第3話
宮下さんとパーティをしてから2週間。
その間に学校で会っても、話しかけない。
そういうルールが気づいたらできていた。
その方がお互い過ごしやすいだろう。
別々のグループに属している2人。対立する訳では無いけど、馴染むことはないだろう。
「おーい、鷹野、ちょっとこーい」
先生に呼ばれて席を立つ。
「美咲なんかしたのー?また呼び出されてやーんの」
「はぁ、課題かなぁ」
心当たりがない訳では無い。古文の課題適当にやりすぎたかもしれない。
もしくはやってもいない漢字のワークかも。
それとも…触れたくない問題かな。
今月何度目の職員室に入り、周りを見たわす。
「鷹野…一人暮らし、問題ないか」
だと思った。担任に聞かれることは大抵この話だ。
「何も無いですよ、次の三者面談の時にちゃんと来ますから、多分。」
先生はなんとも言えないような表情をして、口を開けた。
「なにかあったら言うんだぞ」
「…考えときまーす」
何も無いから大丈夫。なんて言えなかった。
「それと、鷹野…お前…ワークやってないだろ」
「ありゃ、バレちゃいました?」
「頭いいんだから、内申点こんな所で下げるなよ…」
頭いい…か。
まぁ、そうだよね、あたすぅ、なんでできちゃう天才ちゃんだもーんねーん。
「わかってますよ、期末までにはちゃんとやっておきます。」
先生とのじゃれ合いを終え教室に戻る。
友達がいる輪に再び入る。
「ねーみさき、今度の日曜みんなで海行かない?」
「海?!ばかじゃないの、まだ6月入ったばっかでしょ寒いよ」
お出かけは嫌いじゃないけど。さすがにまだ肌寒い時に海は嫌だ。
そう思ってる時にスマホが震えた。
宮下さんからの連絡だった。
あの日パーティを終え、宮下さんがそろそろ帰るといい。駅まで送っていった時に連絡先を交換した。
今日、部活ないから良かったらケーキ食べに行かない?
メッセージの内容は単純だった。
断る理由もないので了承した。
何気なく宮下さんの方に向いた。
彼女もまた私の方を向いてきたので目があった。
思わず逸らしてしまった。
これはまるで、誰にもバレないように付き合ってる恋人同士じゃないか。
「ねぇーみさきーどー思う?」
「なにが?」
やべぇ。宮下さんのこと考えたら何も聞こえなかった。
文句を言われつつ。もう一度聞いてくれた。
今度の日曜海に行くかたこ焼きパーティーをするかの二択だったらしい。
「てか今日放課後プリ撮りに行かない?最近撮ってないしいこうーよ」
いつも3人で行動している。
1年生の時から同じクラスで波長が合う。
でも今日は行けない。予定があるから。
「ごめーん今日予定ある身です」
「えー雪?」
「んー違うけど、そんなところかな」
「なんだそれ」
深く追求してこないあたり助かる。
言われて思い出したけど、ゆきにもいわないと、今日一緒に帰れない。
放課後が楽しみ。
惰性で残りの授業を受け、早く放課後にならないかと待ち遠しい。
ようやく放課後になったかと思えば、今日はホームルームが異様に長い。
早く遊びたいのに。
そういえばどこで待ち合わせするんだろう、どういうかどこで食べるんだろう。
この近くにカフェはあるけど、間違いなくうちの生徒がいるし。
そう思ってたら携帯に連絡が来た。
駅前で待ってる。
その一言だけだった。
駅に乗ってどっか行くのかな。
なら駅まではゆきと帰ろう。
さっきゆきのクラスに行き、一緒に帰れないことを伝えたら拗ねてたし。
ホームルームが終わり、宮下さんを見ると、彼女も友達とクラスを出ていった。
リュックを持ってゆきのクラスに向かう。
「ゆきー、駅まで一緒にかえろ」
そういうとゆきは不満そうにリュックを持ち教室から出てきた。
「予定あるんじゃなーいの?」
「あるけど、駅までは一緒に帰れるよ」
そう言ってふたりで学校を離れた。
駅までいつも通り他愛もない話をしてたり、今日の出来事をした。
ふと、駅前のコンビニに宮下さんがいるのを見つけた。
「じゃゆき、また明日ね」
「電車まで一緒じゃないの?」
「あ、まぁ私今日方向違うし、電車の時間違うから、先に帰ってて」
なぜ焦っているのか分からない。
別に宮下さんと遊ぶからっていえばいいのに。何故か言えない。
言ったら3人で遊ぼう!って言われそう。今日はふたりがいい。そんなわがままだ。
「ふぅんまぁ、いっか。じゃまた明日」
ゆきは深く触れてこなかった。何かを察してか、それとも気にしないのか。
とりあえず、助かった。
ゆきが駅の改札を通って行くのを見届けて、宮下さんのいるコンビニに向かった。
たまたま出会った体にして、声をかけようかな。
「あっれ、宮下さん、偶然だねぇ」
宮下さんは私の発言に笑った。
恥ずかしい。
「鷹野さん、偶然だね、良かったこれから一緒にカフェ行かない?」
彼女もこのノリに乗っかてくれた。嬉しい。
何よりなんだその可愛さ。
「あらぁ、嬉しいねぇ、こんな可愛い子とカフェなんてもちろん行きます」
近くに同じ学校の生徒がいないことを確認して、ふたりで電車に乗った。
「どこのカフェ?」
「ここから5駅先かな」
5駅先。
少し遠く感じるけど、私と宮下さんの家に向かうための乗り換えする場所だから家帰るのには遠くない。
それにあそこはたしかにうちの生徒をみかけることはほとんどない。
電車の中何も話さなかったけど、居心地が悪い訳では無い。
電車をおりて少し歩いたところに隠れ家のようなカフェがあった、オシャレな内装でケーキも可愛かった。
「全部食べたいぐらい美味しそう」
素直な感想だ。
帰り道何個か買って帰ろうかな。
「鷹野さんケーキ好きなの?」
「好きだねぇ、甘いもの好きだから」
自分でケーキを買うぐらい好き。
どのケーキにしようか悩んでたら宮下さんは先にいちごのショートケーキにするって教えてくれた。
わたしはチーズケーキにした。
席でケーキと飲み物を待っている間に宮下さんを見ている。やっぱり彼女は可愛い。
「なんか顔についてる?」
「いやぁ、宮下さんかわいいなって」
そういうと彼女は照れたのか、少しニヤけた。
そういう所が余計に可愛く感じる。
「今度の日曜日鷹野さんの家行っていい?」
日曜日…未確定な予定があった。
「ごめん、その日予定あるんだよね」
「じゃ、来週の平日は?放課後どっか行こうよ」
平日は基本何もないからいつでも遊べる、けど宮下さんは違う、部活があるはず。
「全然いいよ、宮下さんに合わせるよいつ部活休み?」
「水曜日!」
「おっけーじゃ水曜日空けとくよ」
宮下さんは嬉しそうにスマホのカレンダーに予定を入れてるようだった。
そんな話をしていると、ケーキと飲み物が届いた。
映える。
それぐらい可愛いし、綺麗だった。
私も宮下さん写真を撮って、ケーキに夢中だった。
「めっちゃ美味しい」
「ね、何個食べてもいいぐらい」
やっぱり帰りに買って帰ろう。
新しくできた友達とケーキを頬張りながら次の予定について話す。
なんと楽しい時間なのだと噛み締める。
今度ゆきとも来ようかな。
目の前にいる宮下さんを見て、彼女の写真も撮りたくなったけど、今はやめて、自分の頭の中にあるメモリアルに収めることにした。




