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プロローグ

 男は期待されていなかった。

 

 国内外の高級腕時計を中心に問屋業として大手に位置する八巻商会。

 代表を務めていた八巻英徳が脳梗塞で急逝した事により三十歳になったばかりの一人息子の頼英が役員会の決定で次の代表取締役として任命された。

 

 代々一族経営の八巻商会として、この人事はなんら不思議なことはない、ただ当社に務める従業員の多数は英徳の妻であり現経理部長の知子が一時的にでも就任すると思っていた。

 

 三十歳で大手企業の代表を務める事は昨今からみると珍しい事ではなく、懸念としてはこの八巻頼英という男の人格だ。

 

 留年を重ね二十四歳で大学を卒業した後もすぐには親の会社に入社をせず、二十七歳の時にようやく特別中途採用といった形で八巻商会営業部に配属された。

 目立った業績は無く、年の大半は出張といった名目で海外で過ごしている。

 大手企業の御曹司とあってか、その若さで二度の離婚歴があることが週刊誌に記された事もあり、社内外で周りは敵ばかりの状態だ。

 

 取締役に就任して早々に彼は新事業に手をつけた、テレビをはじめとする家電、その他電子機器に接続する会話機能を主とした簡易型A I を搭載したスマートスピーカーの自社製造、販売計画である。

 

 実績のない分野での参戦表明には、反感を通り越して呆れられた。

 

 それから僅か一年足らずで大成を収める。

 

 他社製品のインテリアデザインに拘ったスタイリッシュなスマートスピーカーとは相対し、柔軟な生地で外部を構成しセミのキャラクターを落とし込んだ八巻商会製スマートスピーカー【m i n t o 】その程よい不細工加減が想像を超える多くのユーザーに刺さったのだった。

 

 m i n t oの発売が開始されてから三年経ち八巻商会の会社全体での売上比率が40%に差し掛かろうとしているまさに絶頂期の中、カスタマーサポートセンターに一本の電話が入った、電話番号の末尾は百十番、警察からである。

 

 m i n t o の底面にはマジックテープがあり、外側の布地を剥がす事ができ、全て剥がすとスピーカー機器本体が露出する、そこに製品の故障などに応じる際にカスタマーサポートセンターの電話番号記載されている為、八巻商会の代表電話ではなく、ここに掛けてきたとの事だ。

 電話に出た女性スタッフに詳しい説明をされる事は無かったが、内容の触りを聞き上へ繋いだ。

 女性スタッフは電話から三十分後の昼休み同僚の一人に警察からの電話について話をした。

 

 瞬く間に社内中にその話が伝わる。

 

 m i n t o が犯罪に使われた。

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