勝碁ステージ1
都立吾妻高校
五時間目の終わりのチャイムが鳴り収まる少し手前で隣のクラスから佐原が教室の扉を開け入ってくる。
授業を担当していた教員は挨拶を省略し教室を後にする。
「勝碁さぁ今日アイビー何時にこれんの?」
「九時にバイト終わるから、半には行けると思うわ」
「オッケー、茜ちゃん達にそう言っとくわ、お前遅いとブーたれるから」
佐原が続ける
「三ツ屋達居たら俺気まずいから、マジで早く来てな」
「別に平気だろ、一緒にやる訳じゃないんだし」
「いや気になるだろ、同じ空間に居たら」
アイビーボウル、俺たちの溜り場だ、地元の連中しか基本いないボーリング場だから同じ学校の別グループの奴らと遭遇することも珍しくない。
勝碁は守っても守らなくてもどっちでもいい約束をしてバイトに向かう。
PIZZA-LAB
夜八時五十分最後の宅配を終えた勝碁が店に戻る、高校生は十時まで働く事が出来るが今日はシフトの都合上九時であがる予定だった。
「戻りましたー」
店に入った瞬間、先輩達がニヤつきを見て勘のいい勝碁は自分に関係することだと悟った。
大学生のヒロキ先輩が話しかけてくる。
「お前今日九時までだったよな、惜しかったな」
「そうっすけど、なんすか?」
「何って分かるだろ?鎌鍛だよ」
「えっ俺行っていいすっか?」
「俺らは別にいいけど一応店長に聞いてこいよ」
店長からの許可取りも得て出来上がったピザを持って勝碁が店を出る。
「安全運転で行ってきまーす」
勝碁が出て行った後のPIZZA-LAB内
「あいつ気合い入ってんな」
「だってあいつガチだもん、普通おっかなくて行けねぇよあんなとこ」
「確かにあの娘はめっちゃ可愛いけど、俺が行くとボスかフードばっかりだし、丸さんの話聞いてからマジで行きたくなくなったもん」
鎌鍛 -カマカジ-
二週間に一度ぐらいペースで注文が入るPIZZA-LABで噂となってる配達先、玄関で対応してくれる人がランダムで現状確認出来ているのが四人、勝碁が惚れている女性、いつもフードを被っている男、メガネの男性、そして丸さんことPIZZA-LAB最年長アルバイトの丸山のみが一度目撃しているスキンヘッドの大男、過去にフードからお会計をちょろまかされ、ボスからはいつも無言のプレッシャーを与えられている、丸山に至っては大男の見た翌日からバイトを飛んでいる、この男性陣がPIZZA-LABスタッフに苦い思い出を与えている。
「今日勝碁がお目当てに会えるかどうかメシ賭けようぜ」