番外編 冷徹なる参謀の独白(越乃寒梅視点)
本編では冷徹で現実主義の参謀として描かれた越乃寒梅。
今回は、彼がなぜあえて厳しい言葉を投げかけたのか、そして美咲に対して抱いた感情を語ります。
俺は常に冷徹であろうとした。
情に流されれば判断を誤る。
酒も人も、温度と香りを正しく見極めなければ崩れる。
だから、桜井美咲に最初に告げた言葉は「蔵を捨てろ」だった。
あれは、残酷な現実を見せるためだった。
未来を切り開く覚悟があるかどうかを試すため。
だが、彼女は俺の言葉に怯まず、香りを嗅ぎ取りこう言った。
「本当は……私を守りたいんですよね?」
心臓が止まるかと思った。
冷たさの奥に隠していた優しさを、彼女は見抜いたのだ。
あの瞬間、俺は悟った。
彼女はただの継承者ではない。
仲間を導き、蔵を甦らせる灯火になる存在だと。
田酒は彼女を支える力強さを持ち、十四代は華やかに盛り立て、南部美人は剣で守る。
そして黒龍さえも、彼女に救われた。
俺の役割はただひとつ。
道を誤らせないために、冷徹な判断を下すこと。
春祭りの夜、美咲と田酒が結ばれたとき。
胸に走った感情は……安堵だった。
彼女の選択は正しかった。
俺はこれからも冷徹であろう。
だが、それは彼女を突き放すためではない。
彼女と蔵を未来へ導くための役割だからだ。
「桜井美咲……俺の冷たさを、どうか忘れるな。あれこそが俺の誠実さなのだから」
そう呟き、杯を傾ける。
凛とした香りが、冷たい夜風に溶けていった。
越乃寒梅視点の番外編でした。
「冷徹さの裏の優しさ」というキャラクターの本質を改めて掘り下げました。




