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親友の友達、私のクラスメイト  作者: 秋羽


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第7話

暑いのは嫌い、夏は普通に嫌い。


「えーやばい、久しぶりに1リットルの紙パック飲んでる人みたー」


 机に突っ伏すようにしていた体を起こし、目の前にある紙パックを見た。


「家ではいつもこーしてのんでますぅー」


 学校に自販機が置かれてから、みんなわざわざ学校来る前に飲み物を買うことが減った。

 私はこの紙パックのコーヒー牛乳が好きだから、定期的に買っている。

 学校で飲むのは確かに初めてかもしれない。


「てか、みさきやばいよ、なんか溶けてるよ」


 さっきから私のことをツンツンとつついたりして遊んでる彼女は私のクラスメイトだし、高校生になって初めて出来た友達。


「ちょっと佳奈、いたい。はげる」


 触覚を引っ張られさすがに禿げそう。

 目の前にいるこの友人かなり悪質。


「その金髪黒染めするぞ」


 目が痛いぐらいの金髪が少し鬱陶しい。けど嫌な気分では無い。


「まじで黒染めしたら美咲の頭かち割る」

「暴力反対すぎる」


 この子すんごい口悪いんですよ。類友って感じで。


「はいはい、2人とも喧嘩しないで課題するよ」


 私と佳奈のくだらない口喧嘩を強制的に阻止され、目の前のことを思い出す。


「はぁ、なんで放課後にもなってこんな課題してんの帰りたい」

「先週提出の課題まだ出してないからでしょ」

「優里ずるい。ひとりだけ終わらして。」



 金曜日なのに。華金なのに。

 これからが宴なのに、私はまだ学校に残って課題と睨めっこしなければならない、一体何が楽しくてこんなことしてんの。


 全ては先週の私が悪い。今日に責任を押し付けた過去の私のせい。


「まぁ、いいか」


 後悔はしてない。先週は課題しなかったおかげで沢山遊べたし、文句はない。


「てかさーもうすぐ夏休みじゃん」

「海行こうって話でしょ」


 何度も伝えている。私は夏が嫌い。


「あたしはパスでお願いします」

「無理すぎる」

「室内で遊ぼうよ」


 納得は当然してくれない。JKらしいことをしようよと駄々を捏ねてる。

 けど、私も行きたくないと駄々を捏ねる。

 負ける訳には行かない。


「うちの庭でビニールプールしよ、海とほぼ変わらないでしょ」

「全然違うから、海!夏といえばでしょ!」


 佳奈との言い合いはなかなか折り合いが付かない。


「じゃなんか予定あるならいいよ、雪以外で」


 ゆき以外に予定なんてない。ないことはない。

 ゆきの姉との予定はびっしょり詰まってるけど、言ったらどんな?なにするの?って言うまで逃がしてくれないから言わない。


「ある。ゆき以外の友達と家で勉強する予定。」

「雪以外に友達いたの?」

「え、めっちゃ失礼、いるでしょ」


 私をなんだと思っているのか不思議だし、そもそもあなたも友達でしょとも思う。


 そんな予定はないけど。


「勉強って何のために?」

「ほら、受験勉強だよ」

「まだ高二なのに?」

「高二でも受験勉強するでしょ」

「遊ぶでしょ」


 これでも通ってる学校は進学校なので、勉強する人の方が多いと思う。

 本格的始まってないだけで、普通に夏休みは勉強してるはず。

 私はする予定。っていう予定がある。


「怪しいでしかないよ」


 挙動不審とまでは行かないけど、目を逸らす。


「あ、納得いってない顔」


 納得いってない顔。

 最近まで自分で知らなかった癖。


 納得いってないときや困った時に眉間に皺を寄せ、目線だけ斜め上を見る。


 初めて知った自分の癖。意識したことは無いけど、この癖のせいで最近感情がバレやすい。


「とりあえず終わったし帰ろ〜」

「えー今日雑貨店行きたい」

「無理。今日は帰る。」


 ふたりの会話にぼんやりと、宮下さんを思い出してしまう。


 遊ぶ友達いるじゃん。友達…まぁ、友達だよね。

 友達の定義を考え出すとややこしくなるから、私が勝手に友達と思ってる。これで正解なのか分からないけど、きっと今は知らなくていい。



 1人の帰り道は珍しい。

 ゆきとはクラスが違うからたまに、ほんとにたまにだけ別々で帰ることがある。そのたまにが今日だった。

 お互い友達を優先し、一人で帰る。


 寂しいって思うことはないけど、暇だと思うことはある。


