違うそうじゃない
本日【8月18日】2回目の投稿です。
お願いいたします。
講義が終わって、アデルと庭へ向かう。
庭に出ると、
椅子に座って、静かに本を読む女性がいた。
どうやらこの女性がリリーのようだ。
明るい茶色の髪を大きなオレンジのリボンでまとめている。ドレスも鮮やかなオレンジ色だ。
ウェーブのかかった髪は豊かで、ふわふわと風にたなびかせていた。
リリーはアデルを見ると、
「……!!アデル!!」
一瞬だけ目を輝かせた。
つれない態度とか言ってたから、てっきりアデルに興味がないのかと思っていた。
案外そんなわけでもないようだ。
まあアデルは鈍感な所があるので、リリーの思いに気がついていないのだろう。
そう思いながら見ていると、今度は私が目に入ったらしい。
私を見た瞬間一気に顔が暗くなり、
「……。待ちくたびれましたわ。」
と言った。
当然だ。
今の反応を見るに、リリーはアデルに気がある。
そんなリリーからすれば、私は婚約者同士のお茶会に乱入する非常識な女だ。
そんな女を、よく思うはずがない。
___もし命さえかかっていなければ、私はこんな頼み確実に断ってたのに。
しかし、私は断れない。
もしアデルの頼みを断り、機嫌を損ねたとする。
そうなると私は3日間食事もまともに取れず、四六時中命を狙ってくる暗殺者の襲撃に、1人で立ち向かわなければならなくなる。
アデルに見放されることは、実質死を意味するのだ。
リリーには申し訳ないけど、彼氏と会うためにもこの命、取っておかないと。
そんなことを考えていると、リリーはやっぱり
「許嫁の前に他の女を連れてくるとは、どういう魂胆かしら?」
と怒っていた。
しかし、次の瞬間アデルは驚きの行動に出る。
私を差し出して、いや、「盾にして」の方が正しいかも。
「……。お前達2人で話せ。」
と言ったのだ。
「「はぁ??」」
私とリリーの声が重なる。
アデルの機嫌を損ねまいと思ってたのに、思わず声出ちゃったよ。
そして、予想通りリリーの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「本当に何なのあなた!!あり得ない!!!」
リリーはどこかへ走り去ってしまった。
私はアデルに言ってみた。
「追いかけた方がいいと思うよ、今の。」
「……。もちろんだ!ほら、行くぞ!!」
違う。そうじゃない。
強引に手を引かれ、私はアデルと共にリリーを追うことになった。




