張飛は魔術師になりました 3
張飛はロリコンってイメージがあるのはきっと某ゲームの責任だと思います。
とことんついてねぇ………そう思う。
単純な買い物なはずだったのだが、なぜこうなる?
魔術協会公認の試合会場。ドーム状に広がるこの大きな建物は観客席が設けられており、本来は魔術を使って行われるスポーツや魔術を使った試合などで使われる会場なので、俺が今から行う魔術の試合には丁度いいのだが、『A級魔術師』が試合するとなると必然と会場は埋まってしまうわけだ。
相手のアマリーとやらは動きやすい(本人曰くだが)メイド服に着替えており、いかにもお屋敷で使えているような感じの人間だ。
先ほどからスカートが揺れる度に周囲の観客(男性)からの脚光がすごい。
まあ、男としては分からんでもないが、スカート丈はそんなに短くないくせにあそこまで捲れるのはここの空調が強いのか?俺にはそんなに感じないが。
「試合形式は一対一の対人戦のルールにのっとる事でいいな?」
一対一の対人戦。魔導協会公認のルールなら魔導協会の魔術師になる為の試験で嫌と言うほど勉強したものだ。
武器の使用アリ。ただし、相手を必要以上に傷つけないこと。要するに殺害するようなレベルの攻撃を禁止。
魔術の攻撃もしくは武器による攻撃を一定数重ねる度にポイントを加算し、このポイントが指定した数まで手に入れば勝利とする。
基本は防御用のシールドが周囲に展開させ、このシールドを破壊しての攻撃は禁止、例えばシールドを無力化やシールドを貫通させるなどの攻撃。
異常が守られる場合いかなる方法をとっても良いとする。
「いいぜ。あんたがそれでいいならな。負けても後悔すんなよなぁ。それと勝敗が決着したときの条件はあれでいいんだよな?」
「ええ。私が勝てばお嬢様は諦め、私が負ければお嬢様は貴様のアパートで暮らす!」
驚くぐらいにお嬢さんの決定権が無いような気がするが、お嬢さんがそれでいいと言っている以上は文句言わねぇよ。
「勝ってくださいね!張飛様!」
俺はあえて武器を持たねぇ。俺には武器を装備する必要はねぇからな。
上のモニターにカウントダウンが始まり、10から始まり少しづつカウントが続いていく。
アマリーはスカートの中からナイフと鉄線を取り出す。
魔術戦なのだから魔術を使用するのだろうが……正直負ける気がしないのは俺が思い上がっているからなのだろうか。
0と同時に彼女は鉄線を素早く周囲へと散開していく、俺の身動きを封じるように展開する鉄線は俺のシールドに巻き付き少しずつ締め上げていく。
だからだろう。少しづつだがダメージ判定が付き始めようとする。シールドがダメージ判定をするのに秒読みになろうとしている。
「これ……お前の魔術だな?物質操作系か?」
「フン……A級魔術師の名は伊達ではないらしいな。そう、これは私の魔術。最も重すぎる物や動物のように身動きをするようなのは無理だが、このくらいの鉄線なら無限に操作できるのだ」
「………チンケな能力だな」
俺のチンケな能力という言葉にどうやら頭に来たらしいな。
「ふん。強がって!今の貴様に何が出来るというのだ?」
「これが出来るが?」
俺は糸を簡単に切断し身動きが自由になる。アマリーは驚きと共に後ろに少しだけ引き下がる。
彼女は口を開き何かを言おうと言葉を探している風だ。
「どうやって?だろ。別に切っただけだ。こいつでな」
なんて言いながら俺は矛を取り出す。身の丈ほどの長さの矛、刃は蛇を象っている。あいつからすればいつの間にか装備していたのだろうが。
「隠していたのか!?そんな大きな矛を!?それが貴様の魔術か?」
「隠してねぇよ。作ったんだよ………こうやって」
俺は左手に全く同じ矛を作り出す。唖然とするアマリーとお嬢さん、周囲の観客の中にも同じようなのが数人ほど混ざっている。俺からすれば別段難しい事をしたわけじゃない。