 仲良しの3人は家も違えば、帰り道も違う、正門で別れた一人で駅に向かう。

 今日はコンビニによってなにか買って帰ろう。

 相変わらずの優柔不断でコンビニに30分ほど居てしまった。

 コンビニから出ると外は夕日などなくなり、夜になっていた。


 土日は何して過ごそうか。予定がないのはいいことなのに、暇になってしまうと話が変わる。


 駅はそれなりに人がいて、次の電車はきっと満員だろうな。快速よりも各停の方が座れる確率が高いとホームの奥の方へと進んでいく。


 見覚えのある人が立っていた。


「鷹野さん?」


 わたしから声をかける前に、彼女が先に見つけてくれたようだ。


「宮下さん偶然だね、部活帰りとか?」

「そう、さっき終わったばっか」


 こんな時間まで部活しているのか。

 改めて、偉いと思う。

 彼女は私と違って遊んでばっかじゃないのだと、同じじゃない。そう再認識した。

 彼女とは同じ持ち時間なのに、私よりも有効活用できている。尊敬するところしかない。


「お疲れ様、私はさっきまで課題で残ってた」

「大変だね、鷹野さんもおつかれ」


 彼女の笑顔が輝いてる。星のように綺麗で眩しい。目が離せない。

 弓道か…彼女の身なりからは想像しずらいぐらいギャップのあるスポーツだと思っていた。

 勝手なイメージだけど、弓道は真面目で、お淑やかそう。

 だけど彼女は髪の毛を軽く染めてるし、ピアスだって開いてる、スカートも短いし、注意されない程度に校則を破っている。

 だから弓道のイメージがなかった。


 校則を破ってる点では私も文句言えないので言わないけど。


「途中まで一緒に帰ろうよ」

「いいよ、でも私次の次、各停で帰るつもりだけど大丈夫?」

「大丈夫、私もその予定だったから」


 一人で帰るのをつまらないと思っていた所に宮下さんと偶然会ったのもきっと運命だろう。

 私は宮下さんと一緒に話しながら帰ることにした。

 電車の中ではそれほど大きな声で話すわけにもいないので、お互いが聞こえる大きさでずっと話していた。

 宮下さんは私の話にすごい笑ってくれるし、反応もしてくれる、すごく楽しい。

 近いうちにまた遊びたい。


 乗り換えの場所は一緒だったので、2人とも電車を降りたが、お互い喋り足りない。

 そんなに長く話す予定はなかったから駅前で立ちながら話していた。1時間ぐらい喋ってしまって驚いた。


「やばい鷹野さん、楽しすぎて時間忘れてる」

「死ぬほど楽しかった」

「ねね、明日予定あいてる?」

「あいてるよ!」


 私から聞こうとしていたことを宮下さんに言われ思わず手を握ってしまった。

 でも、別に手を握るぐらい大したことじゃないと思いその前に両手で握って宮下さんに目を合わした。


 心做しか手の温度も少し高い。

 今までで1番距離が近づいた。

 気のせいかもしれない。


 いきなりすぎたのか、宮下さんは驚いて少しどうしたらいいか分からないみたいな表情をしてた。


 人と手を繋ぐのは苦手だったのだろうか。

 そういえば以前、彼女がいた時は手を繋ぐこともほとんどなかったと言ってた。

 そうなると悪いことをした。


 私は手を離そうと力を緩めたら、宮下さんは逆に手を握ってくれた。


「明日遊ぼ!鷹野さんの家行っていい?」


 友達だったら積極的に来れるのかな。

 関係性が違えば人は対応も変わる。きっとそういうことなのだろうも私は納得した。


「もちろん!また時間は連絡するね!」

「わかった、楽しみにしてる」


 宮下さんは楽しそうな表情だった。

 少なくとも嫌われてはいないし、それなりに友達として好意はあることがわかった。

 けど私には友情以上の何かを不意に気づいてしまった。

 宮下さんの耳が赤い。


 ただ恥ずかしいだけなのか。


 でも思い返す限り彼女はクラスでそんなに素振りを見せたことがない。

 友達に見せる笑顔とどこが違う。その違和感は微かにあるはずなのに、今の私にはそれしか分からない。

 ただの違和感。テンションが上がりすぎて考えすぎたのかもしれない。私の都合のいいように考えたのかもしれない。


「じゃ、またあしたね」

「うん、気をつけて」


 私は宮下さんに別れを告げ、乗り換えの駅に向かった。


 宮下さんの笑顔は目を閉じても思い出せるほど鮮明に覚えてる。

 私の中にある違和感が少しづつ出てきてる。

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