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「スーパーバイオレンス激辛モリモリロールケーキって、ロールケーキに対して冒涜的すぎるだろ」

 自宅――――これと言って特徴のない二階建ての一軒家――――に着いた照。鍵を開けて、ドアを開けながら、「ただいま」と言うと、「おか~」と軽い感じの返事が返ってくる。

 返事がないと思っていた照は、時間を確認しても16時ちょっと過ぎなため、まだ帰ってこないはずの人物が、家にいる様子。

「あれ?帰ってたのか?」と独り言をこぼしながら、リビングに入る。


「兄貴、早いじゃん」

「今日は、バイトとか無いからな。真帆こそ、今日は大学で研究だって昨日聞いた気がするけど、今日休みだったのか?」

「う~~~ん」


 だらっと、ソファーに寝そべりながらテレビを見ていた少女――――照の妹である仲木真帆(なかぎまほ)は、ソファーから起き上がると、幼い見た目と派手で露出度が高い服装の上にヨレヨレの白衣と言うアンバランスな格好が見える。

そんな奇抜な印象を受けるが、本人と照は気にしていない。


「午前中に、あらかた片して、とりま終わったからしばらく休み~」

「へー、順調なんだ」

「そう!あたし、チョー天才でヤバって感じ」

「それは、良かったな。あ、これ昨日のお礼。行きつけの所で買ってきたから、冷蔵庫に入れとくよ」

「マジ!兄貴、あざす!!」


 「ひゃっほーい!!」と騒ぎ出す真帆。そんな真帆に照は「近所迷惑になるから、あまり叫ぶなよ~」と注意する。


 照が、制服から私服に替え終えてリビングに戻ると、チャイムの音が鳴る


「いらっしゃい、アキねぇ!」

「ゆっくりで、いいわよォ~。お邪魔しま~すゥ!」


 独特なアクセントのある第三者の声が、リビングに響く。


「あらァ~?照ちゃんも、いたのねェ」


 照の目の前にいる、誰もが見初める美女......ではなく、平均身長の照より二回りも大きい体躯と、キャバ嬢など夜の店で働く女性が着るドレスコートをびっちりと着こなしている。

そんな人物が、照に親しそうに話しかける姿は、ここが外なら奇異の目で見られていただろう。

 

「いらっしゃい、おじ...アキ姐さん。来るの明日じゃなかったですか?」

「ええェ~、そうよォ~。それと、照ちゃん、さっき叔父さんとか言おうとしてなかったかしらァ~?」

「な、な、な何のことだか...お疲れの幻聴ですよきっと!アキ姐さん、肩揉みますよ!?」

「そおォ~?じゃあ、お願いしようかしらァ~?」


 冷汗をだらだらと流す照。真帆から“アキねぇ”、照から“アキ姐さん”と呼ばれているバケ、じゃなく筋肉隆々の、漢女――――仲木秋宏(なかぎあきひろ)。照と真帆の父親の弟で、叔父にあたる存在である。


「それにしても、アキ姐さん。今日は特に凝ってますね~(か、硬ぇ...、結構本気で揉んでいるのに、鉄でも握りしめてるみたいだ!)」

「おおぉ~、そこそこ、そこよォ~。もうちょっとねじ込むぐらいの力で、お願いィ~」

「りょ、了解で~す(本当に何でこの人、あまり売れないバーの店主なんてやっているんだろ?)」


 照は、何故この筋力を使って、探索者になろうと考えなかったのか、内心考えてしまう。


「照ちゃんだって、世界トップレベルの探索者達と一緒にダンジョンに行ってないでしょォ~?それと、一緒よォ~。ワタクシ、だってやりたいことが、飲食店の店長だったってことォ~」

「...心を読まないでよ、アキ姐さん」

「わかりやす過ぎよォ?」


 心を見透かされたことに、苦笑する照。姐貴分である“アキ姐さん”は、色んな意味照が一生勝てない人物の一人と言えた。

 

「さァ~てェ、肩こりも治してもらえたしィ、少し本気で作っちゃうわよォ~!!」

「マジ!!アキねぇの凝った料理だって!!兄貴、グッジョブ!!」

「喜びたいけど、僕の指感覚がなくなってるんだけど...」


 19時になる前に、料理は完成した。


「ワタクシ流ドレス・ド・デミオムライスと自家製コーンスープセットの完成よォ~」

「イエェ~イ!!」

「え、なにこれ凄!!」


 出されたのは、おしゃれ手の凝った品。この二年間週に1、2回のペースで、料理が出来ない兄妹のため、作ってくれるアキ姐さんだが、ここまで本気の料理は、クリスマス以来であった。そんな普段の日に珍しく本気の品に、兄妹揃って目を輝かせる。


「さあァ、ご賞味あれェ」

「「いただきます!!」」


 三人での夕食が過ぎていく。一時間後。


「「ごちそうさまでした!!」」

「はい、お粗末様ァ~」

「あ、兄貴が買ってきてくれたケーキ食べるの忘れてた!!」

「あんらァ~?照ちゃん、珍しいわね」

「ああ、昨日レポート手伝ってくれたから、お礼に買ってきたんだ」


 ルンルン気分で冷蔵庫から、ケーキの箱を取り出してきた真帆。


ただ、箱を開けた中身が常軌を逸していた。いちごやラズベリーのような甘そうな赤さとは明らかに違う、食べなくても激辛とわかる赤トウガラシが乗った異彩のケーキであった。


「これには、慣れないわねぇ~。これ、」

「食べてないのに、辛さが伝わってくる」

「えへへ、いただっきま~す!............くぅ~、やばこの辛さ、最高!!流石、スーパーバイオレンス激辛モリモリロールケーキ!!」


 そんな激辛のケーキを食べて、平気でいる妹に頭が痛くなる照。ついに、自身の思ったことを、アキ姐さんに口に出す。


「アキ姐さん、食に関して僕が言うのもおかしい気がするけどさ」

 

 と、一泊置き


「スーパーバイオレンス激辛モリモリロールケーキって、ロールケーキに対して冒涜的すぎるだろ」

「ワタクシも、これだけはそう思うわァ~」


 二人の意見が、今年初めて重なった瞬間であった。


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