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佃煮~ 年の瀬ほろほろ佃煮茶漬け

忘年会シーズンもたけなわ、職場の同僚とも別れ、迫る元旦を前に家族と過ごすことを考えます。仕事納めの明くる日は、茨城の実家に帰って参りました。今年三月に、曾祖母が101歳で他界しましたが80代の祖父母はまだ元気で、寒い畑を耕しています。しかし祖父は、脳溢血をやり、免許は返上した身。中々好きなものは勝手に買いに行けなく。

手に入らなくなったのは、正月の昆布巻きに入れる焼き鮒。五センチほどの小さな寒鮒を焦げが少しつくほどに素焼きにしたものですが、84歳の祖父にとって幼い頃から幾日も煮た昆布に巻くにはこの腸が苦い小さな魚ではいけなくて。

近所の老舗佃煮屋に予約して、調達するのはわたしの役割です。そのついでのお土産にも、数々の佃煮を買っていくのですが、それがまた年末の慰めで。

たっぷりの生姜に山椒を利かせて似た佃煮は、わたしにとってもこの年末年始の寒さの味です。公魚(わかさぎ)や川海老、そして名も無きざっこ。硬く押し固まるまできちんと煮しめた佃煮が、忘年会シーズンで疲れた胃腸をあったかい白米とともに癒してくれます。

この寒さの中、川床で春を待つ生き物たちの力強さは、頼もしいご飯のともです。特に網にかかった雑多な小エビや魚たち、いわゆるざっこは、湯漬けに致しますとその真価を発揮しますね。粉茶の濃く煮出したのもいいですが、薄い出汁を貼ってもよく。これに割り干し沢庵や白菜菜の押し漬けをおともにしますと、ご飯がいくらでも入ります。

今年はまた、鰻の肝の佃煮を買いました。鰻の脂で煮凝っているために冷えたままでは食べにくい肝の佃煮ですが、顆粒の昆布だしを加えてこれに湯を注ぎ、酒を隠し味にした醤油をひとたらし、三つ葉など添えると即席のお吸い物になります。鰻の肝の脂がほとびて、出汁が流れて、醤油ばかりの味付けで実に、味わい深く。

素朴極まりない川魚の風味です。しかし、熱とともに触れるのは、親しみ慣れたこの泥臭さ。忘年会の豪華な食事に翻弄された口には優しく、いたわられるような味です。酒で荒れた胃を整えつつ。行く年来る年を思いながら、質素な晩餐を。お銚子を一本だけつけて、今夜も乾杯です(`ー´ゞ-☆明日はいよいよ晦日ですね☆


(2016年12月29日掲載)

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