サキュバスの誘惑、フィオナ最大の危機!?
「ようこそ、私の可愛い子猫ちゃんたち……♡」
妖艶な声とともに、サキュバスがゆっくりと歩み寄ってくる。
(やばい……これはやばい!!)
フィオナは本能的に警戒した。
甘い香りが空間を満たし、肌を撫でるような熱を帯びた空気が漂う。サキュバスは一歩ごとに揺れる黒いドレスをまとい、その美しい指先でゆっくりと顎をなぞった。
「ふふっ……疲れたでしょう? ここでは何も考えなくていいのよ……ただ、私のそばに来て……♡」
「う、うぅ……」
フィオナは必死に意識を保とうとした。
男たちはすでに完全に骨抜きにされ、うっとりとした表情のままサキュバスの足元に跪いている。
(ちょ、ちょっと待って!! これ、ヤバくない!?)
「ふふ……可愛い顔をしてるのね♡」
サキュバスが優雅に歩み寄り、フィオナの頬にそっと指を滑らせる。
「っ!?」
ビクッと体が跳ねる。
目が合った瞬間、フィオナの心にざわりとした感覚が広がった。まるで温かい毛布に包まれるような、心地よさ。それでいて、抗いがたい甘さがある。
「……あなたは、まだ少し抵抗しているのね……♡」
サキュバスはクスクスと笑いながら、フィオナの耳元に口を寄せた。
「でも、大丈夫……すぐに楽になるわ……♡」
「そ、そんな……こと……」
フィオナは、ぐらりと体を揺らした。意識が霞んでいく。
(だ、だめ……このままじゃ……)
次の瞬間――
バンッ!!
教会の扉が勢いよく開かれた。
「フィオナさん!!」
「よかった、間に合ったわね!」
レイナとヴェロニカが駆け込んできた。
「……あら?」
サキュバスは少し驚いたように目を細める。
「女性がこんなところに……珍しいわね?」
「珍しいも何も、あなたを討伐しに来たのよ!!」
ヴェロニカが杖を構える。
「フィオナさん、大丈夫ですか!?」
レイナが急いでフィオナの肩を支える。
「う、うぅ……助かった……」
フィオナは頭を振って誘惑の魔力を振り払った。
「ふふ……面白いわ」
サキュバスは不敵な笑みを浮かべ、ふわりと宙に舞い上がる。
「なら、あなたたちも……私に溺れてみる?」
彼女の瞳が妖しく光った瞬間、空間全体にさらに濃密な魔力が広がった。
「くっ……強い……!!」
ヴェロニカが歯を食いしばる。
「これは……かなりの力ですね」
レイナも険しい表情になる。
「ふふ……どこまで耐えられるかしら?」
サキュバスは魅惑の微笑みを浮かべながら、指を鳴らした。
「さあ……甘い夢を見せてあげる……♡」
サキュバスが指を鳴らした瞬間、空間に妖しい波動が広がった。
「っ……くぅ……!!」
フィオナは歯を食いしばりながら、意識がふわりと浮かぶような感覚に抗う。
教会の中には甘く濃密な香りが充満し、頭がぼんやりとしてくる。このまま気を許せば、きっと心を奪われてしまう――フィオナは本能的にそう悟った。
「やばい……これ、思った以上にキツい……」
隣を見ると、ヴェロニカも額に汗を浮かべ、視線が揺らいでいた。
「さすがサキュバスね……魅了の魔力が桁違いだわ……っ!」
「ふふっ……力なんて使わなくても、私はただ微笑むだけで敵を無力化できるのよ……♡」
サキュバスは楽しそうに微笑みながら、フィオナたちへと優雅に歩み寄る。
「さあ、もう戦うのはやめて……楽になりましょう……♡」
「そ、そんなの……」
フィオナが必死に剣を握るが、力が抜けていく。足元がふらつき、意識が遠のきそうになる――。
その時だった。
ガシッ!!
「……フィオナさん、大丈夫ですか?」
レイナがしっかりとフィオナの肩を支えていた。
彼女はただ一人、サキュバスの魔力の影響をほとんど受けていないようだった。
「……え? レイナ?」
「フィオナさん、ここで倒れるわけにはいきませんよね?」
レイナは穏やかに微笑む。その表情には、まるで動じる気配がなかった。
「レイナ……あんた、何で平気なの……?」
ヴェロニカが驚いたように問いかける。
「……たぶん、サキュバスの魅了が“効かない”体質なのかもしれません」
レイナは淡々と答えた。
「えっ……?」
サキュバスも一瞬、驚いたように目を見開いた。
「私の魔力が……効かない?」
「うーん……何というか、私、もともと人付き合いが苦手なので……色仕掛けとか、あんまり興味ないんです」
「……なるほど、そういうことですか」
ヴェロニカが妙に納得した顔をする。
「いやいや!! それで効かないの!? そんなのアリ!??」
フィオナが思わず叫ぶ。
「でも、おかげで私は動けます。フィオナさんとヴェロニカさんは、私が守りますから」
レイナは静かに前へ進み、サキュバスを正面から見据えた。
「さあ、どうしますか? あなたの魔力が効かない私が、ここにいますよ」
サキュバスは目を細め、くすりと微笑んだ。
「ふふ……面白いわね。でも、私はね……こういうのも得意なのよ?」
彼女はゆっくりと手を掲げると、空間に魔法陣が浮かび上がった。
「魔力が効かないなら、直接の“快楽”を与えればいいのよ……♡」
ズズズ……!!
地面が揺れ、教会の床が突如として変化する。
「あれは……!?」
床から現れたのは、サキュバス特有の使い魔――触手のような動きをする魔力の塊だった。
「この子たちが、あなたを優しく包んであげるわ……♡」
ズルズル……
触手がうねりながら、レイナに向かって伸びてくる。
「これは……ちょっと厄介ですね」
レイナは冷静に拳を握ると、一直線に伸びてきた触手を――
バキィィィィン!!
一撃で粉砕した。
「……は?」
サキュバスが呆然とする。
「……うん、やっぱりこれも普通に壊せますね」
レイナは淡々と頷きながら、次々に伸びてくる触手を殴り砕いていく。
「え、えぇぇぇぇぇ!!??」
フィオナとヴェロニカが揃って叫ぶ。
「ちょっと待って!? サキュバスの触手って、普通の攻撃が通らない魔力の塊なんじゃ!?」
「ええ、そのはずだけど……あれ? なんで壊れてるのかしら?」
ヴェロニカも混乱しながらレイナの攻撃を見つめる。
「もしかして、レイナさん……“魔力耐性”とかあるんですか?」
「えっと……わかりませんが、たぶん……あります?」
「なんとなく言わないでよぉぉ!!!」
フィオナが頭を抱える中、サキュバスはついに表情を歪めた。
「……あなた、本当に普通の人間なの?」
「はい。普通の村娘です」
「どこがぁぁぁぁぁ!!!」
フィオナが全力でツッコミを入れる。
「……なるほど、甘く見すぎていたようね」
サキュバスはスッと表情を引き締めると、漆黒の翼を大きく広げた。
「ならば、全力で相手をしてあげる……♡」
彼女の瞳が妖しく光る。
「さあ、どこまで耐えられるかしら?」
ついに、サキュバスが本気を出す――!!