エピローグ 愛と酒に満たされて(美咲視点)
本編と番外編を経て、最後は主人公・桜井美咲の視点から描く締めくくりです。
仲間たちとの旅を振り返り、彼女が選んだ未来を綴ります。
春風が吹き抜け、酒蔵の庭に花びらが舞った。
仕込みの香り、木桶のぬくもり、仲間の声──すべてが今は愛おしい。
思えば、蔵を継いだあの日。
不安と孤独しかなかった私の前に、田酒さんが現れた。
そして十四代さん、南部美人さん、越乃寒梅さん、黒龍さん……。
次々と出会った精霊たちが、私を支え、試し、導いてくれた。
十四代さんはいつも明るく場を盛り上げてくれた。
南部美人さんは寡黙に守ってくれた。
越乃寒梅さんは冷静な判断で背中を押してくれた。
黒龍さんは孤独の中から、優しさを教えてくれた。
彼らがいなければ、私はここまで来られなかった。
そして──田酒さん。
どんな時も私を見ていてくれた。
香りは稲穂のように力強く、温かく、安らぎをくれた。
春祭りの夜、田酒さんと交わした口づけは、夢のように甘かった。
でも、それは夢じゃない。
彼の温もりは今も隣にある。
「美咲、今日も仕込みを手伝うぞ」
笑顔でそう言う彼に、私は頷いた。
「うん。私の嗅覚チートも、まだまだ役立つからね」
二人で笑い合い、仲間たちの声が響き渡る。
酒蔵はもう、孤独な場所ではなかった。
嗅覚チートが教えてくれたのは──香りの奥にある「心」だった。
そして出会いが教えてくれたのは──愛は一人で抱えるものじゃないということ。
私はもう迷わない。
この酒蔵で、仲間と共に、田酒さんと共に生きていく。
香り豊かな未来を信じて。
これにて『酒蔵を継いだら日本酒イケメンが押しかけてきた件』は本当に完結です。
ここまでお付き合いくださった皆さま、本当にありがとうございました!
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