可能の『か』
本日【8月28日】1回目の更新です。
よろしくお願いいたします。
「少し難しいのは、それ以外の文字です。」
本当は一部読める文字もあるのだが、初めてみた人が文意として分かるのは、ここまでであろう。
私が初めて大学で習った時もそうだったからだ。
私は続ける。
「例えば1番最初の文字、何か分かりますか?」
私は1番最初の「う」のような文字を指さした。
「これは……。ひらがなの『う』じゃありませんの?」
リリーが答える。
「確かに『う』に見えます。でも、実はこれはひらがなの『か』なんです。」
リリーとアデルが驚く。
「え?どうしてですの?どう見ても『う』ですわ!!」
リリーが驚く。
私は続ける。
「私も最初はそうだと思ったんですが、違うんです。何でこんなに『う』みたいな文字が『か』なのかというと、これは、昔は現代より多数のひらがながあったことが理由の1つとして挙げられるんです。」
「!?どういうことですの?」
リリーが不思議そうな顔をする。
「リリー様もご存知かもしれませんが、今のひらがなは、漢字が元になっています。」
「そうですわよね。例えば、今の『あ』は『安』という漢字からできているといいますし。」
「そうなんです。現代は『あ』という1つの音につき、『あ』を表す文字は1つしかありません。しかし、昔は『愛』が元になった『あ』、『阿』が元になった『あ』など、ひらがなの『あ』を表す文字がたくさんあったんです。」
「それは、つまり……」
アデルが口を開きかける。
「『あ』という文字1つを表すにしても、たくさんの表し方があった。それは、『あ』だけじゃない他のひらがなも同じこと。だから、1つの音につき複数、パターンがあることを覚えておく必要があるわけだな。」
アデル、すごいじゃん。
「アデル様のおっしゃる通りです。ですので、最初の文字の話に戻ると、この『う』に見える『か』は、現代でも使う『加』が元になった『か』ではなく、『可』が元になった『か』だからこんな形なんです。」
「なんだか難しそうですわね……。」
リリーが不安そうな顔をする。
しかし、大丈夫だ。
私を含め世の中の日本文学科生は、大学に入って初めて崩し字を読み始めることが多い。
でも、読めてるから。
「大丈夫です。慣れてくると勘が良くなってきます。これから私がそのパターンを覚えている限り紙に書くので、それを参考にリリー様はどれが現代のどの字にあたるか考え、解読してみてください。」
「分かりましたわ。」
そして、私達はこの「崩し字」の解読を始めた。
※「崩し字」に関する記述は諸説あります。




