Children's story land episode2.magician
1.怪しいマジシャン
私とユーリが二人で歩きだそうとしたときだった。
「そ·こ·の·お嬢様方♪」
男の人の、少し低い声が聞こえた。
この遊園地に私たち以外に人がいるのは、なんだか不思議だ。大の大人が、私たちみたいなことを信じるでもあるまいに。
ゆっくりと振り向くと、そこにはマジシャンのような格好をした男性...というよりも青年?が立っていた。
「だっ、誰ですかっ!!」
ユーリが怯えながら叫んだ。
「私は、...そうですねぇ、マジシャンです。一般的に言ってしまうのならば!そう、大胆かつ、美しき味気のない現実を彩るパフォーマー!けれどどこかにタネや、仕掛けがないと生きていけない孤独な、なおかつ素晴らしきクリエイターなのでございます♪」
いや、怪しいとしか取れない。どう考えても。
「怪しいじゃないですか、普通に考えてっ!」
私は、思ったことをつい口に出していた。
マジシャンって言ったって、この遊園地にいるなんてどうもおかしい、私たちの他には誰もいなかったはずだ。
じゃあどうしてここに来たのか?
考えれば考えるほど疑問は増える一方だった。
「まぁ、いいです、後々合うんですし♪その時にまたお話していただければ!あ、それでですね!お嬢様方に渡したいものがありまして♪はい、どうぞー
!」
そう言って手渡されたのは、トランプのカードだった。
「いいですか?よく覚えておいて下さいねぇ赤はおしまいですよぉっ♪それではまたっ!」
マジシャンの言っていることはほんとうによくわからない。
赤はおしまいって何なんだろうか..。
それになんだか、このトランプのカードは光っている。それも青色に。なにか、関係してるのだろうか。
「ユーリ、何だったのかな、あの人は。」
「う、うん....でもね、リリア、私なんか一発目の謎解きできちゃったかもしれない...!」
ユーリが自信満々にそう言ってくるので、私も気にならずにはいられなかった。
謎解きできちゃったかもしれない。そうユーリは言ったけれど、今のマジシャンの話の中にも、これまでの出来事にも、今の状況を謎解きできる要素なんてなかったと思う。
「それは、どういうこと..?」
「だから!!わかったんだよ!!マジシャンの言ってたことが!ほら、赤はおしまい!ってやつ!!」
あぁ、なんだそれのことか。
でも、今の段階では何に関係してるのかすらわからない。
「でも、なんと関係してるのかもわかんないよ?」
私は、思った通りに発言した。
「この、トランプのカード!光ってるでしょ?てことは、赤はおしまい、つまりこの意味は、、、、私たちのこのテーマパークでのライフのことだと思うんだ。ゲームとかでもよくあるように!!」
「ライフって、残りの命みたいな..?」
「うん、おそらくね。だから、赤はおしまい、つまり....命が絶えることを意味すると思う....。」
恐ろしい、本当に。
私たちは改めてここに来てしまった重大さを実感した。
周りを見渡す余裕もなかったので、見回してみると、ところどころにちが飛び散っているのがわかる。
ホラー小説の中の世界に入り込んだみたいな気分だ。不安心が奥底からこみ上げてきた。
「それは...、気をつけないといけないな...。でも、気をつけながらだったら心配ないよ。さぁ、鍵を探しに行こう?」
私がユーリに声をかけるとユーリは頷いて私のあとを付いてきた。
まず、どこから行けばいいだろうか...。そんなことを迷っていると、ユーリが喋り出した。
「ちょうど近いし、不思議の国のアリスから行ってみようか?」
「そうしよっか。」
私達は、不思議の国のアリスのアトラクションに向かって歩き出した。