表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/38

【没作品】ヤクザ転移4

 さっきまで人間の女だったモノが、黒くヌラヌラとした物体に変わっていた。それは地面に溢れたタールのようにドロリと広がり、ドクドクと脈打っている。


「魔人よ!」


 エミーリアが叫ぶと、騎士達が一斉に剣を抜き黒い物体を取り囲む。


「坊ちゃん!」

「恭司!」


 パレードの後ろにいた緒方と鮫島が騒ぎを聞きつけ、若衆達とやってきた。


「どうやら厄介事らしい。人間の女に化けた魔人だとよ」


 そう説明すると二人は険しい顔になり、懐から拳銃を取り出した。若衆達も同じようにそれに続く。


「もう親分はやらせねぇ」


 鮫島がギョロ目を充血させて黒い物体を睨む。ボコボコ沸き立ち、それは大きく吹き上がった。そして人の形になる。


「愚カナ人間ドモヨ! ココデ勇者ヲ亡キモノニ──」


 ──撃て! という鮫島の合図に乾いた音が幾つも連なる。


 タール魔人は体を穴だらけにしてするが、ダメージは無さそうだ。


「異世界ノ銃器ナド効カヌワ!!」


「キョウジさん! 魔人には聖なる魔力を持った攻撃が有効です! 聖剣を!!」


 結局、オヤジがやるしかないってことか!?


「オヤジ、その黒いヤツを斬れ! 魔力を込めるんだ!!」

「ノー! ノー!」


 オヤジは首を振る。


「フハハハハッ! 当代ノ勇者ハナカナカ見込ミガアルナ。コチラノ世界ニ連レテコラレタショックデ狂ッテシマッタカ? 苦シマヌヨウニ一撃デ仕留メテヤロウ」


 タール魔人の右腕が槍のように鋭くなる。そして、空気を巻き込むように激しく回転を始めた。凶悪なドリル……。


「怯むな! 撃て!!」


 鮫島の号令に若衆達が一斉射撃を浴びせるが、ただ穴が開くだけで足止めにすらならない。


 騎士達はエミーリアを守る為に馬車を囲んでいる。まぁ、そうだろう。王女が大事に違いない。緒方や鮫島が必死にオヤジを庇おうとしているのと同じだ。


「ドケッ!」


 魔人の左手が鞭のようにしなり、オヤジの周りにいた若衆を払い除ける。


 オヤジと魔人が対峙した。


「オールオッケー!」

「死ネ! 異世界ノ勇者ヨ!!」


 ズドンと地面を揺らす踏み込み。


「「親分!!」」


 緒方と鮫島の悲痛な声。


「オヤジィィ!!」


 黒い槍がオヤジの胴体を貫いていた。


「バスロマンンン!!」


 えっ……!? 聖なる魔力に覆われ、青白く輝く聖剣が勢いよく振り下ろされる。オヤジ……動けるのか……!? そして──


「ギャアアアアア嗚呼……!!」


 まさに断末魔の叫び声。タール魔人の体は聖剣の軌道通りに消し飛んでいた。


 聖剣は二度三度と振り下ろされ、黒いタールは地面に小さなシミを残すのみとなった。


 ──静寂。


「……勇者リュージが、魔人を討ち取りました……!!」


 エミーリアの勝名乗りが爆発的な歓声を呼び込んだ。先程の何倍もの花が広場に投げ込まれる。


 オヤジは何を思ったのか、それを悉く聖剣で斬り落としているが、まあいい。とりあえず元気みたいだ。


「キョウジさん、ありがとうございます」


 いつの間にか馬車から降りていたエミーリアが、俺の横に立っていた。


「礼はオヤジに言ってくれ」

「ちょっと今は危なくて近寄れないので……」


 確かに。聖剣のシミになりかねない。


「さっきの魔人。あれは魔王の手下なのか?」

「そうです。暴虐のバトラと呼ばれていた、魔王軍幹部の一人です」


 幹部が直接襲ってきたのか……? 普通は下っ端が鉄砲玉として襲撃をする筈だが……。


「もしかして、ウチのオヤジ、強い?」

「……ええ。一撃で魔人を吹き飛ばす勇者なんて聞いたことありません……!」

「あれ、期待しちゃってる?」

「きっと魔王も倒せますよ! キョウジさん、お願いします!」


 キラキラとした瞳が俺を見上げる。あれ、可愛いぞ。しかも胸元の空いたドレスから豊満な双丘が俺を誘っているぞ……!? これもう、セックス始まってないか……!?


「今、エミーリアのことが好きになった。付き合ってくれ。そしたら考える」

「はい……!?」

「エミーリアが俺の彼女になって、一発やらせてくれたら、魔王討伐を検討する」

「ちょ……な、何を言い出すんですか……!?」


 護衛の騎士達がざわめき、さっと俺とエミーリアの間に入った。


「俺はセックスの邪魔をされ、怒り心頭の状態でこの世界に転移させられたんだ。可哀想だと思わないか!?」


「坊ちゃんの色馬鹿が始まった!」

「恭司、相手は王女だぞ!」


 緒方と鮫島が俺を止めようとするが、そうはいかない。


「五月蝿え! ボンクラども! 俺はエミーリアに聞いているんだ! エミーリア、俺と付き合って平和を手に入れるか、処女を守って魔王に滅ぼされるか。選べ!!」


 エミーリアは周囲を見渡す。


 騎士達が、民衆達が、どのような決断を下すのか息を呑んでいる。


 ヤクザ共は、ニヤニヤと下卑た表情だ。


「わかりました……! 私はキョウジさんと付き合います!」


 ォォォオオオオオオオオー!!


 聴衆が騒ぐ。


「よし! じゃぁ、今晩さっそく──」

「ただし! セックスは魔王を倒してからです!」

「何故だ……!?」

「WHY……!?」


 オヤジが加わってきた。とてもうざい。


「だってキョウジさん、一回セックスしたらすぐ私に飽きたとか言いそうなんですもの」


「バレてますよ〜坊ちゃん」と緒方達が囃し立てる。


 ふん。いいだろう。


「分かった! 俺はエミーリアとのセックスの為にオヤジを操り、魔王を倒してみせる!! 皆んな、応援してくれ!!」


 ォォォオオオオオオオオー!!


 何故だか盛り上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