呼応するかのように凄味を増している。


「……ど、どう言う意味だ?」


「自らカラダを差し出すような女に、俺たちは燃えねぇんだよ」


 それが、カストロールたちの習性であった。


「バカなことを……。女と見れば犯すことしか考えられない下等生物の分際で……!」


 はぁ〜、と、ボストロールは呆れたようにため息をついたあと、言い聞かせるように言う。


「俺たちにも、ポリシーっつーもんがある」


「そうそう、俺たち、状況シチュエーションにはこだわるのよ。中々堕ちない、気の強い嫌がる女を少しずつ屈服させ、気持ちよくなってもらうのがいいんだわ」


「演技過剰な上、そんなありふれた設定じゃなぁ……いくら美人でも……」


 アウラは自分の容姿には自信があった。それを、あろうことか下等生物と見下していたカストロールにノーサンキューを突きつけられるとは、屈辱以外の何物でもなかった。


「少し頭を冷やせや」


「ちょっ、まっ……」


 ガシャン!


 彼女がミタライと出会うのは、この翌日のことだった。というわけで、アウラはカストロールに何もされてはおりませんでした。

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