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親友の友達、私のクラスメイト  作者: 秋羽


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6/15

表も裏も

「やべっ」


 家のリビングで紙パックのコーヒーを飲もうとして、自分のタンブラーに入れてたら勢いが有り余ってこぼれてしまった。


 昨日両親が誕生日を祝ってくれて久々に3人でこの家にいた。

 今朝には2人とも大阪に戻った。

 短い時間だったら幸せだった。

 放課後の静かなリビングにいても寂しいという感情は薄い。

 17歳の誕生日は楽しかった。

 両親からは犬を飼わないかなんて言われたけど、ひとりで育てるのが難しいから断った。


「犬どころか自分でさえ生きてるのが不思議なんだが。」


 大雑把な生活。


 決まった時間なんてない。

 お腹が鳴ったら食べて。

 喉が渇いたら水を飲む。

 気が向いたら遊んで、眠くなったら寝る。

 自由気ままな生活をしてる中きっと生活リズムがほぼ一定の家族が増えると共存できそうにない。


 自分の部屋に戻り、今日の予定を考えながらタンスから着替えを取り出す。

 そろそろ7月になることもあり、かなり外は暑くなってきた。


 昨日親から貰ったブラウスにしようか悩んだけど、涼しそうな半袖とショートパンツにした。


 机の上にある3枚のハンカチを見つめ、先日のことを思い出す。


「なんであんまドタバタしてたんだっけ」


 先日の昼休みに宮下さんから誕生日プレゼントをもらった。

 学校で話すことは無いからどんな感じで行けばいいか悩んでたらゆきのところで渡すってメッセージが来て、ゆきのところで待っていたら。

 偶然はちあわせたという謎の寸劇に付き合わされた。


 理解が追いつかなくてずっと笑ってしまった。でも楽しかったことは覚えてる。


 机の上にある3枚のハンカチ。

 全部気に入ってる。

 使うのがもったいない。


「カワウソから使うかな」


 悩んでからカバンに入れた。残り2枚はタンスの中に大切に仕舞った。


 そしてもう1つ大事なものを手に取り、箱から取り出した。


「お、いいね、ゆきから貰ったスマホケース映えてんねぇ」


 ゆきから貰った誕生日プレゼントは前々から欲しいって言ってたハンドメイド作家さんのスマホケース。


 所々に雪の結晶のようなものが入ってるシンプルな柄。


 柄は特に指定していなかったから今日この箱を開けるまで知らなかった。

 可愛いし、綺麗。改めてゆきのセンスがいいことを再確認した。


「って、そろそろ時間じゃん」


 部屋にかかってる小学生の頃に卒業制作で作った壁掛け時計を見て、予定の時間が来てしまう。

 箱を片付け、新しいスマホケースにお着替えした携帯をもち、ハンカチの入った小さめのトートバッグを持って家を後にした。


 家から出ておよそ5秒ほど。


「ただいまぁ」


 家に帰った訳じゃない。家から5秒程度の目的地に着いただけ。


「さっきぶりだねん、お姉ちゃん部屋にいるよ」


 ゆきは部屋着でちょうど部屋に行こうとしていたところに私は来てしまった。

 つい1時間前まで一緒に学校から帰ってきて、お互いの家に帰ったけど、今はゆきが目的では無い。

 いつもの事だから、いつも通りに過ごす。それだけの事。


「ひーちゃんまた部屋に籠ってるの?」


 ひーちゃん。ゆきの姉の愛称、私は物心がつく頃からそう呼んでいた。

 小野寺日菜。私たちの6個上のお姉ちゃん。

 ゆきのお姉ちゃんだけど、私にとってもお姉ちゃんのような人。


「お姉ちゃん締切間に合わないかも!ってさっきまで叫んでたよ」

「それは…大変だ……」


 ひーちゃんは…え――、漫画家だから。締切にいつもおわれるほど。常に修羅場と戦ってる人。


「じゃわたし部屋にいるから、美咲は頑張ってね」

「うん、、ありがとう…」


 この後のことを思うと一緒にゆきの部屋に行きたい。


 変えられない未来を歩もうとゆきと一緒に階段を上がった


「待ってたぞ、我が愛おしいモデルよ」

「ふぅん、私は今にも逃げたいかな」


 部屋は整理整頓されていて綺麗な部屋。というよりかは何も置いていない、空っぽな部屋。

 漫画を描くのに必要なものしか置かれていない、ベッドとカーペット、小さいテーブル。勉強机だったものはひーちゃんの仕事用の机になっていて、大きいパソコンの画面がふたつ。

