追っ手
「……。どういうこと?」
私は事態が飲み込めなかった。
背後から大きな危険が迫っていたと言うのに。
「思ったより元気そうですね。」
突然、耳元で声がする。
「!?」
そして、時を開けずに何者かの手が、私の口を塞いだ。
動けない。
「んんっ!!??」
体をバタバタと動かし抵抗するが、相手はびくりともしない。
「あ、あなたは……!!」
そう喋ろうとしたが、口をもごもごとさせるしかない。
体の自由が効かない中、必死に頭を後ろによじらせると、そこには全身黒服に身を包んだ、満面の笑みをたたえる男がいた。
男はそんな私を見て面白そうに笑う。
「くくっ。さしずめ私が誰か、と言っている所でしょうか。私は追っ手です。人呼んで、ドロワット。」
男は笑顔のまま喋り続ける。
「家出は楽しかったですか?ヘレヨン様が首を長〜くしてお待ちですよ。」
「……!!」
騙された!!これは罠だったんだ!!
でも、何でこんな罠を……!?
かなと君を利用した罠なんて、私のかなと君の関係を、いや、私達が転生した事実を知っていないとできないはずなのに!!
まさかこの男が……!?
私はキッとドロワットを睨みつける。
ドロワットは全く怯むことなく続ける。
「まんまと引っかかりましたねえ。ヘレヨン様が『この男をちらつかせたら、ヴィヨレをすぐ捕まえられるよ。』とおっしゃっていたもので。早速人形にさせていただきました。」
「!?」
ということは、ヘレヨン……!?
ヘレヨンが、私たちの転生を知っている……!?
そして、私達が恋人同士だということも……!!
背筋がゾワゾワする。
「◯×△◇#&#……!!」
「こらこら。あんまり抵抗すると体力が持ちませんよ。お屋敷に帰ってから、ヘレヨン様が手づからたっぷりとお仕置きされるのですから。」
にこにこと笑みを浮かべるドロワット。
お仕置き……!!??
どんなの!?
拷問でも、乙女ゲーにありがちな展開でも、趣味が悪すぎる!!!
いや!!いや!!!
私は力を振り絞ってあれこれ抵抗するが、やはり効果はない。
「少し喋りすぎましたね。今から睡眠薬を吸わせますから、少し待っていてくださいね。」
そう言ってドロワットは、口を押さえている方と逆の手で睡眠薬の蓋を開ける。
終わる、終わる……!!
私は必死に息をしまいと抵抗したが、抵抗むなしく、段々と睡眠薬を受け入れた。
視界がぐらぐらとする。
このまま、踏み躙られちゃうのかな。
だんだんと瞼が下りてきた……。




