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白の巫女  作者: 椎茸男
7/12

白の巫女と魔の者と、魔を使いし者

「魔物だな。あまり見ないが、珍しいというほどのものではない。」


 アイルは焦ることもなく、サエに説明を続ける。

 

「魔力の影響を多く受けた野生の獣の中に、時折、魔の力を持つ者がいる。これはその典型的だ。」


 この世には、魔力が存在する。

 それは空気と同様に空間にあるものであり、人はその力を使い魔法をしようする。

 同じように、人間以外にも魔力を使うものがいる。それが魔物だ。

 魔力を使用し、人に害をなすものは、総じて魔物と呼ばれていた。

 それが獣に近い姿かたちであれば、魔獣。

 人の形に近ければ魔人と、呼び分けはされているが。


 重要なことは、なによりも魔物は強いということ。

 運動能力を比べると、普通の人間は、普通の獣およばない。

 しかし、人間は知識という武器で対応することが、可能であった。

 経験から、武器を作り、戦い方を学び、対応する。それこそが人間の強みである。


 しかし、魔力を使用する獣が相手である場合。

 動く速さが魔力で補助され、ふるう爪の破壊力が魔力で補助されているのだ。

 その能力向上率は、4倍から5倍になる。

 そして何よりも、魔物は頭を使う。

 考え、対応する能力が、獣と魔獣では雲泥の差であるのだ。


 夜道で、少女が何匹ものオオカミを従えた、魔獣と遭遇する。

 これは、この世界では、もっとも絶望的な現象のひとつだ。


「おそらくこの辺りのボスなんだろう。何回もオオカミたちから逃げたが、それはこいつの差し金だったのかもしれないな。」


 そんな、絶望的な状況を前に、アイルは淡々と話を続ける。


「逃げれるのですか?」


 負けじと、サエも感情をださす、アイルに尋ねる。


「逃げれないわけがない。これでも俺は水龍よ?ただ問題がある。」


「問題ですか?」


「そうだ。攻撃手段がないんだよ。こいつらは鼻がいい。魔獣ともなると、普通の獣よりはそうとう鼻がきくことだろう。」


「それのなにが?」


「いや、もううんざりしてるんだ。何度も何度も僕らの前に出てきてさ。ただ、逃げるだけでは、きっと追ってくるだろうし。その状態で、どこかの村に行くわけにもいかないからね」


 魔獣は、足に力をため、解き放つ。

 サエに向かい大きく跳び出し、自慢の前足をふるう。

 普通のオオカミの何倍もの速さで、何倍にも鋭い爪が的確にサエの体に迫ってきた。


 それを何度も何度も軽くかわしながら、表情を変えずにサエが言う。


「申し訳ありません。私が何かしらの攻撃手段を極めていれば、アイル様を悩ませることもなかったのに。」


「いや、そこまでは言ってないし、武器極めちゃった人を生贄には、あんまりしないんじゃないかな?」


 場にそぐわない、ゆったりとした会話が流れる。

 正直なところ、この魔獣相手では、いつまでも攻撃をかわすことは可能であった。

 万が一、傷をおったとしても、すぐに治癒する。

 すなわち、余裕はありあまるほどあるのだ。


 アイルがどうやって、魔獣を仕留めるか考えているとき、

 二人の後方から、火の玉と


「大丈夫か!!!そのレディから離れろ!!」


 なんとも暑苦しい声が飛んできたのであった。


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