友達の親友
「ねぇ雪、鷹野さんって…どんな人?」
休日、私の家でくつろいでる友人に気になることを聞いた。
最近できた、友達。鷹野美咲たかのみさきについて詳しく聞きたかった。
本人に聞くのはなんか少し違くて、彼女の親友に聞くことにした。
「どんな人って?」
「好きな物とか、性格…とか?」
なんでもいい。気になるから。
「そうだなぁ、ノリが軽いし、面白いし、優しいかな」
「それだけ?」
「すごいポジティブ、あと適当、意外と顔に出る、物めっちゃ無くす、ひとりでいるの好きなのに寂しがり屋かな」
「めっちゃでてくるじゃん」
幼なじみで親友なだけあってめっちゃ詳しく教えてくれた。もっと詳しく聞いていきたい。
雪。小野寺雪。
彼女は鷹野さんと似ている。雰囲気が、少し似ていると思う。底が見えない何かを抱えているような。
「鷹野さんってひとりっ子?」
「そーだよーちなみに誕生日は6月28日」
「え、明後日じゃん」
突拍子もないことを言い出す彼女に驚く。
「そーだよー。今年は何するんだろう」
「何するって?」
両親はなかなか帰らないって聞いてるけど、誕生日はさすがに帰ってくるようで、毎年ド派手なパーティをするのが恒例らしい。
「私は明日先にプレゼント渡しちゃうけどね」
「どんなの?」
「スマホケース」
淡々と漫画テレビを見ながら答える彼女を見て、私も何か用意した方がいいのかな。
でも何を準備したらいいか分からない。
何が好きなのかも分からない。
「鷹野さんって何色すき?」
「緑系かな、ターコイズブルー好きだよ」
これまた珍しい、、ターコイズブルーってなんだ。緑なのか、青なのか。
難しいな。
そもそも誕生日プレゼントをあげるほどの関係なのか。
「誕生日プレゼントなくても多分祝ってくれるだけでも嬉しいってみさきは言うよ」
雪は私を見て、アドバイスらしきことを言う。
知ってておめでとうだけ言うのは何か味気ない。
好きなコスメとかあればいいのに。きっと高いからって言って受け取ってくれ無さそう。
「プレゼントかぁ…」
悩む。ケーキ…はいらないか。
悩みながらテーブルにあるコップに手を伸ばすと空だったことを思い出す。
冷蔵庫からアップルジュースを出して、継ぎ足す。
「女子高生にあげるプレゼントって悩ましい」
「みさきに関しては変なもの好きだからな」
「変なもの?」
「おもしろおかしい?みたいなものがすき」
面白くておかしいものか。そんな物分からない。私の周りにいる人達は悩まずにコスメやアクセサリーとか思いつくけど、鷹野さんは何が好きなのだろう。
そもそも友達になりたての人に何をあげるのが正解だろうか。
「雪は誕生日プレゼント何が欲しい?」
「マフラーかなぁ誕生日12月だし」
「考えとく」
12月生まれだから雪って名前らしい。
去年聞いたから覚えてる。
そもそも明後日は部活だから放課後鷹野さんにあう時間がない。
どうしたものかと近くにある雑誌を手に取り、パラパラとページをめくる。
ふとあるページに目を引かれた。
モデルさんの持ち物紹介みたいなページだった。
ハンカチ。これだ!
ハンカチなら重くないし、手軽に使えるやつ、ハンカチなんてらいくらあっても困らない。
これにしよう。
明日は午前中だけ部活だからその足でプレゼントを買いに行こう。
問題はどうやって渡そう…
明日買ってから考えることにする。
「鷹野さんって休日なにしてんの?」
鷹野さんと雪は幼なじみで家も向かい同士だならいつも遊んでると勝手に思ってるけど、雪は友達も多いし、私ともよく遊んでる。
じゃ鷹野さんもそうなのかな。
「みさきは今日お姉ちゃんと遊んでる」
「お姉ちゃん?一人っ子じゃないの?」
「私のお姉ちゃん」
雪と幼なじみなんだから幼い頃から雪のお姉ちゃんとも遊んでたはず。
それに鷹野さんの方が早く生まれてるからきっと雪のお姉ちゃんは雪よりも鷹野さんと長くいた。
気になることばかりだ。
「仲良いんだ」
「んー、多分私よりもお姉ちゃんと仲良い」
「え、そうなの」
「私とは親友だけど、お姉ちゃんとは悪友って感じかな」
「どういうこと…?」
理解ができそうでできない。
親友と悪友。ニュアンスが異なる言葉どちらも友達を指すだろうけど、一体何が違うのだろう。
「お姉ちゃんとみさきって同じ趣味持ってるし、変なところで息が合う。」
「鷹野さんの趣味…ってなに?」
この前ご飯食べに行った時に趣味はないって言われた。なのに今雪は鷹野さんに趣味があるって言っている。一体どっちを信じればいいのだろうか。
そもそも私に鷹野さんのプライベートなことを聞く権利はあるのか、ただの友達なのに。
「趣味っていうか、本能的に好きな物って感じかな…お姉ちゃんの仕事手伝ってるようなもんだし」
「お姉ちゃんどんな仕事なの?」
雪はテレビを見ていた視線を私に移し、少し言いずらそうな顔をしてる。言えないような仕事なのだろうか。
「…漫画作家…」
普段の雪からは想像できないぐらい小さい声で、危うく聞き逃すところだった。
「え、すごいじゃん!鷹野さんは絵書くの手伝ってるの?」
「いや…その…いいっていいか分からないけど…」
もごもごしている。
たしかに鷹野さんのプライベートだから勝手に言っていいわけないけど、漫画家のお手伝いなんてすごいことじゃない。
「その、漫画家って言っても多分七瀬が想像してるような漫画家じゃないよ」
「どういうこと?」
いつも元気で明るい雪は気まずそうにテーブルの上にあるアップルジュースをひとくち飲んだ。
「お姉ちゃん…エロ漫画作家なんだよね…」
……え?
