白の巫女と贄
大雨である。
ここ何日続いているか分からない大雨の中、村を北に抜け、生い茂った森をひとつの御輿がゆく。
村の男4人で運ぶその輿はゆっくりと、しかし確実に目的地へ向かい歩を進める。
絶対に顔を出してはならぬという村長からの言いつけを厳守し、中の少女ーサエーはひたすらにその時を待っていた。
ふと気がついた時に、自らを運んでいた箱の動きは止まっており、サエは腰をあげる。
その表情には、色がなく、真白な腰まではある長い髪と、これもまた白1色に染まった衣服とがあいまって人形のようにみえた。
サエが輿から出ると、雨でぬかるんだ地面に、人と獣の無数の足跡がみえる。
裸足のまま地面に立ち、顔を上げると、ポッカリと口を開けている洞窟が目の前にあった。
どこまでも続いていそうな闇を見つめるサエの顔は、やはり変わらず、何のためらいもなくその歩を黒の濃い方へ進めていく。
闇の中の光に見えたようなその少女は、次第に消えていくように確認出来なくなった。
雨は未だ降り続いている。
道は暗く、しかし迷うことなく、サエは先へ先へと進んでいく。
やがて、広さのある空洞に辿り着いた。天井の高さは少女3人分くらいであろうか。
地面は未だに緩んでおり、洞窟内の湿度が伺えた。
相変わらず眉一つ動きのないサエはその場に膝をつく。
頭を垂れ、地面に向かい懇願するように、言葉を発する。
「水神様。我が村は、大雨の被害で疲れきっております。村の祈祷師様のお言葉により、私のこの身を贄とし、何卒怒りをお治めください。」
その声は、静かな洞窟内に綺麗に響き渡り、そしてすぐに元の静寂をとりもどす。
時間としてどのくらい経ったのかはわからない。
サエの視界に入るのは薄暗い地面であり、最後に見る景色も今と全く変わらないと考えている。
なので、頭の上方に気配を感じたのがいつからであったかは、考えることもしなかった。




