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67 残り68日 魔王、勇者殺害を決意する

 水盆に写っていたアキヒコが消えた。

 魔王ハルヒは、ミスリル銀の水盆に仕掛けを施していた。ミスリル銀の水盆を向こうから覗こうとした時、ハルヒの姿がロンディーニャに見えるよう、作成した魔道具を仕掛けておいたのだ。


 アキヒコは、ハルヒをロンディーニャだと勘違いしたままだった。

 あまりにも体調を気遣うアキヒコに、ハルヒはカマをかけた。

 結果としてはっきりしたのは、ロンディーニャ姫がアキヒコの子どもを宿していることだ。


 ずっと押さえつけていた感情が、ハルヒの全身を襲った。

 怒りを拳に集める。

 腕をふるった。

 激しい衝撃で、魔王城の壁が吹き飛んだ。


「敵襲かい?」


 勇敢なドレス兎が、真っ先に飛び込んできた。


「なんでもないわ。魔女サリーを呼んで。壁の修復も頼むわ」

「はいよ」


 コーデが消える。ハルヒは、静かに呼吸を整えた。


 ※


 魔王ハルヒは、魔女サリーに尋ねた。


「勇者アキヒコがザラメ山地にいるらしいことがわかったわ。私を倒すための剣を手に入れると言っていたけど、何か知らない?」


 壁の修復ための木材や岩が運び込まれる反対側で、サリーは地図を指差した。


「ザラメ山地の頂には、巨大な剣の形の岩があり……大昔に天から落ちて来た大剣だという言い伝えがあります。アキヒコというのが本物の勇者であれば、何か起きるのかもしれません。言い伝えに頼って武器を探すより……アキヒコとやらは、ドワーフの工匠を探しているのではないでしょうか」


「ドワーフ? それなら、魔の山に住処の入り口が見つかったと報告があったわ」

「……ほう。それは知りませんでした。ですが、ドワーフはむしろ、ザラメ山地の鉱脈を昔から根城にしております。ただ……ここ数百年は噂を聞きません。鉱脈はこう……」


 サリーは、地図上に指を這わせる。ザラメ産地から真っ直ぐ南に指を運ぶと、その先にはカバデール、次いで魔の山がある。


「地下の大迷宮となっていました。魔の山側にも貫通し、中で繋がっているかもしれません」

「……勇者が探すとして、伝説の剣とドワーフ、可能性としてはどちらだと思う?」


 ハルヒに尋ねられ、魔女サリーは腕を組んだ。先ほど答えたはずの問いだ。意味がないはずがない。

魔王の心中を察したか、魔女サリーが逆に尋ねた。


「勇者を早期に打ち倒すお考えですか?」

「ええ。この国ごと手に入れる算段はついているもの。私を殺せるのが勇者だけなら、手をこまねいている理由はないわ」


「……さすが魔王様です。可能性としては……そうですね。真実を誰も知らない伝説より、ドワーフの工匠を頼るでしょう。人間たちに、魔王様のような付与能力を持った者がいれば、魔王様に命取りになるような武器を作り出すかもしれません。まあ……今の魔王様が負けるところなど、想像もできませんがな。おひょひょひょひょ」


 最後に高笑いをする魔女を置いて、戻って来ていたコーデに告げた。


「私はドワーフの住処に向かう。ノエルたち鬼族に付いてくるように伝えて」

「おいらは?」

「あんたもよ」

「はいよ」


「それから、ブラックドラゴンを再召喚するわ。剣の形の岩……伝説が本当かもしれない。サリー……残った魔物たちだけで、城の守りは大丈夫かしら? 誰も攻めてこないと思うけど」


「魔王様が不在の間に攻められたところで問題はございませんが、ダークロードも出発させてしまいましたし……代理の王が務まる者を召喚してはいかがでしょう。例えば……山ガエルの王ジャバなどはいかがですか?」


 魔女に聞かれ、ハルヒは自分の脳裡に意識を集める。魔法陣が思い浮かぶ。


「うん……召喚できそうね。あっと……ここじゃ狭いわ。玉座の間に移動しましょう」


 魔王ハルヒは、魔王城を不在とする間に留守を任せるため、粘液系の魔物たちを束ねる山ガエルの王ジャバを召喚した。

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