リリーとクッキー缶
本日【9月2日】1回目の更新です。
お願いいたします。
「アデル様ーーー!!ここにいらしたんですねぇーーーー!!!」
聞き覚えのある声がした。
もう忘れている人もいるに違いない。
私を攫ってグリシーヌの影武者に仕立て上げた、おじいさんの山賊だった。
「アデル様ああああ!!!探しましたよぉ〜〜〜〜〜〜〜」
……。キャラ違くない?
どうやら身分の高い人には腰が低くなるらしい。
「……。突然どうした。」
アデルが聞くと、山賊のおじいさんはアデルにひそひそと何かを伝えた。
「……。そうか。良かった。」
アデルは少し口の端を上げると、そのまま山賊のおじいさんに別れを告げた。
「アデル、何があったの?」
「……。ああ、それはな、」
アデルは何かを言いかけた瞬間、
「わたくし、思い出しましたわ!!」
リリーが突然叫んだ。
「どうしたんだ。」
アデルが聞くと、リリーはアデルの持っていた箱を手に取り、服の袖で拭き始めた。
その箱は、干からびた土と一緒になって泥だらけになっていた。
しかし、しばらく拭き続けると、段々と可愛らしい模様が浮き出てきた。
何となくリリーの方を見ると、リリーは目に涙を溜めていた。
「……どうしたんだ。」
「これ、これ……。わたくしが子供の時に大好きだった入れ物なの……!!」
リリーが手にしているのは、ブリキ製のクッキー缶だ。
ヘレヨンにさらわれる前、市場で見たことがある。
何なら、おばあさまに買ってもらったこともある。
その可愛い見た目とバリエーション豊富な柄から、女の子にとても人気のある商品だ。
クッキーを食べ終わった後、缶の中に宝物を入れて楽しむのが、この世界の女の子の流行りと言ってもいい。
でも、こんな市場で売られているやつ、貴族のリリーなら何十個も何百個も買えそうなのに……。
不思議に思いながら再びリリーの方を見る。
リリーは大粒の涙をぼろぼろと溢していた。
「わたくし……。小さい頃、この箱がずっと欲しかったの……。でも、『こんな庶民のもの買わん』ってお父様とお母様に言われてしまって……。でも、どうしてもほしくて、使用人の子にお願いして、ひとつ買ってきてもらったの。でも……。」
リリーの涙は止まらない。
「嬉しくてつい、机の上に飾ってしまったの。気がついたら、お父様とお母様が処分を命じていたわ……。」
そんな。ひどい!
子供の宝物を捨てるなんて!!!
私とアデルは驚いて言葉も出ない。
「悲しくて屋敷中のゴミ箱というゴミ箱を探したのだけど、結局見つからなくて……。きっと、おじいさまが気付いて、取って置いてくれたのね。私のために……。」
良かったねえ、リリー。
私、こういう話、弱いんだよねぇ……。
私も思わずもらい泣きする。
「……。お前はなぜ泣いているんだ。」
アデルがなんか言ってるけど、気にしない。
私はリリーの背中をさすりながら、一緒に号泣した。
「……。」
アデルもリリーの頭をぽんぽんとする。
しばらくリリーと一緒に泣いていると、
「……。ごめんなさい。落ち着きましたわ。」
リリーが涙を拭き取って、顔を上げた。
「……。お待たせしましたわ。中身を見てみましょう。」
リリーは缶に手をかけた。