……ん?
「ごめん、なんて?」
「いや、お姉ちゃん、エロ漫画描いてる。」
衝撃的過ぎて、雪の声が頭から離れない。
エロ漫画?って私の知ってるような見てはいけないようなやつかな。
知識がない訳では無い。むしろ思春期だから知識だけは先走ってる。
「それを鷹野さん手伝いしてるの?」
「まぁ、そう。」
すごい意味深な言い方をしているのが気になる。
戸惑い過ぎて落ち着かない。
「だからみさきってまじでどうしようもない変人だから。」
「あ、うん。」
何かを助言されたような。あの鷹野さんの趣味がこれ?
高嶺の花とも言われるような鷹野さんにギャップ萌えしそう。
「話変わるけど鷹野さんって鈍感だよね」
あまりにも気まずから話題を変えることした。
「みさきは鈍感だよ。好意には鈍感だけど、勘は鋭いよ」
「たしかに思いやりがすごいっていうか…」
数回程度だけど、鷹野さんと遊んだり、ご飯行ったりするだけでもわかる。鷹野さんを周りをよく見ている。
気遣いがすごい。そりゃモテる。
「けど、あいつばかだからなぁ。」
「成績いいのに?」
「まぁ、そのうちわかるよ」
鷹野さんの話をする雪はいつもと違う。元気で明るい雪じゃなくて、心配してるようで眉間に皺を寄せてる。
「鷹野さんと仲良くなりたい…」
「みさきは喜んで仲良くなってくれるよ」
まるで鷹野さんの全てを知っているように、雪はアップルジュース飲み干した。
「そのカラコンかわいいねどこの?」
空のグラスを手にしながら雪は私の目を見て褒めてくれた。
「どこのだっけ、部屋に置いてるんだよね」
「今度一緒に買いに行こうよ」
「いいよ」
私は雪との買い物時間が好き。
落ち着いて好きなものを見て好きなだけ時間を使えること。
他の友達に合わせて買い物するのはあまりに得意じゃない。
雪とは好きな物が同じで2人同士に買い物ができるからコスパがいいし、相談しやすい。
鷹野さんは何が好きなのだろう。
「雨降りそう」
あれから何時間か経ち、雪は立ち上がりながら外を見た。マンションの7階から眺める外の景色は綺麗で見飽きない。
そろそろ18時に差し掛かる、いい時間だった。
「夜ご飯はどうする?」
「帰ってから食べるから大丈夫だよ、そろそろ帰るし」
こんなに話し込むとは思わなかったから夜ご飯のことをすっかり忘れていた。
雪は家に帰る準備をしながら、私は部屋から上着を取って駅まで送るつもりだ。
「傘借りとく?」
「んーいや、大丈夫」
夜だから分かりずらいけど、予報ではそろそろ雨が降る、どうするつもりなのだろう。
「じゃまた学校で、連絡するね」
「うん、気をつけて」
駅まで雑談したり、猫を見つけて少し撫でたりして駅で見送った。
これから1人で来た道を歩かないと行けない。
少し寂しく思う。
「雪に聞き忘れた…」
今日聞こうと思った事があった、好きな人出来たことある?って。
彼女と別れてからびっくりするぐらい心が落ち着いてる。
別れた当日はさすがに悲しくて辛かったけど、鷹野さんに会ったから辛い気持ちはすっかり吹っ飛んだ。
自分から人を好きになったことはない。告白されてようやく人を好きになることを頑張った。
せっかく好きかもしれないって思い込めたのに、振られた。
そんな努力も無駄だった。一体何が楽しくて人は人を好きになるのか。知りたい。
それなりに人に好かれ、何度か告白もされた。1回を除いて全て断った。今まで気になることもなかった。高校生になれば変わるかもしれないって思ってたから、気まぐれで了承した。
なのにこんな呆気なく終わる。
女の子だから男の子だから、好きになったら関係ないって自分に言い聞かせ、人を好きになれそうにない。
仲のいい友達でいる方がずっといい。
特別な関係になるとその先には知らない赤の他人に戻るかもっと特別の関係になれるかもしれないけど。前者の方が確率が高い。
「寒い…早く帰ろう。」




