21 残り91日 魔王、ゴーレムにはまる
魔王ハルヒは、召喚したゴーレムマスターにテガという名前をつけた。
早速人型のゴーレムを作らせた。
土塊からゴーレムを作るというテガの技は、ハルヒが想像していたのとは違った。
ハルヒは、テガが3対ある腕と3つの頭を駆使して土を捏ね上げるのだと思っていた。
実際には、テガは土がある地面に出て、魔法陣を展開させてゴーレムを生み出した。
一度に一体が限界らしいが、休みなく生み出せるらしい。
ハルヒは、昨日1日で生み出したゴーレムの視察を行った。
建築中の城の外堀に並び、人間の形をした焼き物を思わせるゴーレムが50体も並んでいた。
「ふむ……悪くないわね」
「はっ。ありがとうございます」
ハルヒが言うと、テガが深々と腰を折る。
「どう?」
「能力を試す必要がありましょう」
問われて答えたのは、赤鬼のノエルである。ノエルの言葉に、テガが手で招いた。一体だけ、列を外れて進み出る。
「関節の動きも滑らかね。ある程度の動きが可能なら十分よ。相手は人間の軍隊だもの」
「いえいえ。魔王様へお仕えするゴーレムです。一体でドラゴンも狩れるほどにして見せましょう」
「面白い。では、どれほどの動きか見せてもらおう」
テガに触発されるように、ノエルが武器を手にした。棘が出た金棒である。
「1日に50体ずつ、毎日作れるの?」
「残念ながら、昨日は魔力を使い果たしました。一日では回復しませんので、今日からは、一日に10体ほどが限界です」
「なるほど……魔力の回復次第ってことね。いいわ。ノエル、壊していい。手を抜かないこと」
「承知しました」
ノエルが力強く踏み込み、金棒を打ちおろす。
ゴーレムの兵士は片腕で金棒を受ける。持たされていた剣を突き出した。剣もテガが作成したのだろう。色が土色だ。
ノエルの肌に剣先が埋まるが、途中で止まった。
ノエルは怯まず、さらに金棒で殴りかかる。
ノエルの腹が避けて血が吹き出たとき、ゴーレムは粉々に壊された。
「……強えぇ」
魔王ハルヒの足元にいたドレス兎のコーデが声を震わせた。
「コーデの言う通りね。ノエル、手当をしてきなさい。この強度なら、人間の武器など問題にならないわ。力もそれなりにあるみたいだし……弱点はあるの?」
「元が土ですので、水に長時間浸かれば溶けます。火で炙ればひび割れがします」
「無敵ではないってことね。それぐらいは仕方ないわ。これで……平原の街カバデールでしたっけ? 攻め込む目処がつきそうね。どう?」
「これが100体もあれば、壁が出来ます。人間の兵士の数によりますが、簡単には負けないでしょう」
ノエルが答えた。ハルヒに治療をしてくるよう命じられ、一度退席して腹に葉っぱを貼り付けて戻ってきた。
剣で刺された傷の治療が、葉っぱを張り付けるだけという程度には、鬼族は頑丈なのだ。
「では、5日後に攻めるわ。カバデールに出す宣戦布告の文書、作り直さないと」
「宣戦布告が必要ですか?」
「人間たちに、反戦する気持ちを抱かせないようにしたいのよ。そのためには、向こうにも準備する時間をあげないとね」
「承知いたしました」
ノエルが腹を抑えながら腰を折る。コーデが走り出したのは、城に戻って魔女を呼ぶためだ。
「人型以外のものも作れるの?」
今後の方針が決まったところで、ハルヒは話題を変えた。
「我輩が知っている形でしたら」
「ちょっと、やってみてくれる?」
ハルヒが注文したのは、エルフの森で死体を燃やすのに使用したような、長方形の箱型だった。




