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親友の友達、私のクラスメイト  作者: 秋羽


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8/9

第8話

「うわー、めんどくさいなー」


 宮下さんと別れ、家に着く頃にはかなり遅い時間になっていた。

 遅くなっても問題はない、けれど面倒くささは倍増する。


 ここからご飯を作るってなると寝る時間が遅くなるので、今日は妥協して冷凍食品を片付けることにする。


「この唐揚げこの前残したやつか」


 冷凍食品を見ながら賞味期限を確認する。

 白米も作り置きして冷蔵してあるからすぐできそう。

 ご飯を食べる前にお風呂入ることにした。

 あとからお風呂入るとめんどくて中々動かないからそれを防ぐため。


 長風呂する予定はないけど、お湯には浸かりたい。

 準備をして、部屋に着替えを取りに行く。


「そういえば明日の時間どうしよ」


 明日は宮下さんとこの家で遊ぶ約束をした。

 時間はまだ決めていないけど、早すぎると起きれないから15時ぐらいが希望。

 遅すぎる気もするけど、休日は睡眠優先。

 1週間の疲れを癒す目的がある。


 宮下さんに時間を送り、返事が返ってこないから待たずにお風呂に向かう。


 お風呂はめっちゃすき。ただ入るまでの心の葛藤があるからいつも体との相談で、頭を悩ませる。


「あー、やっぱお風呂しか勝たん」


 1日の疲れなんて大したことないように思える。

 立派な癒し。


「明日何して遊ぼうかな」


 宮下とはたまに遊びに行くことがあるけど、この家で遊ぶのは2回目。


 いつもは買い物したり、映画見たり、カフェ巡ったりしていた。


 家で遊ぶとなると、かなり選択肢が狭まる。


 この家にあるものといえば、本かゲーム、あとはモノポリーがある。

 ふたりでモノポリーするのも味気ないからしないと思うし、そもそも閉まってるところがタンスの奥深くだから出すのが面倒くさい。


「明日のことは明日考えればいいか」


 私はまだ宮下さんとの距離感が掴めていない。

 ただの友達。そう思えばいいのに。

 もっと仲良くなりたい。欲が出てしまう。


 自分で何をしたいのか分からない。


 宮下さんに同情しているか、それとも興味を持っているのか。


 理由はなんとなく想像できる。


 元カノ。


 女の子を好きになる。そう思ったことはなかった。


 深く考えたこともない、周りにもいなかった。

 それに対しての興味なのか。


 元カノと別れたから。それの同情なのか。


 複雑な気持ちであることは間違いない。


「恋愛対象って難しい…」


 好きになる。それがどういう意味なのかイマイチわかっていない。


 女の子だから男の子が好き。この固定概念について否定するつもりはない。


 ただ私は、好きな人を好きになればいい。


 そう思っている。


 それなりに恋バナもする、過去にはお付き合いもしたことある。


 改めて恋愛はなにかと聞かれても答えられない。


 難しいことは考えないようにしてきた。その弊害がこんなところに出るとは思いもしなかった。


 宮下さんについては何となくわかる。


「恋愛対象というより、観察対象…だよね」


 宮下さんに対しての感情。目を惹かれる理由。


 それはきっとそこら辺の人と違って、私とも違う。初めて見る感性を持っているから。


 興味深い。


 この一言で片付けれる。


 一緒にいて楽しいし、話も合う。

 友達であることはきっと間違いない。


 だけど、友達に向ける感情とは少し違う。

 ゆきやひーちゃん。佳奈と優里に向ける感情と何が違うのか。


 教えて欲しい。宮下さんについて。


「くぅあ…のぼせてしまう…」


 お風呂での考え事は好きだけど、考え込んでしまう。

 溺れてもおかしくない。溺れても気づかれないこの家では気をつけないといけない。



「あれ、なんでゆきいんの」


 お風呂から上がってそのまま部屋に行こうとしたが、喉が乾いたからリビングに寄り道をした。

 ドアを開けた瞬間ゆきがソファーに座ってた。

 流石に誰もいないと思っていたからかなり驚いた。


「ちょっと漫画返しにきた」


