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リリーへの頼み

投稿が遅くなり申し訳ございません。

立て込んでおりました。

もしかすると今後は更新が週一くらいになるかもです。

リリーは缶に手をかけた。


中に入っていたのは、故ローザス公爵の遺書だった。


リリーを含む一族を案ずる内容や、貴族としての心構えなど書いてあったが、そこは特筆すべきことではない。


問題は、カルロスについての箇所である。


「カルロスは表向き、政略戦争の最中亡くなったとされている。しかし、カルロスは生きている。」


「……!!」


リリーが驚く。


「カルロスは本当に才のある、自慢の弟だ。思慮深く、常に他者を想う性格で、当時のメリライザ家の誰もが彼の当主就任を望んでいた。私のもう1人の弟、マルクを除いては。」


「マルク……。確か、ローザス公爵亡き今はメリライザ家の重鎮だったな。」


「確か、ってなんですの。アデル様は生まれてまもない頃から顔を合わせていらっしゃるでしょう。」


リリーが呆れた顔をして言う。


そして、遺書へと視線を戻した。


「マルクは一見物腰が柔らかく、人が良さそうに見える。しかし、本当は欲深く、金のためなら何でもする人間だ。当主になったら得られる財産を虎視眈々と狙っていたのだ。そして、ある時酒に弱いカルロスを騙し、酔わせ、『当主にはならない』という契約書を書かせたのだ。」


マルクって人、最低だな。


私がそう思っている横で、リリーは顔をふるふると震わせていた。


「マルク様……。あの方はそんなことする人じゃ……!!」


まあ無理もないか。優しかったはずの親戚のおじさんが最低なやつだった、みたいな話だもんね。


遺書は続く。


「カルロスはお人好しだった。実の兄にそんな仕打ちを受けたカルロスはショックを受け、衰弱し、妻と子を連れてとある田舎町へと身を隠してしまったのだ。私はこの卑怯なやり方を暴露しようとした。しかし、マルクは現大臣と個人的に仲が良かったことを利用し、カルロスを事故死したということにして、揉み消したのだ。」


リリーはすっかり黙りこくってしまった。



「問題はここからだ。カルロスは死んだことになっていたから、当主引き継ぎの時にカルロスとその家族への財産は渡されていない。しかし、私は欲深いマルクの目を盗んでカルロスの分の財産をとってある。だからリリー、カルロスへそれを渡してくれないだろうか。」


手紙の中で呼びかけられ、伏していたリリーが一瞬目を見開く。


「本当は私が渡しにいきたかったのだが、私はマルクに警戒されている。リリーは昔から正義感の強い、優しい子だ。だから、老いぼれたおじいちゃんの頼みを聞いてくれないかな。」


「……。そんな。まだ、マルクおじ様のことの整理もついていないのに……。」


リリーが途切れ途切れに言う。


そして、大きくため息をついた後、こう言った。


「でも、おじいさまの頼みなら、仕方ありませんわね。」


リリーは少し笑っていた。


いきなりこんなことを言われて、気持ちの整理もついてないだろうに、何で良い子なんだろう。


「……何かあれば手伝います。」


「……俺もだ。」


私達は思わずそう言った。


そして、私達は遺書に書かれたカルロスの分の財産の在り処や、カルロスの家の場所を確認し始めた。


背後にヘレヨンからの追手がいるとも知らずに。

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