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貯水地を目指して
「お前さん、食べ物あるかい?」一人の老婆が聞いて来た。
「はい。あります」と龍治が答えると「それは良かった。一番大事な物は食べ物だからね」と老婆は言い、去って行った。
パークの中を歩いてみると皆、ゴミの様な物を必死で食べていた。
「これが現実だ」と龍治は思った。
持参した食糧はすぐ無くなるだろう。
「まず、食いップチを探さなければ」と思いながら龍治はパークを出た。
20世紀、繁栄した香港の街並みは廃墟と化していた。
取り敢えず、龍治は地図を見ながら貯水地を目指す事にした。
食べ物が無くても水さえあれは生きられる、と思ったからだ。