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113/203

113 残り45日 魔王、窮地を知る

 魔王ハルヒは、クモコを姿見のない部屋に閉じ込めることにした。

 姿を映し出す媒介がなければ、アキヒコも連絡が取れないと考えてのことである。


 クモコはハルヒにねじ伏せられたこともあり、反抗はしなかったが、他の魔物のように心服しているという態度はとらなかった。

 ハルヒに姿のみ同じ複製が居ることを広く知られる事を避ける意味でも、普段は閉じ込めておくことになった。


 ハルヒはクモコを閉じ込めた後、カバデールを任せた魔物たちを呼んだ。

 しばらくこの町に居座っていた魔王が偽物だったとは、まだ公表していない。 

 領主の屋敷の客間に呼び寄せた。


 領主の執務室は、ハルヒが燃やして煤だらけなのだ。

 ゴブリンの死体を操るネクロマンサー、ゴーレムマスターのテガ、森のクマさんチェリーに神獣スモモを、魔王ハルヒとドレス兎コーデ、堕天使サキエルが待ち受ける形になった。


「しばらくぶりね、ネクロマンサー。チェリー、スモモには先に会っているけど……魔王として正式に会うのは久しぶりだわ」

「お変わりないようで、安心いたしました」


 ゴーレムマスターテガが深々と頭を下げる。


「私が変わってしまった……という噂でもあったの?」


 先に会っていたチェリーやスモモは目配せをするが、クモコが正体をあばかれた時にいなかったテガは言った。


「7日ほどまえ急遽町に戻られ、我輩たちに一言もなく町の様子も尋ねられず、人前にも表れずただ生贄を所望する。これでは……魔王様は変わってしまったのだと疑う者がいても当然かと」

「……確かにそうね」


 ハルヒは、立ったままだった魔王軍の幹部たちに椅子を勧めた。


「でも、そいつは……」


 口を開いたコーデを、ハルヒが黙らせる。


「先に紹介するわ。こっちは、堕天使サキエル。地下洞窟で、地獄の魔獣ベヒーモスに封印されていたのを解放したの。ゴブリンを人間と間違えて知恵を与えたために、堕天させられたらしいわ」

「……おかしな天使だ」


 ネクロマンサーが呟いた。サキエルは笑って済ませる。


「仕方ないのよ。ゴブリンと人間の見分けができないぐらい、目が悪かったのだから。ドワーフたちの仕事は見事だったわ。カバデールにはいないの?」

「……ドワーフたちを仲間にしたのですか?」


 テガが尋ね返す。


「ええ。かつて地下帝国があったのは知っている?」


 テガとネクロマンサーは首を振る。つい最近召喚されたばかりなので知るはずもない。

 チェリーが言った。


「人間がいない分、栄えていたとか」

「らしいわね。魔獣ベヒーモスが度々襲来して、滅んだわ。でも、その生き残りがいたのよ。生き残りのうち、大部分は地上に出て人間の奴隷になり、ごく僅かが、地下洞窟で採掘を続けていたのね。ざっと……100年の間よ。私が引き入れたのは、100年間採掘を続けた、ちょっと異常なドワーフ20人ね。人間に隷属していたドワーフは、女王ラミアに従って地下帝国の再建に協力するはずだわ」


「堕天使サキエルに女王ラミア……いずれも伝説です。その上ベヒーモスとは……魔王様はよくご無事でしたね」


 スモモが感心してみせる。ハルヒは首をひねった。


「そんなに驚くこと? 私が殺したベヒーモス……実は死にかけだったのかしら?」

「いえ。血気盛んでしたよ」


 ハルヒは、事実上パンチ一つでベヒーモスの頭部を破壊した。感心されるほどのことはしていない。


「それで……私が変わってしまったと考えた者たちは、現在はどうしているの? 私を殺そうとしているのかしら?」


 ハルヒの声が低く下がった。テガが仲間たちを見てから答える。


「人間たちが凶暴になりました。以前は魔王様を恐れて魔物たちや獣人たちにも手を出しませんでしたが、魔王様が戻っても閉じこもって居ると知り、力のない魔物に暴力を振るっています」

「……実際に犠牲が出ているの?」


「主に豚族を中心に、人間たちに捕食されました。戦う力のない魔物は魔の山に逃しましたが……人間に殺された魔物は数百に及びます。人間側にも被害は出ていますが、数十人に収まるでしょう」

「あなたたちは、何をしていたの? ゴーレムとゾンビ兵なら、人間たちを抑えられたでしょう」


「ゴーレム兵は町の北側に配置を、ゾンビ兵は外からの侵入者に警戒しています」

「私がそう命じたから?」

「はい」


 テガとネクロマンサーは同時に答えた。


「随分な被害ね。いい時に戻ってきたというべきかしら。人間を取り締まらなくては……」

「しかし……魔王様……」


 スモモが口を開く。ハルヒは先を促した。


「ザラメ産地の東側を回り込み、王都からの兵2000がカバデールに向かっていると、ハーピーの斥候が報告しています」

「……わかった。なんとかするわ」


 ハルヒは宣言し、魔物たちの反論を許さなかった。

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