番外編 華やかさの裏で(十四代視点)
本編では陽気で華やかなキャラクターだった十四代。
今回は、彼があえて「明るさ」を纏う理由と、美咲への隠された想いを描きます。
俺の名は十四代。
華やかで、誰よりも賑やかで、場を盛り上げることが得意だ。
──そう、みんなは思っている。
本当の俺は、案外そうでもない。
華やかさは、俺にとって仮面だ。
場が静まるのが怖いから、冗談を言い、笑顔を作り、香りで空気を彩る。
けれど、美咲と出会ってから……その仮面にひびが入った。
あの娘の嗅覚は恐ろしい。
俺の香りを嗅ぐだけで、心の奥のざわめきまで見透かされる気がした。
「十四代さん……楽しそうに笑ってるけど、少し寂しそうですね」
そう言われた時、心臓が跳ねた。
俺の笑顔の裏にある空虚さを、誰も気づかなかったのに。
美咲は違った。
彼女は俺の華やかさを否定しない。
むしろ、その奥にある弱さを受け止めてくれた。
だから、俺は彼女を好きになった。
けれど……田酒の隣で輝く彼女を見た時、悟ったんだ。
俺は彼女を奪うことはできない。
俺の役目は、彼女を笑わせること。
それで十分だ、と。
春祭りの夜、彼女が田酒と口づけを交わした瞬間。
胸の奥が痛んだ。
でも、不思議と温かかった。
俺の笑顔は、もう仮面じゃない。
あの娘がいてくれるだけで、本当に楽しいと心から思える。
「美咲。君の笑顔を守れるなら、俺は道化で構わない」
そう心に誓い、俺は杯を掲げた。
香り高く、華やかな酒のように──仲間を照らす存在であり続けよう。
十四代視点の番外編でした。
華やかさの裏に潜む寂しさと、美咲への淡い想いを描きました。




