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9 残り97日 魔王、エルフと出会う

 魔王ハルヒは、赤鬼族だというノエル・ド・ブッシュと、知恵ある熊である森の熊さん、知恵に長けたドレス兎を共に、魔の山の一画にあるエルフの森を目指していた。

 ブラックドラゴンを貸し与えた吸血鬼は、今朝出発したはずだ。


「魔の山に住みながら、魔王に従わないとはね。私に不満でもあるのかしら?」

「山に住むのは、魔物ばかりではありませんよ。全て魔物だったら、おいらたちは魔王様の元に結集した同志たちを食い合わねばならねぇぜ」


 知恵に長けたドレス兎のコーデがグルーミングしながら答えた。おしゃべり好きなのは間違いない。知恵に長けたというのは自己紹介だ。どこまでの知恵があるのかはわからない。


 ちなみに、グルーミングとは獣系の魔物が頻繁に行う毛づくろいである。強いストレスを忘れるためにやると言われている。

 まさか、魔王と同行していることがストレスだとは、ハルヒは気づかなかった。


「ふうん。では、エルフというのも魔物ではないってことね」

「魔の山にいるのは、ダークエルフです。少しだけ魔物寄りですがね」


 二足歩行の熊である森の熊さんチェリーは、動物として最強の一画であるだけに、行動範囲は広い。魔の山については隅々まで知っているようだ。


「ここからですよ」


 赤鬼族のノエルが注意を促した。


「では、下がりなさい」

「魔王様? なぜです? 危険ですよ」


 ノエルが尋ねた。


「だからよ」

「ヒッ」


 ドレス兎が悲鳴を上げ、森の熊さんが道を開けた。


「魔王である私が、配下の影に隠れているわけにはいかないでしょう」

「さすがは魔王様……エルフは飛び道具を得意とします。ご注意ください」

「了解。ありがとう」


 ハルヒが前に踏み出した。

 足元で、なにかが切れた。


「エルフの縄張りというのは本当のようね。警戒用だと思うけど……貼ってあった糸が切れたわ。ノエル、チェリー、回り込んで。逃がさないように。私は正面から制圧する」


 ハルヒは笑った。逃げようとしたドレス兎を抱き上げる。


「あなたは一緒」

「ヒッ……」


 恐怖のあまりだろう。ひきつけを起こしたような声をあげるが、抱き上げたハルヒは気づかなかった。


 ※


 ハルヒが地面を蹴って馳ける。

 ハルヒに触れた植物が枯れ、地面が腐る。

 矢が飛び、ハルヒの足元の地面に突き立った。


「エルフですぜ」

「そのようね。エルフども、出てきなさい。私を直接狙っていないなら、許してあげる。ただし、私を殺す気で矢を放った奴は皆殺しにするわ」


 反応はない。ハルヒは待たず、歩き出した。

 進むにつれ、ハルヒは人間と同様の姿をした生物が、樹木に紛れて伺っているのに気づいた。

 最初は気づかなかったのだろうか。あるいは、エルフの集落地に近づいているためだろうか。


 ハルヒは、魔王として強い力を与えられていることは自覚していた。だが、何がどこまでできるのか、確認したことはない。

 いずれ、確かめる必要がある。少なくとも、勇者とぶつかる前には、自分の能力を確かめようと決意した。


 ハルヒが脚を止める。

 目の前の巨大な樹木の前に、真っ黒い肌のひょろりと背の高い男が現れた。


「魔王様、この木はエルフにとって神聖な木です。腐らせるのは……エルフにとって堪え難い苦痛となります」


 現れた男が、声を震わせながら訴えた。


「腐らせる?」


 ハルヒは脚を止め、周囲を眺めた。

 ハルヒが歩いてきた場所の草木が枯れ、地面が腐敗している。

 これも魔王としての能力なのだろう。


「私に従うの? 従わないの?」

「魔王様に従うか、魔の山を捨てるかしかないのでしょうね。魔王様に従うことで……我が一族に益があるのでしょうか?」


「森の木を全て枯らしてもいいのだけど……この世を魔物だらけにして、魔物たちに共食いをさせたいわけではないわ。私に従うなら、一族の繁栄を約束しましょう」


 ハルヒにそんなことができるのかどうか、確信はなかった。だが、交渉ごとだ。多少のはったりは必要だろう。


「……他の者と相談する時間を頂きたい」

「期限は明日」

「承知いたしました」


 魔王ハルヒは、エルフたちに選択を許した。だが、実際には逃すつもりなどなかった。

4日目はここまでとせていただきます。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションに直結しますので、

頂けた分だけ作品で返せるように頑張ります。


引き続き、よろしくお願いします。

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