リリーの本
本日(8月20日)1回目の投稿です。
「え、あ……」
私はしどろもどろになりながらも、次の策を考えざるを得なくなった。
とりあえずリリーの横に座る。
が、全く策が思いつかない。
戸惑っている私の様子を、リリーは不快だと言わんばかりの顔をしながら見ていた。
そして、しばらくの沈黙が流れた後、リリーが口を開いた。
「あなた、アデルとどういった関係ですの?」
「わ、私はただの教育係ですが……。」
「ふぅん。」
リリーは私の顔を覗き込む。
「その割にはアデルが随分と入れ込んでるようだけど。」
リリーがにやりと笑う。
目は全く笑ってないけど。
「正直にお答えなさって。あなたはアデルとどういったご関係なの?わたくし、その気になればあなたを消すことくらい造作もありませんのよ。」
リリーがじりじりと私を追い詰める。
やばい。もう一回「教育係で……」って言っても通じないだろうし。なんて言えば……。
バサッ。
その時、リリーの手から持っていた本が滑り落ちた。
「あっ……」
慌てて拾おうとするリリーは、手を滑らせてブックカバーを剥がしてしまう。
本体の本には、
『分からない言語を読むには』
と書いてあった。
ん?もしかしてリリー、言語学に興味が?
日本文学科でも習うやつじゃん。
「リリー様って、言葉に興味がおありなのですか?」
思わず聞いてしまった。
リリーが一瞬、目を見開く。
「……あなたには関係ありませんわ。」
「…おっしゃる通りですね。実は私もそういったことに興味がありまして。つい伺ってしまいました。」
「……。」
リリーが無言になる。気まずい。
「お、お気を悪くされましたか、だとしたら申し訳……」
「あなた、本当に教育係なの?」
リリーが食い気味に聞いてくる。
「は、はい。一応……。」
「……。もし本当なら、この後わたくしの部屋にいらっしゃって。アデルも一緒でいいわ。」
「???」
何で?
私の疑問をよそに、リリーは立ち上がった。
「さて、わたくし先に戻りますわ。」




