掟、アレクシスの思い
青ざめたヤマトをアレクシスの優しく宥めると、他にもマズイ事があると切り出した。
「ヤマト、君は空から落ちて来たと言ったな、その事についてなのだが……」
「あぁ、その事については多分君は異世界から来たんだ!って言いたいのですよね?」
「…まぁ、それもあるのだが……」
「え、まだ他にも? 」
「あぁ、君は堕天者と言われていてな、この世界に来る者には二種類いて、一つがヤマトのような堕天者、もう一つが昇地者と言われる者だ」
「昇地者? それは初耳です」
「堕天者はわかるんだな」
そう言うとアレクシスは少し呆れたような顔をして、話を続けた。
「じゃあ、わかりやすく言うとするよ。
まず、世界と言うものは、上下に階層があって分けられているんだ、君のような上から来たものを堕天。逆に、下の階層から来たものを昇地者と言う。ここまではいいか?」
「はい、だいたい」
「で、ここからが本題なのだが……昇地者と言うのは下位の世界から来ているから、この世界では弱体化てしまう、またこの世界に来る数も堕天者と比べると圧倒的に多い。 対して、ヤマトのような堕天者は何百年に一度というレベルでしか来ない。 しかし、上位の世界から来るため、この世界の住人の何倍もの力を持っていることが多いんだ」
「つまり、俺の力が権力者に利用されたりする可能性があるって事?」
「……とりあえず、話を聞いてくれ。 それで堕天者は天から来た、上位の人間と言うことでハイ・ヒューマンと呼ばれるのだが、先ほど君を見てみたらさらにその上の存在だと分かった」
「えっと……つまり、堕天した世界から、さらに堕天して今の世界?」
「つまりそう言うことだ。 そして、そんな事が分かれば私達エルフは余計に君を逃がさないだろうな」
「……ですよね……」
がっくりとうな垂れるて息を漏らす。
そして、ふと思いついたように顔を上げた。
「あ、でも、何で助けてくれるんです?」
「それは……だな」
アレクシスは頭を掻いて、視線を泳がせながら続けた。
「私は…その……恋愛をしてみたいのだ。百年ほど前に堕天者が持って来た本を読んだんだが、その内容が本当に良くてな! 学院に通う生徒とその教師の話なんだが……」
(……ロマンチストだったんだなー)
トリップして、ベットの上で悶えてるアレクシスを眺めること、数分。
我に返ったアレクシスは赤面しつつもゴホンと咳払いをすると話を続けた。
「……という訳だから、ヤマト、君は早く逃げた方が良い」
(つまり、今婿が決まってしまうと恋愛出来ないから邪魔って訳だな……)
「分かりました、でもどうやって逃げるんですか? 俺の足じゃ直ぐに捕まりますよ?」
「そこは任せてくれ、どのみち私も逃げる予定だしな。 こんな閉鎖的な所は嫌いだ」
アレクシスはウインクしながらそう言った。
ヤマトはその行動に思わずドキッとしたのだが、それは彼だけの秘密である。
「じゃあとりあえず、どうやって逃げるか話し合いたいが……仲間達に先に行けと言っているからなあ、後でヤマトの部屋に行くよ」
「分かりました。 じゃあ待ってますね」
ヤマトはそう言うと椅子から立ち上がり、出て行こうとするが、後ろから、忘れていた。と声をかけられた。
「私以外のエルフが部屋を訪ねて来ても、極力入れないようにな」
「…わかりました」
何か含みのあった物言いに、少し不安を滲ませつつも、ヤマトは部屋を後にした。
その後、通りかかった給仕のエルフに自分の部屋まで案内してもらい、なんとか、たどり着く事ができた。
というのも、エルフとすれ違う度に話しかけられて、酒でも飲んで語ろうじゃ無いかと言われる物だから、断るのに苦労したのだ。
ヤマトは部屋に着いた途端に、ベッドへと倒れこんだ、そしてポケットの中を探る。そして、ケータイが無い事を思い出して一人落胆した。




