第1章:高校デビュー、即・大ピンチ!?③
そう、俺にはこんな展開に浮かれる権利なんてない。中学時代の俺は、クラスで一番目立たない、いわゆる「モブキャラ」だったんだから。
中学1年の春。俺、佐藤リクは、ただのゲームとアニメ好きの地味な少年だった。髪はボサボサ、服は母ちゃんが買ってきたダサいスウェット、眼鏡は分厚いレンズの黒縁。クラスのカースト? そんなの存在すら意識してなかった。俺の毎日は、放課後に家で【S◯O】を観たり、モ◯ハンをやり込むことだった。
「リク、お前さ、いつも一人でゲームやってんな。彼女とか欲しくねーの?」
ある日、隣の席だった翔がニヤニヤしながら聞いてきた。翔は当時からなんか陽気な奴で、俺みたいな地味な奴とも普通に話してくれる数少ない友達だった。
「彼女? いや、別に…。アニメのヒロインで十分だし」
「ははっ、お前ほんとオタクだな! でもさ、リアルも悪くねーぞ?」
翔の言葉に、俺は「ふーん」と適当に返してたけど、心のどこかでチクッとした。彼女かぁ…。そんなの、俺には別の次元の話だろ。
中学2年のバレンタインデー。クラスで一番人気の女子、橋本彩乃が、クラスのイケメン・高橋にチョコを渡してるのを見た。彩乃はニコニコ笑ってて、高橋は照れながら「ありがとな」なんて言ってる。あのキラキラした空気、俺にはまるで別世界だった。俺の机の上には、当然チョコなんてゼロ。いや、義理チョコすらなかった。帰り道、コンビニで買った板チョコを一人でかじりながら、俺は思った。
「…俺、こんなんじゃダメだな」
中学3年の文化祭。俺は勇気を出して、クラスの出し物でちょっと目立とうとした。演劇でモブ役を引き受け、セリフ一言だけ頑張って練習した。でも、本番で緊張しすぎて声が裏返り、客席からクスクス笑いが漏れた。舞台裏で、クラスのギャル系女子に「佐藤、めっちゃウケるんだけど!」と言われたけど、絶対バカにされてた。あのときの恥ずかしさは、今でも夢に出てくるレベルだ。
そんな冴えない中学時代を過ごした俺は、高校に入る前に決意した。
「絶対、変わってやる。高校では、俺もキラキラした青春を送るんだ!」
だから、髪を切ってコンタクトにして、ファッション雑誌を読み漁った。翔に「それ、やりすぎじゃね?」と言われながらも、俺は「イケてる自分」を目指して準備してきたんだ。なのに、なんで初日からこんなカオスな展開に!?