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超常探偵  作者: 黛 美影
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第2話 おかしな家の話

 僕は超常現象専門の探偵、猫啼 家康だ。今日も僕のところに橘 楓が来た。前回のアンドロメダ王女との一見以降、彼女は探偵に興味を持ったらしい。

「今日は、とある家に行こうと思っているんだ。その家ではポルターガイストが起こるんだ。調査はもう終わってるからもう解決パートなのだけど、君も今日ついてくれるかい?きょうは満月だしね」

「いいんですか」

 目を輝かせて楓は言った。

「探偵見習い一見目の事件だね」


 しばらくして白薔薇学園から少し遠い、丘というよりは山の家に就いた。

「すごい家ですね」

 グレーの砂の塊みたいな家を見て楓はつぶやいた

「これはヴァナキュラー住宅というやつだね。ヴァナキュラー住宅というのはまあ、意味は特徴的な民家くらいな意味なのだけれど、日本じゃまず見ない建築様式だね」

 湖が満潮になっていて、綺麗で大きな満月が光となって湖面できらめいていた。

「そろそろ来るはずなのだけれど」

 僕がそう呟くと眼鏡をかけた黒っぽいジャージ姿の若い女性(依頼人)が現れた。次に口を開いたのは意外にも楓だった。

「紫陽花 香 先生じゃないですか」

 二人は顔を見あわせ、驚いて、少しして微笑みあった。

「探偵さん。私の担任の先生です」

「どうも」

 軽い会釈をして、

「では早速、なぜポルターガイストが起こるのかを説明させていただきます」

 そう言って、家の中に入る。木の扉を開け中に入る。家と言っても電気、水道、ガスは繋がっていない。楓の担任である香先生も住んでるわけではないそうだ。グレーの砂の壁が一面を覆うだけの空間に電池式のライトが乗った木製の机、木製のいす。床には段ボールの箱がいくつかあり、大量の本やレコードが乱雑に置かれている。

「いいおうちですね、特に床なんか綺麗な黒色で立派です。先生はここに住んでるんですか?」

「おじいちゃんが残してくれた家なの。電気もガスも水道もないから、住んではないけどたまにくるの。考え事があるときとかね」

「そうなんですね」

「楓ちゃん、君はなかなかいい観察眼をしてる。是非、なぜこの家でポルターガイストが起こったか推理してみてくれ」

「そうですね、この立派な床が夜になると足が生えてきて、歩き出すとかですかね」

「なかなかいい線言ってるよ。香先生、楓ちゃんは将来有望ですね。まあ、その推理は間違っているんだけれどね」

「探偵さん、真相を教えてください」

 2人は合わせていった。

「まずこの家で注目すべきことは床です。この床は強力な磁石が使われています。そして、この家の扉は鉄で、実は壁は純粋な砂だけの部分と、磁石にくっつく成分が混ぜられて作られています。香さんのおじいさんは磁石の専門家だったのではありませんか?」

「なんでそれを!?確かに私のおじいちゃんはリニアモーターカーの研究にもかかわっていた磁石の専門家だったらしいですが」

「こんな大きな一枚の磁石なかなかありませんし、値段も張るはずです。用意できる人は限られていますので大体想像はつきました。次に、大事なのは月の引力です」

「引力!?」

 楓が目を丸くして言った。

「この家は月の引力で少しだけ浮くんです。満月の日だけにね」

「そんな、ぜんぜん浮いているようには見えませんよ」

「そこが肝なんです。香先生のお爺さんは満月の日、すなわち月の引力が最も強くなる日に、家といっても床と扉以外が少しだけ浮くように作ったんです。いつもは弱い磁力で床とそれ以外の部分はくっついています。しかし、満月の日になるとこの家は床とその部分は切り離されるんです。おそらくこれを計算してこの家を作ったのでしょう。実際に薄い紙が、ほら」

 家の床と浮いている砂でできた塊の間に紙をはさみ押し出すとそれは家の外に出ていった。

「私のおじいちゃんはリニアモーターカーの開発に関わっていました。でも、定年で開発チームから外れてだからこの家を作ったのかもしれません」

「あなたがポルターガイストと思っていたのはコリオリの力で説明することが出来ます。遠くのものを狙撃するとき、まっすぐ打つとかえって外れてしまうというあれです。先生なら聞いたことぐらいあるでしょう。地球の自転の影響を受ける床とその上のものと、満月の日に浮いた状態になる壁にあるものが、自転の影響を受ける床とその上のものと、自転の影響を受けない壁のものが鑑賞しあって、ポルターガイストは起きたんです。これが調査の結果です」

 先生は唖然としていたがそのうち納得して

「私はおじいちゃんが好きでした。最近忙しくて会えてないですが、休みができたらまた、会おうと思います。ありがとうございました、探偵さんに楓ちゃん」


「おかしな家でしたね」

「あぁ、おかしくて、をかしくて、不可思議な家だった」

「私も定年になったら、お菓子の家を作りたくなりました。でもその前に探偵修行です」

 僕たちは満月に照らされた帰路を歩んで行った。

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