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23 残り90日 魔王、入浴する

 ゴーレムマスターテガのゴーレム作成法は、三対ある手の平を打ち合わせて行うというものだった。

 最初の一対で造形を、次の一対で動作を、最後の一対で知恵を与えるものだ。

 一動作ごとに魔法陣が展開し、魔法陣を起動させるために合掌の動作が入る。


 ハルヒは、ゴーレムマスターが土塊さえあればどんな形のものでも生み出せることに気づいていた。

 最初の合掌で止めれば、動くことも知恵を持つこともない、ただの土製の道具ができる。

 魔王ハルヒは、テガに土製の風呂桶を作らせた。


 水と火に弱いと言っていたが、何時間も水につけ、火で炙った場合のことだ。

 そんな目にあえば、大抵の魔物は耐えられずに死ぬ。風呂桶は魔物ではない。壊れたらまた作らせればいい。


 風呂は、最初に自室として使用していた、地面を掘り下げた地下に作らせた。

 土がなければ、テガの力が使えないからである。

 水と水を温める方法は、ハルヒ自らの力でどうにでもなった。


 水を生み出すことも、水の温度をあげることも、意識して触れただけで実現した。

 魔法とは思えなかった。それが、ごく自然に持っている能力に思われた。

 魔物たちの中で、呪文や魔法陣を使用するのは魔女だけだ。


 大部分の魔物は、こういう力の使い方をするのだろう。

 とにかく、ハルヒはこの世界に転移して、10日を過ぎて初めて風呂に入った。

 お湯の中で手足を伸ばした。


 気持ちがいい。

 アキヒコはどうしているだろう。

 王城にいるのなら、毎日風呂に入っているのかもしれない。


 どこかの映画で見るように、侍女に体を洗ってもらっているのかもしれない。

 アキヒコのことを考えているうちに、ハルヒの頭に血が登ってしまったのだろう。

 風呂の水が蒸発し、地下室が水蒸気に満ちた。


「魔王さま、大丈夫ですかい?」


 突然水蒸気が爆発したので驚いたのか、入り口で見張りを命じられたドレス兎が飛び込んできた。

 裸を見られて困る相手も魔の山にはいない。だが気分の問題で、裸で湯に浸かっているのを見られたくはなかった。


 だが、さすがにドレスを着ているだけの兎に恥ずかしがっても仕方がない。そのため、コーデを見張り役に任命したのだ。


「大丈夫よ。そろそろ服が乾いた頃だと思うわ。魔女に言って、私の服を持ってくるように言って」

「はい」

「それから……そろそろエルフたちの死体焼きが終わる頃でしょう。抽出が終わったミスリル銀を持ってくるよう、ダークエルフたちに伝えて。コーデが自分で行かなくていいわ。チェリーに行かせなさい」


 ダークエルフは、大量に死んだエルフを燃やし、ミスリル銀を抽出する役目を果たしているはずだ。

 エルフの死体が大量にあるため、3日はかかると言われているのだ。

 その3日が、過ぎようとしている。


「ようやく……アキヒコに会えるわね。10日ぶりね。さて……どんな顔をしているかしらね」


 魔王ハルヒは、さぞかし恐ろしい顔をしていたのだろう。

 ハルヒの服を運んで来た魔女が、悲鳴をあげて立ちすくんだのだから。

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