ヘレヨンと仲良くなろう作戦②
本日(8月24日)2回目の更新です。
最新話ではなく、追加エピソードとなります。
私が口を開こうとした、その時。
「あっ……!!!」
王子の顔に、思いっきりタオルがかかる。
どういう状況!?
見上げると、そこには子供がいた。
「あはは。おもしろーい!!!」
「……。」
突然のことに驚いていると、子供の奥から人の声が聞こえてきた。
目をやると、そこには女性がいた。
女性は震えていた。
「た、大変申し訳ございません!う、うちの娘、まだこの屋敷で手伝いを始めたばかりで……!!こら、あああなたも謝りなさい!!」
「あはは!おもしろーい!!」
「いいから、謝って!!!」
子供は言うことを聞かない。
今謝っているのは、おそらくその子供の母親だろう。親子でこの屋敷の使用人をしているに違いない。
「そ、それはお屋敷で使っているタオルでございます。」
「……。」
「もっ、申し訳ございません。今顔からお取りいたしますね……!!」
母親がヘレヨンの顔に手を伸ばした、その時……
「ふざけないでくれるかな!!!!!!!」
ヘレヨンが突然大声を上げる。
次の瞬間、
バキッ
「あ゛ああああああ」
使用人の方の腕を折ったのだ。
ありえない方向に腕が曲がっている。
「だっ大丈夫ですか!?」
私が使用人の方に駆け寄ろうとすると、
ザシュッ
と音が聞こえた。
嫌な予感がする。王子の方を見ると、
そこには短刀を握る王子と、地面に横たわる子供がいた。
「ク、クロエえ゛え゛え゛えええええええ」
母親の使用人が断末魔にも似た悲鳴をあげる。
「うるさいよ!!!!!!」
王子が一喝する。
「ひいっ!!!!!」
王子は母親に近づいていく。
「ひっ……!!」
母親の震えが止まらない。
ヘレヨンは母親を追い詰めると、顔を近づけて言った。
「僕は優しいからね。娘さんみたいに、ミスをした者しか罰しない。でもね……」
ヘレヨンの声が低くなる。
「あんまりうるさいと、あなたも「騒ぎ立てて王子を苛立たせた罪」で処罰するよ。」
「ひえぇ……!!」
母親ががたがたと震えを増している。
「もうやめて!!!」
「!?」
私は思わず声を出していた。
「あ?」
ヘレヨンが私を睨みつける。
「僕よりこんな奴の肩持つの?何?」
「……っ!!」
ヘレヨンは今、激昂している。
下手なことを言うと、私まで殺されかねない。
「べ、別に、もう良いんじゃないって言ってるだけです。」
ごめんなさい。使用人のお母さん。
「間違ってる」ってヘレヨンに言えなくて。
「もう充分、使用人の方にはヘレヨン様のお気持ち、伝わっていると思います。これ以上の罰は不要かと……」
「何で?僕の気持ちは静まっていないのに。」
ヘレヨンが納得のいかなそうな顔をする。
でもさっき怒ったから、少し気持ちは落ち着いていそうだ。
私は言葉を続ける。
「そ、それに、私はヘレヨン様との時間を大事にしたいんです。も、もし今処罰したら、私と2人で過ごす時間が減ってしまいますよ。」
「……。別にすぐ殺せるよ。」
「すぐではありません。私は一秒だって長く、ヘレヨン様と過ごしたいのです。」
必死に言葉を並べる。
表立ってヘレヨンに逆らうことは、まだできない。
この親子には申し訳ない。
でも、今この状況を鎮めるだけでもしないと。
親子共々殺されてしまう。
冷や汗が流れる。が、それでも沈黙するわけにはいかない。
私はヘレヨンに上目遣いをしながら、仕上げの一言を発した。
「……。お願いです。ヘレヨン様。」
「……。」
ヘレヨンの顔が穏やかになっていく。
「……。僕も君との時間が減るのは嫌だ。ごめんね。君の気持ちを考えてなくて。」
ヘレヨンはそう言って、私を抱きしめようとしてきたのだ。
「えっ……」
思わず避けようとするが、避けられない。
無理矢理抱きしめられる。
そして、王子は私の頬に手をかけ……




