余談ですが12年前の事を夢に見ました。オニ令嬢と言われる私の、ほのかな恋心はここから始まりました。(切りぬき105)
「嫌だ、こんなオバさん! 僕は妹みたいな婚約者が欲しいのです」
師匠の6歳の長男が大声をあげました。
オバさんと言われた私の名は、ギンチヨ、8歳の女の子です。
私は、魔道剣士の修行のため、師匠の屋敷に住み込み、師匠の家族と寝食を共にしています。
師匠と、ご子息二人、弟子である私の4人でアップルパイを食べている時でした。
「お母さん、僕は初等部の一年生になりました」
「クラスの友達には婚約者がいます。僕も婚約者が欲しいです。」
長男が、母親に生意気なおねだりをします。
「あなたは、この男爵家を継ぐため、帝都の学園に進んでもらいます」
「帝都の学園で、婚約者を見つけることになります。だから、それまでは婚約者のことは考えず、勉強と修行に励んでね。」
「いやだ、僕も婚約者が欲しい」
男の子を持つ母親というものは大変な様です。
「そうだ、ギン姉さんに婚約者になってもらえば?」
師匠、こっちに話を振らないで! ちょっと嬉しいけど。
「嫌だ、こんなオバさん! 僕は妹みたいな婚約者が欲しいのです」
オ、オバさん? 確かに私は長男よりも2歳ほど年上ですが、、、
確かに世の中の婚約者と言われる令嬢は年下ばかりですが、、、
8歳にオバさんはないでしょ!
「それに、男みたいな婚約者だと、友達から笑われます! おしとやかな女の子がいいです!」
私が男みたいですって!
確かに私は男の子よりも強いですが、あなたのお母さん、師匠は、騎士団をも打ち負かす最強の魔道剣士ですから!
「ごめんねギン、この子はキツく叱っておくので、勘弁してね」
師匠は、長男の首に腕を回し、絞めています。
「大丈夫です、先に部屋に戻ります」
アップルパイを残して、私は部屋に戻ることにしました。
もう二度とアップルパイを食べないと誓いながら、、、
ダイニングを出ると、師匠の次男が追いかけて来ました。
「ギン姉さん、僕はギン姉さんが大好きです。僕が強くなったら、僕の婚約者になってほしいです。」
黒い瞳に涙をためた5歳の男の子から、、、告白された、、、
「ありがとう、うれしい、ファーストダンスを踊れる日を待ってるね」
膝を折り、目線を合わせて、黒髪をなでて応えました。
食べないと誓ったアップルパイだけど、、、
この子と一緒のときだけは、食べることにします。
◇
「ギン、起きろ。もうすぐ次の王国に着くぞ」
先輩の女性監査員様から起こされました。
貴族用馬車の心地よい振動の中、ずいぶんと懐かしい夢を見たものです。
私は、もうすぐ20歳です。
もうオバさんなのかな? まだだよね?
「はい!」
私、ギンチヨは帝国の女性監査員で、オニ令嬢と言われてます。
それでも、古い貴族社会をぶっ飛ばして、ほのかな恋心をかなえます。
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