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42 残り80日 勇者、ダンジョンの奥に至る

 勇者アキヒコは、魔術師ペコとドワーフのギンタと共に、王家の洞窟を探索していた。


「アキヒコ、右」

「ほい」


 立ち上がる巨大なトカゲに、アキヒコが雷鳴の剣を叩きつける。


「今度は左からじゃ」

「わかった」


 火事場の盾は、疲れていても力を与えてくれた。飛びかかってきた大蛇を防ぎ、雷鳴の剣を振るう。

 雷鳴の剣は、電気を放電するようなことはなかったが、傷つけた相手を高確率で麻痺させる。

 電気を流しているのかもしれない。


 洞窟に住み着く普通の生物か魔物かの区別はアキヒコにはできなかったが、白い大蛇が入り口付近を縄張りにしているのだ。洞窟の中だけで成立する生態系なのだろう。

 少し拓けた場所で、3人は休憩をとることにした。


「かなり潜ったな」


 種火を灯し続けることに慣れたアキヒコは、適度な大きさの火をずっと灯したまま、自分が書いて来た地図に目を落とした。


 人型の魔物が出ないため、アキヒコの心情的には楽だったが、天然の洞窟にいてもおかしくない生物か魔物か、わからない者たちに終始襲われ、地図は正確とはいいがたい。

 少しでも手の空いた時に、移動して来た感覚だけで書き入れて来た。


「王家の秘宝だから、厳重に守られているはずだよ。この洞窟を作るのに大工事を行なったって記録は見たことがないから、もともと自然にできた洞窟を利用したんだと思う」

「なるほど……だから比較的、わかりやすい構造なんだな」


 魔術師ペコに答え、アキヒコが地図をなぞった。歩いて来た場所は全て、自然にできた洞窟だと思わせるものだった。

 いくつかの分岐はあるが、意図的に迷わせようとした形跡はない。


「大工事でなかったのなら、人の手が入った場所に出れば、このダンジョンの行き止まりに近づいたと思っていいじゃろう」

「ところでギンタ、どこまで付いてくるの?」


「興味をそそられる鉱脈が見つかるまでじゃ。もっとも……いい鉱脈があっても、そっちの勇者さんと一緒にいたほうが面白いと思えば、ずっとついて行くかもしれんぞ」

「指の欠損を直すんじゃなかった」


 ペコが頭を掻き毟る。


「せっかく2人きりなのに、邪魔をしたかの?」


 ペコがむすっとした顔でにらみかえすが、何か言う前にアキヒコが口を挟んだ。


「ギンタは戦わないのか?」


 ギンタは、手に巨大なハンマーを持っている。採掘にも使えるのかもしれないが、主に戦闘用に見える。


「戦うさ。いざとなればな。じゃが……わしは年老いておる。経験を積んだところで、伸び代はあるまい。それより、勇者殿に譲った方がいいじゃろう。そっちのお嬢さんも、同じなんじゃろ?」

「ペコよ。私がギンタって呼んであげているんだから、覚えなさいよ。私は違うわ。戦闘用の魔法は使えないから、アキヒコの身の回りの世話をするために付いて来ているのよ」


「では……敵が手強くなれば、勇者殿とはおさらばか?」

「……戦える人で生活魔術が使用できる人がいるなら、その人に任せることになるでしょうね。しかないわ」


 ペコの口調は寂しげだった。宮廷魔術師を父に持つペコとしては、おかしなことだとアキヒコは尋ねた。


「どうして、戦闘用魔法を使用できないんだ?」

「……私の師匠に封印されているからよ」

「生活用の魔法でも、戦いに応用できるんだが……」


「それは、アキヒコの魔力が異常なだけよ」

「聞く機会があれば、王にでも姫にでも尋ねてみよう。ペコが戦えるようになる方法がないか。僕は……ペコがいい」


「私をその気にさせるなら……責任とってよ」

「ああ」


 アキヒコは立ち上がり、ペコの手をとった。ギンタは立っても座ってもあまり変わらない。

 洞窟の探索を再開する。

 ほどなくして、むき出しの岩場だった洞窟が、石畳に変わった。

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