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さて、聞きたいことは一通り聞いた。実はというと一つ提案してみたいことがある。それを呑んでくれないと、この後の敵の討伐のやる気に大きく影響がある事だ。
「アトリス、一つ提案なんだが、モフィートを倒した暁にはこの魔法を扱える力、私に譲渡するって話はどうだろう?無償で何かするっていうのは私の生き様に反してね。譲渡してくれるって話なら率先して協力してやる」
「え?そうですね…。譲渡できるかどうかわかりませんが、魔獣との闘いの際は命の危険が伴いますから…。ふむ、それぐらいの見返りがあってもいいでしょう」
私の提案に一瞬は戸惑いはしたが、アトリスはすぐ提案を呑んでくれた。なにこの子、私の好感度うなぎ上りなんだけど。そのアトリスと私の応対を聞いていた汚物はびっくりした声を上げた。
「しゅー!?そしたら、僕は戦いが終わったらご主人様と離れ離れになるのでしゅか!??」
アトリスは汚物がシュシュ喚ていている方に顔向け微笑み話す。
「そこはなんとかしますよ。ウル」
「しゅ…そうでしゅか…」
アトリスのその微笑みを見て、それ以上何も言わなくなる汚物。その光景を見ていた私は、知り合いに天使と呼ばれる人が一人いたことを思い出す。そいつと比べるとアトリスは大天使クラスだなと、私はどうでもいい事を考えていた。
話がまとまり、アトリスから「では、その方でお願いしますね」と頭を下げてきた。私は顔を上げ笑って言う。
「うしっ!なら協定成立だ!よろしく頼むぜ。アトリス」
そういって、私は手を出し、アトリスと握手を交わした。
握手を交わした後、ふと思った事を聞いた。
「そういえば、モフィートの潜伏場所とかわかるのか?」
私の問い替えにアトリスは首を振り答える。
「いいえ、モフィートの魔力の地上では反応が見られず、おそらくモフィートも亜空間にいるのだと考えられます。現段階では所在地はわかりません」
「なるほどな…」
分かってはいたが、そう簡単にはいかねぇか…。変身状態で感知したとしても時間が持つかだな…。その時に場所が割れてもすぐ移動されたら元も子もねぇ。私はどうやって敵を見つけるか考えていると、アトリスから声をかけられた。
「話を切るようで申し訳ないのですが、高責綾乃さん。こちらのお願いをもう一つ、聞いてもらえないでしょうか?」
「あん?内容によるが、とりあえず聞く」
お願いってなんだ?ゲームみたいなサブミッションじゃねぇんだから…。と、そこまで考えて、ふと頭になにか引っかかった。あれ…?ゲーム…?なんだっけ…??
その正体に行きつく前にアトリスからのお願いが私の耳に入る。
「私のウルを始めとする他の使い魔〖イル〗、〖エル〗の行方を捜してもらえませんか?」
「え、めんどい」
即答。私は息を吸うように即答した。
やだよ、なんだってそんな面倒臭いサブミッションこなさなきゃいけねぇんだよ。仲間(使い魔)探しならアトリス自身でやってくれや。
私の素っ気ない態度にアトリスは肩を落とし残念そうに呟く。
「そうですか…、もし見つけ契約できれば、重複効果でさらに壮大な力を手にすることが出来ると思ったんですが」
「するするするする。んだよ!アイリス!!もう協定を結んだ仲じゃねぇか!!お安い御用だぜ!!」
即手のひら返し。略して即ひら返し。あんまり略されてないけど。
必死のマシンガントークし迫る私を見て、アトリスは一瞬キョトンとしたが、すぐ笑った。
「はい、それではお願いします。高責 綾乃さん」
こうして、私は魔獣の支配者モフィート討伐に追加で、仲間(使い魔)探しもする事になるのであった。