 ほんとにただそれだけしかない。


「てか、モデルやらないから」


 たまに漫画描くためにモデルをやらされてるけど、なかなかに屈辱的なポーズを長い時間取るのがメンタル的に持たないからしたくない。


 今は漫画を描くのを手伝うのとアイディアを出す。


「まぁ、今回のヒロインと似てないからモデルの出番はなさそうかな」

「どんなヒロイン?」

「まな板かよ!みたいなヒロイン」

「っな…勢い強…」


 椅子に座っていたはずなのに飛び上がって目の前にペンを突き出してきて、かなりびっくりした。

 今日テンション高いぞこの人。なんなんだ。

 酔ってんのか。


「それで、今日はなんの手伝い?」

「それ仕上げよろしく、データ送ってるから」

 小さいテーブルの方を指さし、そこに座れと指示をされた。


 何度もやってきたことなので心配は特にしていない。

 だが、いつからだろうか、この人の部屋に入るのには勇気がいる。


 しばらく無言で作業をしていると、ひーちゃんは飽きたのかペンを離し椅子ごと私の方に。


「なぁ、パンツ何色がいい?」

「えー貧乳でしょ、うーん、みずいろ」

「あー採用」

「モノクロでしょ?色必要?」

「表紙だよ」

「表紙下着なんだ」


 毎度思うけど、この作品なんだかんだ私の性癖詰め込んでないか?

 私の性癖全国に発信してるよね!?

 バレなきゃセーフってことを信じるしかないよね。

 ゆきは興味なくて助かる。じゃないと私は多分穴を掘っても逃げる。


 絶対にバレたくない。

 手伝ってることは別にいいけど、私の性癖が普通にバレるのはやばい。


 そもそも18歳にもなってない私は手伝っていいのか?

 触れないようにしよ。


「そのネックレス似合ってんじゃん」

「いーでしょ、私なんでも似合うもんね〜」

「私のセンスがいいっていえ」


 誕生日プレゼントにひーちゃんからネックレスをもらった、高価そうにしか見えないこのネックレスは普段のお手伝いのお礼的なものだと思って受け取れって言われたから、受け取ることにした。

 せっかくだから普段からつけている。可愛いから気に入ってる。


「そういえばこれなんて石?」

「アメシスト」

「んーなんか聞いた事あるかも」

「知らないでつけてたのかよ」


 紫に輝く小さな水晶。

 とても綺麗。

 透き通った色。

 きっと石言葉なんてものが存在するのだろうけど、特に気になったことはないから調べてない。今これがアメシストだと知ったし。


「綺麗だし可愛いしつける以外ないっしょ」

「まぁ、つけとけ、いいことがあるかもしれんからな」


 そう言ってひーちゃんはまた作業を始めた。

 いいことがあるかもしれない。

 そう願ってネックレスを少しだけ握りしめた。


「ひーちゃん彼氏と最近どーなん」


 静寂が気まずよりは喋りたい気分。

 ひとりは好きだけど好きじゃない。

 面白くない。

 せっかく人といるのに楽しいことをした方がいい。


「振った」

「え?早くない?」

「長かったろ今回は4ヶ月続いたんだ」


 恋愛体質とまではいかないけど、元彼の人数な、きっと2桁超えてる。


 コミュニケーション能力はすごく高いし、人前ではちゃんと言葉も関わり方も考えてる。

 それに綺麗な人だから、容姿端麗。

 女の子の私からでもそう思う。


 スタイルもいいし。おっぱいでかいし。


 なんで長く続かないのかな、そもそも続ける気があるのか。


「今回はなんで別れたの」

「セックスが楽しくない」

「毎回それじゃん」

「楽しくないセックスなんて何がいいのだ、心の相性より身体の相性」


 この人ほんとに世のために死んだ方がいい。


 いや、少子高齢化の現代にはむしろいいのか?

 どちらにしろ教育に悪い人なのは間違いない。


「諦めた方がいいんじゃない…」

「まぁ、私の欲望は我が子に注いでるからな」

「我が子って、作品でしょ」

「理想を全て詰め込んだ、最高だろ」


 人として恥じいた方がいいと何度も思った事か。

 だが否定するつもりはない。ひーちゃんの描く漫画は確かに傑作だから。なんてね。


「刺激のある恋愛があればいいね」


 ため息をついて。私は作業に戻った。


「ところで美咲、ケーキ冷蔵庫にあるから」

「ケーキ?」

「今日のお礼だから、持って帰れ」


 全く…この人は素直じゃないんだから。

 去年誕生日にケーキ一緒に食べようと約束をしたのに。ここ2日用事で地元にいなかったから誕生日に一緒に食べれなかった。

 きっとそれのお詫びなのだろう。


 だっていつもケーキなんて用意してくれないし。

「一緒に食べないの?」

「…食べてやらんこともないな」


 こんなメロい年上がいてもいいのか。


「やったー、ひーちゃんだいすき」

「ごめん、恋愛対象男だから」

「え、ごめん、私ひーちゃんタイプじゃないから」

「おい、舐めてんじゃねぇぞちびが」


 ひーちゃんは悪ふざけに全部のってくれるから楽しい。


「ひーちゃんよりでかいのに!ひどい!」


 実際にひーちゃんより4センチほどでかいから隣に並んだら意外と身長差がわかる。


 166cmと162cm


「へっ、勝ったぜ」


 勝ち誇ったように私は部屋から逃げ出して隣の部屋にいるゆきを誘ってリビングに向かった。

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