白の巫女と魔の者と、魔を使いし者
「魔物だな。あまり見ないが、珍しいというほどのものではない。」
アイルは焦ることもなく、サエに説明を続ける。
「魔力の影響を多く受けた野生の獣の中に、時折、魔の力を持つ者がいる。これはその典型的だ。」
この世には、魔力が存在する。
それは空気と同様に空間にあるものであり、人はその力を使い魔法をしようする。
同じように、人間以外にも魔力を使うものがいる。それが魔物だ。
魔力を使用し、人に害をなすものは、総じて魔物と呼ばれていた。
それが獣に近い姿かたちであれば、魔獣。
人の形に近ければ魔人と、呼び分けはされているが。
重要なことは、なによりも魔物は強いということ。
運動能力を比べると、普通の人間は、普通の獣およばない。
しかし、人間は知識という武器で対応することが、可能であった。
経験から、武器を作り、戦い方を学び、対応する。それこそが人間の強みである。
しかし、魔力を使用する獣が相手である場合。
動く速さが魔力で補助され、ふるう爪の破壊力が魔力で補助されているのだ。
その能力向上率は、4倍から5倍になる。
そして何よりも、魔物は頭を使う。
考え、対応する能力が、獣と魔獣では雲泥の差であるのだ。
夜道で、少女が何匹ものオオカミを従えた、魔獣と遭遇する。
これは、この世界では、もっとも絶望的な現象のひとつだ。
「おそらくこの辺りのボスなんだろう。何回もオオカミたちから逃げたが、それはこいつの差し金だったのかもしれないな。」
そんな、絶望的な状況を前に、アイルは淡々と話を続ける。
「逃げれるのですか?」
負けじと、サエも感情をださす、アイルに尋ねる。
「逃げれないわけがない。これでも俺は水龍よ?ただ問題がある。」
「問題ですか?」
「そうだ。攻撃手段がないんだよ。こいつらは鼻がいい。魔獣ともなると、普通の獣よりはそうとう鼻がきくことだろう。」
「それのなにが?」
「いや、もううんざりしてるんだ。何度も何度も僕らの前に出てきてさ。ただ、逃げるだけでは、きっと追ってくるだろうし。その状態で、どこかの村に行くわけにもいかないからね」
魔獣は、足に力をため、解き放つ。
サエに向かい大きく跳び出し、自慢の前足をふるう。
普通のオオカミの何倍もの速さで、何倍にも鋭い爪が的確にサエの体に迫ってきた。
それを何度も何度も軽くかわしながら、表情を変えずにサエが言う。
「申し訳ありません。私が何かしらの攻撃手段を極めていれば、アイル様を悩ませることもなかったのに。」
「いや、そこまでは言ってないし、武器極めちゃった人を生贄には、あんまりしないんじゃないかな?」
場にそぐわない、ゆったりとした会話が流れる。
正直なところ、この魔獣相手では、いつまでも攻撃をかわすことは可能であった。
万が一、傷をおったとしても、すぐに治癒する。
すなわち、余裕はありあまるほどあるのだ。
アイルがどうやって、魔獣を仕留めるか考えているとき、
二人の後方から、火の玉と
「大丈夫か!!!そのレディから離れろ!!」
なんとも暑苦しい声が飛んできたのであった。




