Ride14 旅立ち
「本当にもう行ってしまうのかい?」
「……残念だよ。あんたらなら、いい按摩師になれると思ったのに」
村の人たちは、私たちとの別れを惜しんでくれています。
「ほら、これは報酬だ」
宿屋さんがそう言って、私たちに小さい布袋を渡してくれます。硬貨のようでした。
「あ、ありがとうございます」
「しかしいいのか? 私まで……」
アウラさんがアルフレッドさんのほうを見ると、彼は微笑みました。なんだろう?
「これを持って行ってくれ。これくらいしかあげられなくてすまないんだが……水と食糧、それから毛布や、旅道具が入っている」
私たちを宿まで運んでくれた人が、袋を渡してくれました。
「感謝する」
「ミタライ、できれば俺も行きたいところなんだが……。いや、正直に言うと、あんたについて行きたくてたまらないんだが」
ウルフさんは言いにくそうにしています。
「……わかっています。マッハドラゴンとの戦い、頑張ってください!」
バイク……じゃなかった、人を自分の思いどおりにしようなんて、おこがましいことです。木馬さんとウルフさんが、それを教えてくれました。
「……! ああ! ありがとう、ミタライ! アウラも達者でな!」
「ああ。お前もな」
私たちは、固い握手を交わしました。
「マッハドラゴンを倒して、あんたが俺を必要としたときは、必ず駆けつけるよ。約束する。それまで、この村と先輩の墓は任せてくれ」
「ありがとうございます。ウルフさん……!」
アルフレッドさんは、じっとアウラさんを見つめています。
「アウラさん……行ってしまうのですね」
「すまない、アルフレッド……。やはり、私ではお前の求愛には応えられない。オークに汚された、この私では……。それに……」
「わかっています。旅の目的があるのでしょう? 仕方ありません。でも、僕は待って……いえ、旅ができるくらい強くなって、きっとあなたを追いかけます」
あれ……この二人、なんかいい感じ……。アウラさん、いつの間に!?
「それに、僕はあなたが汚れてるなんて思っていない。そんなの……関係ありませんから……。いつか、答えを聞かせてください」
「アルフレッド……。ありがとう。約束しよう」
なんか、いいなぁ……。私もバイ助君に会いたくてたまらないです……。
「おう、これを持っていけや」
頭に絆創膏を貼ったおじさんが、私たちに大きな袋を渡してくれました。
「お前は……防具屋のおやじ!?」
「アウラさん、父を知っているんですか?」
「い、いや……」
おじさんは、防具屋さんだったようです。つまり、アルフレッドさんのお父さん……。
「あんたたちに合わせて防具を作ってみた。あの戦いを見ていてな」
「助かる。ありがとう。それと、その……すまなかったな……」
「?」
そうしてウルフさんやアルフレッドさん、皆さんに見送られながら、私たちは村をあとにし、歩き始めました。
村を出ると、森と、見渡す限りの大草原……。爽やかな風が吹き、私の頬をやさしくなでました。
△
「あ! アウラさん! これ、ビキニアーマーですよ! すごくよく似合ってます!」
「な、なんだ、これは? これじゃ変態ではないか……あのオヤジめ……」
私の知ってるビキニアーマーそのものです。……すごい……。
「このビキニ……アーマー? はお前用なのではないか?」
もう一組入っていた防具は、皮にプロテクターが縫い付けられたものでした。というか……どうみてもバイク用……。防具屋さん、すごい……。
「いえ、どうみてもこっちが私用だと思います。大体、胸部分のサイズが全然違うじゃないですか」
「むぅ……」
他に、マントも二人分入っていました。それを羽織りながら、私はアウラさんに尋ねます。
「あの……私たち、どこに向かっているんですか?」
「この先に鉱山がある。そこでは良質な鉄が採れ、有名な鍛冶屋がいるそうだ。名はなんと言ったかな……」
「その人に剣を作ってもらうんですね? どのくらいかかるんですか……?」
「そうだな……。このまま歩いて、三日ほどか。大きな岩山を迂回せねばならないからな」
三日!? そんなに歩かないといけないの……?
「あの……ちなみにその間、町や村は……?」
「ない」
「そんなぁ……」
そんなに歩きたくないです……。こんなとき、バイ助君や三角木馬さんがいてくれたら……。
「あ! アウラさん! 一度村の方に戻りましょう!」
「なんだ、忘れ物か? あれほど感動的な別れをしたのに……」
私、もしかしたら思いついちゃいました!
「アシナガリザードさんに乗っていきましょう!」
△
私たちは道を引き返し、森でアシナガリザードさんを探し出しました。
「見てください。私たちが鱗を剥がした子ですよ」
「ふむ……この辺りにはあの一匹しかいないようだ。たしか防具屋が、ふつうは岩山……モトクロ山に生息していると言っていた。仲間とはぐれたのかもしれんな」
「その話を聞いて、あの子なら岩山を越えられるんじゃないかと思ったんです。そして、できたら私たちが仲間を探してあげましょうよ」
「それもいいな。利害が一致するというものだ」
よーし、なんとかあの子に跨ることができれば、きっと……!