 家の鍵は閉めていた。ゆきは合鍵を持っているからいつでも来れる。

 しれっとうちに来ることはよくあるけど、こんな時間に来るのは珍しい。


「なんかあった?寝る前なのに」

「どうせ寝ないでしょ」

「まぁ、ちょっと作業してから寝るよ」


 ひーちゃんの仕事の手伝いをするのが毎晩の日課。

 別にひーちゃんの部屋に行かなくても、この家に必要な機械や情報はある。


「で、どーしたんだい。こんな時間にきて」

「何も無いといえば何も無い」

「じゃ何かあるじゃん」


 ゆきは何かを言いたそうにするけど、言わない。

 落ち着きのない様子でソファーの上で寝っ転がった。

 もうお風呂入ったようだ。無防備の部屋着姿でごろごろしてる。


「なんか言いづらいこと?」

「いや、言いづらいっていうか」


 正直気になるけど、言いたくないなら言わなくていいと思う。

 だけど、このゆきは言わないと気が済まないだろうし、言うまでここにいるはずだ。


「明日、七瀬来るでしょ」

「え、うん聞いた?ゆきもくる?」

「私は明日バイトだからいい。ふたりで遊ぶ約束でしょ、気にしないで」


 宮下さんとゆきは友達同士だし、私とゆきが幼なじみなのも知っている。

 連絡することは別に変とは思わない。

 ただ、それだけの事でゆきが落ち着かない理由にはならない。


「昔から知ってたけど、みさきって趣味悪いよね」

「めっちゃ唐突な悪口じゃん」

「七瀬って絶対みさきのこと好きって気づいてるでしょ」

「…知ってる」


 きっとこのこと聞きに来たってわかってた。


「確証はないし、そもそも気のせいかもしれないじゃん」

「七瀬は人を好きになったことないって言ってたけど、けど、これから好きになることがないってことじゃない」

「まぁ、あたし、かわいーいし、一目惚れしちゃうよねー」

「ばか」


 困った。気づいてないって自分に聞き聞かせていたのに。

 まだ、これは一方的な感情でしかない。


「みさきが七瀬にどんな感情を持ってても私は文句言わないけど、自分を傷つけないでよ」

「あたしはずっと本気で生きてるよ」


 お風呂で考えてたことを後悔する。

 まだ現時点では何も変わらない。

 私はまだ宮下さんのことをなにも知らない。

 そして何より、私の方が自分自身のことを知らない。


「幸せになればそれでいい。」

「善処するよ」

「ちゃんと七瀬のこともみてあげて、いい子だから」


 珍しい。いや、珍しくはない。ゆきは優しい人だから、友達のいいことしか言わない。

 だけど、私よりも違う子を優先するとは思わなかった。


「いい子だったよ…けど、宮下さんが何も言わないなら私は何も言わないよ」


 私はいつも適当だってわかってる。

 だけど、これは適当にしてちゃダメなんだろうきっと。


「宮下さんとは、まだただの友達」


 少なくとも今現在、私は宮下さんとの関係を終わらせたくない。


「私も、お姉ちゃんも、みさきの幸せ願ってる。それだけは忘れないでよ」

「珍しいね、そんなこと言うの」

「あんたが危なっかしいからよ」


 初めてそう言われた。ゆきは立ち上がって冷蔵庫に向かった。


「アイス貰っていくね」

 手をヒラヒラして、また今度ね。と言わんばかりに勝手に家を出た。


 玄関まで見送ろうと思ったら、合鍵で鍵を閉められた。


「結局、どういうつもりなの」


 言いたいことはわかった、だけどそれをどうしろっていいんだ。


 私はそんな器用な人じゃないし、何より顔に出るのは自分でもわかってる。

 今どんな顔をしているかは知りたくない、きっと納得いってない、駄々こねてる子供のような態度をしている。


 私…


「何も悪くないし、まだ何もしてないし…」


 とにかく考えれば考えるほど納得行かない。

 ゆきには全てを見透かしたような。


 私が分からないことは教えて欲しい。じゃないと前に進みようがない。


 過去だって何度も助けてくれたのに、今回は助けてくれない。


「はぁ…恋愛したくねぇ」


 過去の恋愛を思い出すと、苦い。

 いつの間にか黒歴史に変換されていた。


「てか、友達だし。」


 宮下さんはただの興味深い友達。

 それ以上も以下もない。


 ――そうじゃないと、困る。


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