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どうしたらいいのかなあ・・・

6歳になった。


わたしは、王宮の図書館で古文書を読んでいた。もちろん、呪いの解き方を調べるためだ。


あれから3年ちかくたったにも関わらず、未だに魔法は使えない。ときどき例の道具でステータスを調べてみるけど、相も変わらずステータスマイナスの呪いは健在だ。


まったく、腹立たしい呪いだこと!


わたしは両親にお願いして、王宮の図書館に出入りする許可を取ってもらった。二人とも、まあまあ無理してくれたようだ。でも、わたしが魔法を使えないということで、魔法で身を立てる以外の道を開くためにと、娘の我儘わがままをきいてくれたのだ。


実にありがたい。


チート魔法使いになったら、きっと親孝行するからね!


それはさておき。


この魔導王国の国民は、名前からも想像がつくように、魔法が使える人ばかりが集まっている。他の国には魔法を使えない人もいるらしいが、少なくともこの国の人で魔法が使えない人に会ったことがない。


そのため、誰でも魔法が使える前提で、国の仕組みが作られている。建物などもそうで、この図書館に出入りする扉も、魔法で開け閉めするようになっている。個々人の魔力波長を記録しておき、その波長を感知して鍵が開く仕組みだ。


しかし、わたしには魔力がない。だから特別に、扉を開けるための魔道具を作ってもらった。なんでも、父親の友人に優秀な魔道具職人がいて、その人に頼み込んで作ってもらったそうだ。その人には、この魔道具以外にもいくつか作ってもらって、わたしは随分と助かっていた。いずれ、機会をみてお礼を言いに行くべきだと思っている。


この王宮図書館、さすがに魔導王国というだけあって、魔法に関する資料が山のようにあった。


「あなたに読める本があるのかしら?」


当初、母様は心配していたようだった。


・・・でも母様、そんな心配は無用なのです。


転生者チート能力の「なんでも翻訳」だけは、呪いの影響を受けていなかったのですよ!


本当に、これだけは運営かみさまに感謝したいと思った。


語彙力や計算能力は、前世のおっさんの時のまま、記憶力と頭の柔らかさが3歳に戻ったわけだ。そりゃあもう、本を読んで学ぶというタスクに関しては最強と言ってもいい。おかげで、わたしは古文書だろうが異国の書物だろうが、何でも読むことができた。


以来、わたしは図書館で本を読み漁ることが多くなった。


あまりに入りびたるせいで姉様が寂しがり、わたしも一緒に図書館に行きたいと言い出した。そして今では、二人で図書館へ通うのが日課となっていた。


当初、姉様が読める本は限られていたので、わたしが読み聞かせることが自然と多くなった。最初は難しい話に姉は退屈気味だったが、次第に魔法知識の全体構造を理解しはじめた。そして3年たった今では、読んだ本の内容を二人で話し合うまでに至った。


そうして3年たった今では、極めて高度な魔法の議論ができるようになっていた。姉様のレベルは、普通の10歳の子供が理解できるような内容を遥かに超えていた。


この姉様の頭の良さも尋常ではない。さすがは、あの二人から生まれた娘というべきか。


その成果というべきか、今では彼女の魔法の腕は、兄様にも勝るとも劣らないレベルにまで上達していた。子供とは思えないその魔法の威力に、次世代の魔導士団長の最有力候補だとか、伝説の賢者に肩を並べるのではとか、あちらこちらで噂されているそうだ。


わたしといえば、図書館にいないときは、姉様の魔法の鍛錬を熱心に見学した。それは、いつか呪いが解除されたときに、自分がすぐにでも魔法を使えるようにするための、イメージトレーニングのためだった。


それに、大好きな姉様が成長していく様子を眺めるのが、素直に嬉しかったこともある。


「それにしても・・・」


わたしは、大量に積み上げられた本を眺めて溜息をついた。


文献を調べ倒した結果、呪いについて様々な知識を得ることができた。そして、どんな呪いでも、解く方法があることがわかった。


一番簡単なのは、解呪の魔法を使うことだ。呪いの魔法レベルよりも高いレベルの解呪魔法を使えば、呪いは解除できる。とても単純明快だ。


しかし、この方法には問題があった。


まず、魔法を使う人間が、呪いがどんなものであるかを知っている必要があるのだ。呪いは、その内容を知ってしまうと、知った人間にも呪いがうつると言う問題がある。だから、解除を試みる人物は、自分が呪いを受ける覚悟を必要とする。


ただ、呪いの魔法のレベルよりも、呪いがかかる側の闇魔法のレベルが高ければ、呪いを受けることはない。だから、高レベルの闇魔法使いであれば、呪いを受けることなく解除することもできる。


ところが、今のこの世界には闇魔法のレベルが高い人間というのは、非常に希少な存在らしい。この魔道王国にすら、闇魔法を使える人間は数人しかいないそうだ。一番レベルの高い人でも、レベルはたかだか30ほどだと母様から聞いた。


そのレベルで、はたしてわたしのマイナス99レベルの呪いに対抗できるのか。甚だ疑問だった。


「自分で解呪の魔法をつかえればいいんだけど・・・」


その方法が絶望的なことは、最初からわかっている。なにせ、今のわたしは魔法が使えないのだから。


そんなわけで、解呪魔法を使って呪いを解く方法は、現実的とは言えなかった。


ならば、別の方法を模索するしかないわけなのだけど・・・


「呪いをかけた人物に解除させるか、わたしが死んで生まれ変わるか」


解呪魔法に頼らず呪いを解除するには、この二つの方法しかないと書物に書かれていた。


そこでわたしは、あらゆる手をつくして、呪いをかけたと思しき人物を探した。しかし、数年が経過しても、その人物のことはまるで分からなかった。


調査をするにしても、呪いのことを誰にも話せないことが、大きく足をひっぱった。


いかに前世の知識があるとはいえ、この世界ではただの魔法の使えない無力な子供にすぎない。そんな子供が、何のつてもない異世界で一人でできることなんて、たかが知れている


一緒に本を読んでいる姉様にすら、事情を話せないのも辛かった。せめて、彼女だけでも協力してもらえれば、ずっと調査が捗るだろうに。


でも、だめだ。


呪いの性質上、彼女にも話をすることはできない。


図書室の本はあらかた読みつくしていた。これ以上調べても、新しい情報は得られそうにない。


あと、できることといえば・・・


わたしは図書館の椅子にもたれかかった。


「・・・どうしたらいいのかなあ」


私は額に手をあてると、そのまま目を閉じた。


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