リリーの頼み
久しぶりの最新話です。
また最低1日1話更新を再開するのでよろしくお願いいたします。
リリーが指差した先には、確かに理解できない内容が書いてあった。
その内容とは……
「ほら。この文字?みたいなもの。読めませんでしょう?」
ミミズのようなぐにゃり、とした文字が、そこにはあった。
(どんな字かは、このエピソードの画像を参照)
「色々な本を調べてみましたの。でも、こんな文字を使う言葉はありませんでしたわ。」
リリーが言う。
「……。俺も、見たことが、ない。」
アデルも口を揃える。何でそんなに途切れ途切れなんだ。
リリーもそう思ったのか、一瞬怪訝そうな顔をした。
そして、私に向き直ってこう言った。
「グリシーヌ。あなたにこの文字の解読を手伝っていただきたいの。」
「!!」
私に!?
いや、別にいいよ。いいんだけど、
「……。」
私は、しばらく無言を貫いた。どうしても理解できなかったからだ。
沈黙している私を見て、リリーが口を開く。
「やはり、教育係を持ってしても分からないのかしら。」
私の顔を覗き込むが、私は口を開かない。
「……。」
ごめん、リリー。この字読める。
でも、何でこの文字がこの世界にあるのか分からなくて、一回頭の中を整理させて欲しい。
私は困惑していた。
これは日本の昔の文字。崩し字だ。
美術館とかに展示されている、巻物に書かれた昔の字。あれだ。
それは分かるんだけど。
この西洋ヨーロッパの世界観で、日本の崩し字が出てくるのは何で!!??
雰囲気に合わなすぎる!!何だこのミスマッチ!!!
私は思わず頭を抱えたが、はっと気がついた。
そもそも、『囚われのヴィヨレ』はどういうわけかゲームの随所に日本の古典文学要素が散りばめられているゲームだ。
だから、このゲームで崩し字が出てきても、おかしくは……ない、のかな?
私は無理やり納得することにした。
そんなことをぐるぐると考えていると、
「お前。」
アデルが突然、私を呼ぶ。
「あっごめん!!反応してなくて……!!」
そう言うと、アデルは悲しそうな顔をしながら、
「……。お前、やっぱり……」
と言った。
リリーはともかく、アデルが何でそんなに悲しそうなの?
まあいいか。なぜこの世界観で崩し字が出てくるのか分からないが、リリーの頼みは承諾できる。
私は言った。
「大丈夫です。読めます。」
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