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まだ手は打てる

1日1つは更新します。


その次の日。

私はこの城を出る方法を探りに、再び図書館へ出かけた。


昨日でこの国の政治の本や格闘術の本など、脱出に役立ちそうな本は全て取り上げられてしまったが、私にはまだ、読むべき本がある。


今日はそれを見に行くのだ。

そんなことを考えているうち、図書館へ着いた。

そして、私は借りて然るべき本を片っ端から並べる。


『子どもへの読み聞かせに!王国昔話』


『紙芝居 蛇と王様』


『読んでわかる!この国の歴史』……。


他にもたくさんある。


これだけあれば十分だ。私は思わずにやける。


早速作業に取り掛かろうとすると。


「今日はいったいどんな本を読んでいるのかな?」


ヘレヨンだ。急に背後から話しかけてくる。耳元で話しかけてこないでほしい。慌てて避ける。


「全く……君はつれないね。政治の本からそんな子ども向けの本に乗り換えるだなんて、君はよっぽど必死らしいね。」


「……。普通に読みたいだけです。」


「まあそんな意地を張っていても意味ないよ。子ども向けの本は所詮ただの物語だし。ただのお遊びだよ。それに、」


ヘレヨンは本を投げ捨てた。


「歴史は勝ったものにしか語れないし。だからそれを読んだところで、僕に都合のいい歴史しか書いてないよ。無駄なことはやめて、僕と遊ぼうよ。」


誰があなたと遊ぶっていうの。


そう思った次の瞬間。


無理やり私を床に押し倒してきた。


「やめて!!」


「そんなこと言って。まるで俺が嫌みたいな口振りじゃないか。」


そうにこやかに笑うヘレヨン。


瞬間、ヘレヨンの膝が音を立てて飛んできた。


ドゴッ!!!


「あ゛っっ!!!」


彼は思いっきり私の喉を殴った。


喉って急所なんだ。


「あ゛っ…う゛っっ…」


息ができない。苦しい。


喉と喉がくっつきそうだ。


おまけに吐き気を催してくる。


相手は男性な上に急所を殴られていては、抵抗できるわけない。


ヘレヨンの顔がだんだんと私に近づいてくる。


ひっ……


それでも必死にもがいたが、なす術もない。


彼氏の顔が思い浮かぶ。


助けて。


そう思っていた矢先、


「殿下。先の件でお話があるのですが。」


ヘレヨンの使用人が入ってきたのだ。


「……。困ったな。少し用ができてしまった。この続きはまた後で。」


そう言うとヘレヨンは図書館を出て行った。


良かった。助かった。


「ゲホッゲホッ」


喉がようやく元の状態に戻ってくる。


私は心の中でひたすら先ほどの使用人に感謝を送った後、ゆっくりと起き上がった。


危うく乱暴されてしまうところだった。


震えが止まらない。


本当に一刻も早くここを出なきゃ。


彼氏を見つけるより先に、私が手を出されてしまう。


そして私は、この国に伝わる「昔話」に手を伸ばした。


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