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アトリスはホログラムを使い一人の男の姿を現す。
「この男が魔獣を送った張本人【モフィート】です。私たちの星の王位を継ぐものでしたが、裏で非道な行いをしていた事が判明後、地位を剥奪され捕縛れようとした際に。逃亡を行いました」
ホログラムでモフィートとが、裏で殺人やら怪しげな研究している映像が流される。「ほぉ」と私は声を上げアトリスに問いを投げかける。
「その逃亡した先がこの星ってわけかい?だとすると、そいつは捕まりたくないから魔獣を放ち防衛しているってことか?」
アトリスは首を振り答えた。
「いいえ、私も当初はそう思いましたが、モフィートは防衛の目的で魔獣を放ったわけではないのです」
「んだよ。じゃあどういう意図でやってるんだよ。」
アトリスはホログラムを地球の映像に変えた。
「モフィートは自分を追い詰めた私たち星の復讐の為、この星〖地球〗のエネルギーを吸い取り絶対的な力を得ようとしているのです」
そこには色んな数値で表示され、地球のエネルギー値と思われる数値が魔獣が放たれる数に比例して下がっていくのがわかる。
しかし、追っ手を恐れて、他から戦力を補おうとは…。私は思っていることは口にした。
「三下の思考だな」
「貴方は自分の星が危機に遭っているというのに驚かないのですね?」
アトリスはキョトンとした顔で言ってきた。やれやれと私は胸を張って答える。
「あん?私はかつて破壊神と呼ばれた魔王だぞ。そんな姑息な手を使う奴ら片っ端から捻り潰して来たんだ。驚く理由になんかならない」
その言葉を聞くとアトリスは一瞬呆けた顔になったが、すぐクスッと笑った。
「ふふ、頼もしい限りですね」
なるほど、これで敵の狙いはわかった。それで防衛策としてアトリスが送り込まれたのか。だが腑に落ちないところが一つある。
「しかし、防衛策で送り込まれたのは、アンタ一人だけなのか?アイリス?」
「それは…その…」
私の問いに声を詰まらせる。アトリスは顔を伏せて申し訳なさそうに説明する。
「モフィートは、私たちの星からこの星《地球》に干渉出来ないように結界を張ったのです。逃亡後すぐに後を追っていた私だけが、結界が張られる前になんとか難を逃れることが出来たのですか…」
そう言い、ホログラムに映し出された地球の周りに、半透明の大きな円が囲まれた。これがアトリスの言う結界なのだろう。
「はっ、とんだ用意周到なチキン野郎だな。ってことはアイリス以外に来れる奴らはいないって事か」
私が鼻で笑って答えると、アトリスは消えるような声で返す。
「はい、仰る通りです…」
その様子を見て私は笑い声を上げ、口角を上げ笑いながら言った。
「なに、悲観することはねぇ。なんたって魔王の私が来たんだ。すぐモフィートとやらを倒して星に帰れる様にしてやるよ」
「は、はい!ありがとうございます」
アトリスが嬉しそうに答える。しかし、こう笑った顔を見ると一瞬だがドキッと来るもんがあるな…。