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私の水が無くなったら、それはきっと死ぬときだろう
1.水の変態
私は庭に咲いた花を見ると、母のことを思い出す。母が自分で植えたパンジーだからだと思う。紫と黄色と白のパンジーは風に揺れて可愛く見えた。だけど、小学生の真っ盛りな私は土の上を歩く中くらいのアリの方が面白くて指を伸ばす。捕まえたアリは手足と顔全身をくねらせバタつかせていた。私は、ツツジの花の下の蜘蛛の巣に落とす。蜘蛛の足の速さにアリはダメみたいだ。
お腹いっぱいにしてあげたかったんだと思う。待ってばかりの蜘蛛の巣にはそれほど期待できないだろうから、潜在的な優しさでしてあげたんだと、今は思う。そんな子供時代があってこその今の私だと思う。ただ思わなかっただろう。自分の目の前に突如現れたご馳走はプレゼントされたものだということを。偶然じゃ無い。誰かが自分に向けての愛情なのだと。
私はまだ知らない。