02 落ちこぼれと第二王子
今日二度目の更新です。
王立騎士学園。ここは未来の優秀な騎士たちを育成する学園である。生徒たちはここで4年間の厳しい教育を経て、晴れて王宮をそして国を守る騎士となるのだ。
各学年7クラスあり、組み分けは実力で判断される。故に、各クラスの人数は定まっていない。
さらに言えば、ここ数十年。7クラス目の生徒はゼロである。しかし、今年は異例中の異例。1年7組の生徒数は6人であった。
その6人の中でもダントツ落ちこぼれと言われているのが、オズワルド・アークライトである。
このヴィザイア王国では見かけない、漆黒の髪と瞳を持つ青年。
彼が落ちこぼれと言われる所以は、誰でも生まれた瞬間から所持しているはずの召喚獣を持たないこと。また、一般人より魔力が弱いことにある。
それプラス、本人のいつも眠そうでヤル気の無い態度が輪をかけている。
そんな彼は、今日もヤル気無く木の幹にもたれ掛かり眠っている。
空には穏やかに流れる雲。そよ風が彼の漆黒の髪を優しく揺らす。気持ちよく眠る彼の頭上を、突然影が覆った。オズワルドは何の影か予測はついていたが、タヌキ寝入りした。
いや、予測がついたからこその寝たふりだ。関わりたくねぇからな。
「オズワルド、起きてるんだろう?」
聞き覚えのある声。
ああ、やっぱりな。関わりたくないランキングナンバー1の人物だった。
内心大きな溜息をつき、しかし目はしっかり閉じている。
「無視かい?相変わらず冷たいな」
クスクスと笑う声が聞こえたが、無視。
「ねぇ、起きてるんだろう?」
頬を引っ張られても無視。
「ねぇってば」
片目をこじ開けられても無視。
「おーい」
鼻を摘ままれても――無視…できるかっ!
「っぐ、離せっ!! 息が出来ねぇだろっっ!」
バシッと鼻を摘まむ手を叩き落とし、肩を上下させて息を吸う俺を、笑いながら眺める見知った人物に腹が立つ。
「僕を無視した報いさ」
さも当然のように言う彼は、当然のように俺の隣に腰かけた。
「おい、隣に座るな。ってか、そもそも俺に近づくんじゃねぇ」
「何で?」
「分かっててやってるとこがウゼェ」
苦虫を噛み潰した顔で暴言を吐く俺を、隣で笑うコイツは確信犯だ。常に目の前の出来事を笑って眺めている、変人だ。
勿論、変人と関わりたくわないが、俺がコイツに関わりたくない最たる理由は、コイツの身分だ。こんな変人だが、このヴィザイア王国の第二王子である。
名前はセドリック・ディクソン・ヴィザイア。
金髪碧眼の正しく王子らしい容姿の王子だ。
何で俺が第二王子何かと関わりをもっているかというと…ああ、説明長くなる。めんどい。
クソ、もうコイツの存在自体が面倒の塊だ。ほら見ろ、通り過ぎる生徒たちが変な目で見てきやがる。皆が俺と第二王子の関係を疑っている。
王子があんな落ちこぼれを相手にするわけがないとか、ただの気まぐれだとか、まあそんな感じの感情を視線に乗せて俺を睨んでくる。
おう、俺もお前らと同じ思いだ。気まぐれであって欲しいと願ってるよ。
……しかしな、これが1年も続けば、萎える。既に諦めかけてるのが現状だ。コイツ、セドリックが俺に突っ掛かって来ることに。
そもそも、コイツと会わなきゃ俺がこんな学園に入ることなんて無かった。
いや、入れなかった。
召喚獣を持たない。魔力も無いに等しい。そんな俺がどうやって学園に入学したかと問われれば、第二王子の推薦。としか答えられない。
ありえない。と言われるが、これがありえた話だからな。
何でこんなポンコツを気に入ったのか知らないが、結局役立たずでお荷物な俺はここでも居場所が無い。
そもそも、俺に居場所なんて存在しない。俺の居場所は、2年前に消えたんだ。大切な人と共に。
オズワルドはセドリックを無視して再び眠りについた。
ありがとうございました。