表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の巫女  作者: 椎茸男
9/12

魔を使いし者とレディと、魔の者 

「大丈夫か!!そのレディから離れろ!!」


 自分の出せる最高速度で走りながら、考える。

 私はまず目の前の状況が、不思議でしょうがなかった。

 なぜ、か弱いレディが、こんな夜中の森に1人でいるのであろうか。

 前進真っ白なその姿は、森の中ではよく目立ち、襲ってくれといわんばかりではないか。

 まだ、年齢も若く見える。ひとりでこの森にきたとは考えづらい


「これは、、、まさか」


 そう、見捨てられたのだ。

 このくらいの年のレディは、残念ながら奴隷として商品になることが多い。

 両親が無くなり、身寄りもなく、奴隷に身を落としたのだろう。

 そして、隠れて夜中に身柄を運ばれているとき、魔獣の襲撃をうけ、

 そして彼女は、囮にされたのだ。


「なんと、、なんとっ!!紳士的ではない事を!!」


 胸の一部が熱くなっていく。これは怒りであることは理解できた。

 怒りにまかせたままの、一撃を通りすがりのオオカミにぶつけてしまう。

 いつの間にか腰から抜いていた片手剣は、簡単に獣の頭をつぶす。

 

 少女のもとまでたどり着くと、後悔の念がおしよせる。

 またやってしまった。

 感情に流され、力をふるうことは、紳士的ではない。

 許せないことがあると、わたしはいつもこうだ。

 しかし、今は反省の時間ではない。

 反省なぞ、あとからゆっくりと宿屋で行えばいい。

 まずやるべきであることは、ほかにある。


「これはこれは、レディがこんな時間に出歩くのは危険です。ぜひこのガスバティーンを、あなた様のおともに。」


 そう、まずやるべきことは、レディの安全の確保である。

 心細く、精神もまいっていたのであろう。

 その少女は表情がこわばってしまっている。

 なぜもっと早く気付くことができなかったのか。

 またも自らを責めたてようとすると、少女が口を開く。


「いえ、結構です。」


 ・・なんということだ。ずっとそのような扱いをうけてきたのであろう。

 感情すらも、醜い大人にはぎとられてしまっているようだ。

 私はこの少女を見捨てることなんて、できるわけがない。

 この少女に、罪はないのだから。


「大丈夫です。私は、味方です。その証拠をご覧いただきましょう。」


 そうである。まずは、周りを囲む少女の脅威を取り払わないと、話も落ち着いてできるはずかないではないか。

 そうと決まれば、背中から盾を取出し、左手にしっかりと持つ。


 目の前のオオカミにむけて、体を半身にし、盾を前面に持ってくる。

 相手は、オオカミ2体に魔獣が1体。

 私がジリジリと前に出ていくと、辛抱できずにオオカミの1匹が飛びだし、

 それに続けて、もう1匹のオオカミも追走する。


 最初にとびかかってきたオオカミは、私の足元を狙っているようだ。

 大きな口を開き、滑り込むように低い体勢でまっすぐに足へむかってくる。


 1体に集中することはしない。

 複数体を相手にするときは、全体を意識の中に収める必要がある。

 先頭のオオカミを盾で上からつぶし、右手に力を入れる。


 その瞬間に飛び掛かってくる後方のオオカミを、片手剣で切り下した。

 半身に構え、盾を前に置くことで、右手の剣はオオカミに全く見えていなかったようだ。

 剣を振り下ろす速度と、オオカミ自身の飛び掛かる力が、簡単に戦闘をおわらせることになる。

 左手の盾の下で動けなくなっていた、オオカミにもとどめを刺してから、ガスバティーンは気付く。


 後方には、あの、か弱きレディがいたのである。

 飛び掛かってきた獣をすれ違いざまに切ったということは、少女に血などがかかってしまったのではないかと。

 それはいけない。

 紳士たる者、レディの服を汚すようなことはあってはならない。


 急いで振り返ったガスバティーンは、一瞬、少女を見つけることができなかった。

 思っていたところとは、違う場所に立っていたのだ。

 いつのまにか動いたのか。いや、自分の認識違いであったのだろう。

 そんなことよりも、少女が今の戦闘に巻き込まれていなかったことに安堵する。


「怪我などはしていないか?」


 近寄りながら、しかし、意識は魔獣からそらさずに、わたしは話しかける。


「はい。まったく。」


 そう答える彼女は、やはり表情を変えない。

 胸の奥にぎりぎりとした痛みを感じる。

 この少女がどのような扱いをうけてきたのか。

 さぞ、怖かったであろうに。

 しかし、ここで不安そうな顔を見せてはならない。

 いつだって、紳士たる者、笑顔を忘れてはいけないのだから。


「それは安心しました。それではしばらく、お待ちください。あの魔獣が律儀に待ってくれています故。」


 紳士たる者、レディに不安を微塵にも感じさせてはならないのだ。

 余裕の笑みを浮かべ、意識を魔獣へと移すのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