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何コレ?何コレ?何コレ?何コレ????
突然衣服が弾けて裸体になった私は顔を紅潮させパニックになっていた。
「なんで!?どういうこと!??」
さっきまで体の隅々まで行き渡っていた魔力が何も感じなくなっていた。
まさかさっき倒した魔獣とは違う別の魔獣がいて、そいつから攻撃されてたのか!!?いや、しかしそんな気配はないし…!?私はグルグルと思考が混濁していく。
「おい!汚物!?どういうことだ!!?答えろ!!」
他力本願。わからないものをいつまで考える私ではない。こういうのはこの力を宿している奴に聞くに限る。私は汚物に向かって叫んだ。
「しゅ…僕もわからないでしゅ…突然変身がキャンセルされるなんて…」
汚物はプルプル震えながら答えた。
使えない。わかってはいたが使えない。くぅ~しかし望みを賭けたかったんだよ…!と、思ったら汚物が「でも」と言ってきた。
「契約は破棄になってないでしゅ…。だからこそわからないんでしゅ…」
「あ…?だったらなんで変身が解ける?てか解けるじゃなくて衣服がはじけ飛んでだぞ!!」
「そんなこと言われても!僕にもわかんないでしゅよ!!」
町中の路地裏で全裸になりながら騒ぐ私と汚物。
と、見えない路地先からざわざわと人の声が聞こえてきた。
「なんかこの辺で凄い音しなかった??」
「この辺りだったよな…??」
私はひゅっと息を飲み体が凍り付く。人だ…。人が来た…。やばいやばい…!かつて破壊神と恐れられた魔王が痴態を見せることになってしまう…!!
「おいッ!!!?汚物貴様何とかしろ!!?お前も見つかったらヤバいだろうか!!」
「しゅ…!?そんなこと急に言われたって!!?」
小声で騒ぎギャアギャア喚いていたら、
「おい!見ろよ!!あそこの壁!何本もの亀裂が入ってる!」
「うわっ!!すげぇ!!写真撮ってSMSにあげようぜ!!」
そんな声が聞こえた。ギッギギギギと首が先ほど魔獣を殴り飛ばした壁に首が向く。
(あの壁のことだよね…)
バタバタと音を立てて足跡が近づいてくるのが聞こえてくる。やばいやばいやばい。あれこれ詰んだんじゃね?これ魔王とかじゃなく痴女扱いにされるんじゃ…??ダラダラと汗が出て思考が完全にフリーズする瞬間だった。
ブォン!!と私の目の前に白い扉が出現した。
「は…?」
あまりにも唐突すぎて私は呆け声が漏れる。
「しゅ!?この扉は!!」
対して汚物はこの扉が何か分かっているようだった。
「説明する時間がないでしゅ!早く入るでしゅよ!!」
どうやら汚物の物言いでは危険なものではないらしい。というより他に手段を選ぶ暇はない。私は思いっきり扉を開けた。
その瞬間景色が一変した。いや、一変したというよりも何もない。
白い白い何もない空間に私はいた。いつの間にか開けた扉も無くなっている。
「なんだ…?ここは…??」
私は周囲を見渡し独り言のように呟いた。すると、すぐ返答があった。
「そうですね。ここは私が作った亜空間みたいなものです」
その声は汚物からではなく前方から聞こえた。
顔をそちらに向けると、いつの間にか白い長い髪の少女が前方に突っ立っていた。
白い少女は笑いながら言う。
「初めまして、魔王様」