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101 残り51日 魔王、堕天使を更生させる

 魔王ハルヒは、堕天使サキエルと鬼たちを引き連れ、ラーファの領主たちと町の北の平原に来ていた。

 昨日町を破壊した後、領主邸に宿泊した。破壊の後始末は、ハルヒの知ったことではなかった。宿屋が壊れた原因は、宿の従業員が片付けるために神殺しの剣に触れたことだとわかったからだ。


 昨晩、もう一度剣を巨大化させた。領主邸の庭園で行い、すぐに縮小したため、被害は出ていない。結果として、ハルヒが手放し、ほかの誰かが触れたときに瞬時に巨大化するのだと判明した。


「この辺りでいいわね」

「あの……魔王様、ゴミを捨てるための穴を掘っていただけるとのことですが、これだけの人数でできるのでしょうか?」


 ラーファの領主はおどおどと尋ねた。普段の態度は知らないが、魔王ハルヒに萎縮していることは間違いない。


「ええ。任せて」


 ハルヒは言うと、神殺しの剣を取り出した。

 軽量化の魔法陣を何重にもかけてある。そのほかに、摩擦を減らす魔法陣を刃に施す。

 剣の切っ先を下に向け、地面に突き立てる。


 軽量化する魔法陣を消滅させた。

 途端に、長かった剣身の全てが地面に沈む。柄の部分すらめり込もうとした。


「ノエル、持ち上げてみて」

「はっ? 私がですか?」

「いいから」


 持てるはずがないと思ったのだろう。赤鬼ノエルをもってしても、見るからに重そうなのだ。

 ノエルが、地面にさらにめり込もうとしている剣の柄に触れる。

 その途端、地面に沈んでいた神殺しの剣が巨大化した。


 わずかに離れたラーファの町で、建設中だった塔が崩れる。

 民家が倒壊した。地面が動いたことで、地震がラーファを襲ったのだ。

 剣の巨大化の勢いで、ノエルは吹き飛ばされていた。


 その剣にハルヒが触れる。同時に、軽量化の魔法陣を展開させた。

 すぐさま剣が縮む。魔法陣を刻みつける。

 ハルヒの手に、神殺しの剣が収まった。


「この穴では足りないかしら?」


 ハルヒは、剣が巨大化した分だけ動いた、地面に空いた穴を見下ろした。下は見えない。


「……あっ。マグマが噴き出した。よかったわね。マグマに落ちれば、原型もなくなるし、この穴が溢れることもないわ」


 ハルヒは自分の仕事に満足し、領主の肩を叩いた。

 領主は連れてきた人足の男たちに向かい、この場を廃棄物処理場とすることを宣言した。


「ところで、以前廃棄物を捨てていたドワーフたちはどうしたの?」

「人間以外の種族は、全て地下洞窟に向かわせました」

「ならいいわ」


 長い間、ゴミの処分場としか認識されていなかった深い地下空間である。そこに向かわせたことで、人間以外の種族を皆殺しにしようとしているとの噂が立っていることは、ハルヒは知らなかった。


 ※


 魔王ハルヒは、逗留していた宿が全壊したため、再び領主邸に戻り、空いた部屋を使うことになった。

 堕天使サキエルを呼び出し、昨晩吸血鬼の王子が届けた眼鏡を渡す。

 吸血鬼の王子は、領主邸の酒蔵にあった空き樽で寝ているはずだ。


「これは……」


 サキエルが、不思議なものを見るように、ハルヒが渡した眼鏡のフレームに触れた。


「こうするのよ」


 畳まれていたフレームを広げ、サキエルの顔に眼鏡を載せる。

 サキエルが大きく目を見開いた。


「おお……なんと……ここは神の国ですか? 私は、許されたのですか?」

「神の国に魔王はいないでしょ? 大げさね」


 ハルヒは笑った。サキエルはそれほど感動し、打ち震えていた。


「私にとって、世界とはぼんやりとしたものだったのです。それは神々の呪いと言われていました。まさか……神々の呪いを打ち払うとは……魔王様は……神すら凌駕するのでは……」


「そんな大層なことではないわ。でも……この世界に生まれ落ちて以来、数千年もぼんやりとしか世界が見えていなかったのなら、つまらなかったでしょうね。でもこれで……ゴブリンと人間を間違えて、ゴブリンに知恵を授けることもないでしょう」


「えっ? 私が知恵を授けたのは、ゴブリンだったのですか?」

「あなたが堕天使となった当時のことはわからない。でも……ラミアの配下だったゴブリンを、私に向かって人間だと紹介したのは間違いないわ」


 ハルヒが言うと、サキエルは申し訳なさそうに頭を掻いた。

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