「俺の魔術はたった二つ。俺の脳内に使われている魔術容量はこの二つの所為で圧迫されている。『創造』と『拒絶』の二つ。物質の創造と事象の拒絶が俺の能力だ。最も俺か俺が作った物質が接触しないと拒絶は発動できないがな。だからこのルール。俺にとっては不利なんだよ。シールドは俺が作っている物じゃないしな」
魔術容量。
人間が使える魔術の種類にはその難易度で分かれる。その難易度で一人の人間が使える容量が決まるわけだ。俺の『創造』と『拒絶』難易度マックス。本来ならどちらかしか使用できないわけだが、どうゆうわけか俺はその両方を使用することが出来るほど両量が多いらしい。
「ふ……ふざけるな!そんなデタラメ信じられると思うか!?」
「信じるも何も………真実なのだから仕方ねぇだろ。それとも夢ってことにして無視するか?それでもいいけどよぉ………お前ぇ…勝てんのか?」
「どういう意味だ!?」
「……お前がナイフを操作しないのは出来ないからだろ?それが出来るならそもそも鉄線で締め上げる何てめんどくさい事しなくて済むわけだしな。お前の魔術はその程度っていう話だろ?お前は数の制限を外した代わり、重量の制限が強いわけだ。本来ならバランスを取ろうとするところを、お前はそれをしない。それはお前のご主人様が戦うメイドを求めていないからだ。その力も恐らく掃除用とかそんな理由だろ?」
当てられたらしい。
黙っている。
「…………だったら何だ!?ナイフの腕前なら貴様にだって負けやしない!」
俺は地面を蹴ると同時に彼女との間の距離を素早く埋める。この距離ならもう鉄線による操作攻撃なんて無意味だ。
彼女もナイフを使って反撃を顧みるが、ナイフと矛ではリーチに大きな差があり、この距離では俺は負ける気がしない。
しかし、ギリギリまで引きつけ、シールドへの攻撃を仕掛けようとする彼女に対し俺は矛でナイフを吹き飛ばした。
俺はそのまま矛先を相手のしるーどに叩きつける。
シールドにかかるカウンターが一瞬で5も減る。
「もう………いいだろ?お前と俺じゃ戦いにもならねぇよ。お前は実戦を知らねぇんだ。これが実践を知っている者と知らない者との差だ」
彼女は膝をつき、跪いた。
勝負あり。
上のモニターに俺の勝利を伝える表示がなされ、振り返ると俺の出入り口にお嬢さんと……………フィリアが立っていった。本当に………何故?
「えっと………先ほどここに来られて張飛様の試合を不機嫌そうに見ていらしたんですが………?」
そっか……見ていたのか。
俺は素早く、かつ正確に膝をつき、両手を床に重ねて置きその上におでこを当てる。
所謂……土下座である。
「すいませんでした。問題を起こしました。だから………そんな不機嫌そうな面をしないでください。フィリア様」
「………おじさんの……馬鹿」
俺の心に999のダメージが。
フィリアは俺の頭にチョップを決めてくる。チョップするたびに心にダメージが。
チョップは不機嫌だぞという合図である。
「馬鹿……馬鹿………試合はしないって。喧嘩しないって約束した」
「本当に申し訳ありません」
俺は言い訳など無い。
すると隣で立っていたお嬢さんがようやく事情のいくつかを知ったらしくフォローの言葉をフィリアに告げる。
「申し訳ありません。私をアパートに入れてくれる交渉の為にこのような事に……」
チョップの攻撃速度が上がったぞ?
なんだ?何がフィリアを不機嫌にさせたんだ?
「浮気?」
「そんな、本妻が愛人を見たみたいな事を………いえ、そのようなことは一切しておりません」
プライドも恥も全てを捨て去りフィリアへのご機嫌取りへと急ぐ。
そしてお嬢さんの方は浮気と言う言葉や愛人という言葉を聞きながら焦り役に立ちそうにない。
たく………とことんツイてねぇ。
ギャグを書いていると結構楽しかったりするんですよね。まあ少しづつシリアス要素が多くなっていきます。でも当分はギャグ要素の多い話が続くと思います。では!明日!