Ride13 悲しみの果てに
「……お、おい、マジかよ。カレン姐さん、やられちまったぜ……」
「お、俺たちが敵う相手じゃなかった……。に、逃げろー!」
カストロール達も、慌てて砦の方角へ逃げていきました。
ウルフさんが、私を肩から下ろしながら言います。
「やったな、ミタライ」
「……はい。ありがとうございました」
「ミタライ……また助けられたな」
アルフレッドさんに支えられ、アウラさんが言いました。……みんな、怪我はしたけど大事には至っていないみたい。でも……
私は三角木馬さんに駆け寄り、様子を確認します。
「……ッ!」
木馬さんは黒焦げになり、真っ二つ……。私は直視することができませんでした。
「うぅ……。わ、私のせいで……! ごめん……なさい……っ」
泣いている私の肩に手を置き、アウラさんが言います。
「いや……きっともう限界だったんだ。長年の間、カストロール達にこき使われてな……」
アウラさんの目にも、うっすらと涙が滲んでいます。
「だが、こいつは最後に自由になれた。本当に乗ってほしい人間に出会い、自らの意思で、お前を守って逝くことができたのだから」
「ふっ……ふぐ……! うわあああぁ!!」
私のせいで……ごめんなさい……! そして、ありがとう……!
「く……せ、先輩……ッ!! あんたの生き様、しかとこの目に焼き付けたぜ……!! うおおぉぉん!!」
私の泣き声と、ウルフさんの慟哭が夜の闇にこだましました。私たちは泣き続けました。東の空から、太陽が昇るまで……
それから、私たちはアルフレッドさんに回復してもらい、三角木馬さんを埋葬しました。
「……ありがとう、あんたたちは村を守ってくれた英雄だ」
「皆さん、本当にありがとうございました。どうかゆっくり休んでください」
村の人やアルフレッドさんがそう言ってくれました。でも……
「……お前たち、どうして全員前屈みなんだ?」
さっきからそうなんです。アルフレッドさんまで……。どこかケガでもしたんでしょうか? 私とアウラさんは、顔を見合わせます。
「あ〜、その、なんだ……。その格好のせいだと思うんだが……」
ウルフさんが顔を赤らめながら、私たちのカラダを指差しました。視線を落としてみると……
「!!」
「き、きゃああ!!」
……忘れてました。エッチなナース服で戦ってたこと。激しい戦いで攻撃を受けて……あちこち破れてました……。
△
その夜、アウラさんと話をしました。
「ミタライ、やはりお前、魔法使いだろう。かなり特殊な魔法のようだが」
「ち、ちがいますよ……。たぶん……」
「ふむ……これまで自覚がなかったんだな。だが、なにかに跨がることでそれを強化し、操る魔法であることは間違いなさそうだ」
薄々勘付いてましたけど、やっぱりそうなんですかね……。ウルフさんの回転速度計も見えたし、まるで……。
「試しに私が肩車してみよう」
そう言って、アウラさんが私の脚の間に頭を入れ、立とうとすると……
バチッ!
「「!!」」
弾かれるような感覚があって、うまくいきませんでした。
「む……。ウルフみたいなむさ苦しい男はよくて、どうして私はダメなんだ?」
ちょっぴり頬を膨らませて、アウラさんが私に聞きます。
「わ、私にもわかりません……。全然いやとか思ってないのに……」
相性とか条件があるのかな……。
「まぁ、考えても仕方ないか。お前自身よくわかってないようだしな」
「……すみません」
「ところで、お前はこれからどうするんだ?」
「どうって……」
どうすればいいかわかりません。ただ言えることは、元の世界に帰って、バイ助君に会いたい。
これまで何もなかった私の人生で、本気で向き合えるものにやっと出会えたのに……こんなカタチで終わりたくありません。
「ウチに帰りたいです……。でもどうすればいいのか……。ここはどこなんですか?」
「本当に何もわからないんだな……。ここはオッター•エトニエ大陸といって、まるを二つ繋げたような形をしているんだ。お前がいたのは、ニホンという国だったな。海を渡ってきたのか?」
「海というか……こことは全然違くて、全く別の世界なんじゃないかと……。普通に過ごしていたら、突然カストロールの山に放り出されたんです」
アウラさんは「違う世界……?」と呟き、考え込んでいるようです。
「……よくわからないが、不可解な現象だな。魔王軍が使ったような帰還魔法はともかく、それほどの距離を移動する魔法など聞いたこともない……」
「そう、ですよね……」
私もどう説明したらいいかわかりません。本当に困りました……。ここで一生過ごさないといけないのかなぁ……。
「……提案なんだが、帰る方法もなにもわからないのならば、一先ず私と来ないか?」
「アウラさんとですか?」
アウラさんは、ベッドの上であぐらをかいて頷きます。
「そうだ。私は、剣を探す旅をしている」
「どんな剣なんですか?」
「……まだわからない。気づいたかもしれないが、私が使う剣は、悉く折れてしまうんだ。私の速さに、剣が耐えられないのだと思う」
たしかにアウラさんはすごい速さで動き、剣をふるっていました。カレンと戦ったときも、次々に剣が折れて……。
「……私には剣しかない。それを極めるためにも、全力で戦える剣がほしい。とりあえず、今はカストロールどもの剣を大量に持っていくしかないが……」
アウラさんは、少し笑って続けます。
「魔法が使えないエルフなんて、笑えるだろう?」
「え? そういうものなんですか?」
アウラさんは、短くため息をつきました。
「本当に世間知らずだな……」
でも、旅か……。どうしよう……。
……ううん、ただこうしていてもヒントは見つからない。アウラさんの言う通り、この世界のこと何も知らないし……。
「それに、今回の件で、魔王軍には目をつけられたと考えていい。一緒に行動するほうが安全だと思うが……」
「わ、わかりました。ご一緒させてください」
「よし、決まりだな。改めてよろしく頼む、ミタライ」
「こちらこそ、よろしくお願いします。アウラさん」




